第十四話 決闘の終わり
何かいまいちパッとしなかったのでまたまたタイトル変更致しました。
ご了承下さい。
フェンリルを討伐する為の作戦を立て、皆に指示をする。
「セレス、土属性魔術で細剣を二本作れ!それを高温で焼いて、壊れないように風属性魔術で冷却させるんだ!!」
「か、畏まりました!」
セレスは理解できなかったようだが、俺の指示通りに行動する。
「レイ、セレスが剣を作ったら、その表面を闇で覆って固定、強化しろ!!」
「了解っす!!」
レイがセレスの方へ飛んでいく。
「ご主人様、如何為さるおつもりですか?」
サリスがフェンリルの突撃を避けながら近寄ってきて、そう問いかける。
「サリス、お前は俺があいつを縛り付けたら、フェンリルの両目を潰すんだ。」
「両目を……ですか?しかし、非常に残念ながら、僕の剣ではフェンリルの眼を潰す事は………。」
サリスが悔しそうにそう言う。
事実、既にサリスが眼を攻撃した事があったが、その眼は予想以上に硬く、傷付ける事はできなかったのだ。
「大丈夫だ。お前が使う剣は、今あいつらが準備してくれている。」
「準備?…………そうかっ!!」
サリスが目を見開いてそう叫んだ。
「という訳で、ここは俺に任せて一旦下がれ。」
「し、しかしご主人様。フェンリルが捕縛魔術に弱いとは言っても、抜け出すまで精々五秒といったところです。その間に攻撃できるかどうか………。それに一度縛られていますので、そう簡単にいくのでしょうか?」
「俺に考えがある。大丈夫だ、任せろ。」
サリスと目を合わせて俺は頷いた。
確かに、苦手だからと言って………否、苦手だからこそ何度も引っ掛かってはくれないだろう。
ならば、手法を変えれば良い。
リスクは大きいが、これが最も確実な手段だ。
サリスは俺の眼を見て、静かに頷いた。
「………畏まりました。ご主人様を信じます。」
「あぁ…………それじゃ、下がっていてくれ。」
「はい、ご武運を。」
そう言って下がるサリス。
直後にフェンリルの攻撃が迫るが、俺の避けながらの廻し蹴りで飛び退く。
それから暫くして、双剣が出来上がったようだった。
後ろを見ると、禍々しい黒のオーラを纏った細身の双剣をサリスが受け取っている。
俺は前に向き直って深呼吸をし、覚悟を決めてフェンリルを待ち受けた。
フェンリルは立ち止まった俺目掛けて、今まででも最も速い速度で飛び付いてきた。
俺は避ける事もせず、右手を差し出して噛み付かせた。
右腕を全力で部分強化している為、食い千切られてはいないが、徐々に牙が食い込もうとしている。
驚愕の声を上げる従者達を無視して、フェンリルの口を抑え込む。
そして魔力を練り上げ始める。
フェンリルは何とか噛み千切ろうとするが、先に俺の魔術が完成した。
ーーー『闇縛り・貪食の紐枷』
いつも俺が使っている闇の糸を縒り合わせて強度を増した魔術。
魔力操作の難易度は並列部分強化にも劣らない。
それをフェンリルの口だけでなく全身に巻き付けていき縛り付ける。
フェンリルは抜け出そうと首を振るが、既にガチガチに縛られていて引き千切る事もできなかった。
しかし、代償に俺の右腕は持っていかれた。
肩から先が全て食いちぎられ、バランスを崩して膝をつく。
「ご主人様っ!!」
悲鳴を上げて近寄ろうとする従者に一喝。
「サリス!!今だ!!」
サリスは一瞬止まって目を見開く。
しかし、すぐに思い直して、決意の籠った瞳でフェンリルを見据えて走り出した。
未だ抜け出せずに暴れているフェンリルだが、上手く動けずにいる。
しかし、それも時間の問題だ。
やがては引き千切られてしまうだろう。
だが、その時間だけで十分だった。
走り寄ったサリスは高く跳んで、フェンリルの鼻の上に着地する。
そのまま走り抜け、必死に抜け出そうとするフェンリルの両目に向かって、神速の連突きを放った。
フェンリルの悲痛な叫びが響き渡る。
俺はその悲鳴を聞きながら走り出す。
フェンリルがゴロゴロと痛みに悶えている今がチャンスだ。
最大の弱点を、隠す事なく晒してくれている今しかないのだ。
「サリス!双剣を寄越せ!!」
サリスに向かって叫ぶと、サリスが双剣を投げ渡してきた。
俺は闇の紐で器用に受け取り、闇で覆っていく。
二本の細剣を闇の紐でグルグルと巻いて固定し、更に強化していく。
やがてそれは禍々しいオーラを放つ一本の大槍になった。
痛みに悶えて転がっているフェンリルが腹を見せた瞬間、俺は並列部分強化を全身ではなく、左肩から先を十分割して施した。
つまり、全身を十三ヶ所に分割して強化するのではなく、左肩から先を十ヶ所に分割して強化したのだ。
超強化された左腕で大槍を構えて、フェンリルの胸部に狙いを定める。
そして、その大槍を全力で投擲した。
「貫けっ!!『嵐怒の神槍』!!」
その大槍は凄まじい速度で突き進み、フェンリルの胸部を貫き、その奥の心臓をも貫通した。
フェンリルが一際大きな悲鳴を上げた。
これが断末魔の悲鳴というものだろうか。
最期の力を振り絞るように天に咆哮を轟かせ、やがて力尽きて土埃を巻き上げながら倒れ込んだ。
魔眼を発動しようとすると、フェンリルが淡い光を放って消えていった。
「…………これは……勝ったのか?」
「どう……なんでしょうね?」
スィーリアの声がその場に響いた。
『条件を達成したわ。貴方達の種族が進化するわよ。おめでとう。』
「……………………は?」
その間抜けな声を最後に、俺達は闇に包まれて意識を失った。