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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第四章  【悪霊の墓】深層
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第十二話 迷宮踏破

扉を開けた先は、表層の主と戦った空間と然程変わらなかった。


空域をいくつか合わせたような広大な空間。


階層主の間とは大体こんな感じなのかもしれない。


表層と違うのは敵。


中央に佇む貴族のような服装をしたアンデッドロード。


そしてその周りを囲んでいる三体の屍霊(・・・・・)


それを見た瞬間つい舌打ちをしてしまった。


これも一応予想してはいたが…………。


「最悪の予想が的中してしまったな…………敵は深層の主だけじゃないって事か。」


慌てずに敵のステータスを確認していく。


深層の主の両斜め前で佇む騎士のような甲冑を着ている屍霊は、どちらもドラウグルのようだ。


その後ろ、深層の主の傍らに控えているのはリッチ。


これらのステータスはその種族の平凡。


そして深層の主のステータスはーーー




【ステータス】

『名前』

 ボトム

『種族』

 アンデッドロード

『スキル』

 屍霊の王Lvー

 瀕死暴走Lvー

 体術Lv5

 格闘術Lv4

 再生Lv4

 魔力感知Lv3

 魔力操作Lv4

 闇属性魔術Lv4

『称号』

 名持ち魔物

 屍霊の王

 最上級魔物

 迷宮主




保有スキルが軒並み高レベルだな。


そしてサーフィスと同じく『瀕死暴走』を持っている。


最後まで気を抜けないな。


入手した情報をセレス達に伝え、事前に考えておいた作戦を変更する。


「サリス、少しの間ボトム(アンデッドロード)を引き付けてくれ。ドラウグルは俺が片付ける。セレスはリッチをできるだけ早く始末してくれ。レイは周りを見て緊急時に備えろ。」


「承りました。ご主人様、お気をつけて。」


「畏まりました!燃やし尽くします!」


「了解っす!皆さん頑張って下さいっす!!」


三人の返事を受けてまず俺が走り出す。


最初から全力でやってやる。


魔力を練り上げて全身に分配する。


ーーー『魔纏・黒の王鎧』


全身を黒い魔力が包み込む。


近付いてくる俺を迎撃しようと、ドラウグル二体が飛び出してきた。


一体の攻撃を避け、もう一体の横腹に廻し蹴りをして吹き飛ばす。


背後から迫る気配に反応してしゃがみこみ、敵の攻撃が頭上を通り過ぎると同時に伸び上がって裏拳を叩き込む。


一撃ずつ当てただけだが、かなりのダメージを与えたはずだ。


今の俺の身体能力は最上級の中ですら群を抜いているからな。


それでも辛うじて生きているのだから、流石は上級種と言ったところか。


二体のドラウグルを吹き飛ばした俺にボトムが迫ろうとするが、俺の横を駆け抜けたサリスが邪魔をする。


サリスの連突きを次々と捌いていくボトム。


隙を見て反撃をするが、サリスも洗練された体捌きでそれを避けていく。


互角のようにも見えるが、ボトムは未だ全力を尽くしているようにも見えない。


ーーー早く助けに行かないと不味いかもな。


俺はより近くにいたドラウグルを目標に据え、走り寄る。


頭を裏拳で打ち抜かれた為、多少フラフラとしている。


近付いてくる俺に気付いて武器を振るうが、それを無視して加速、ドラウグルの頭を鷲掴みにして勢いのまま地面に叩き付けた。


グシャッという音と共にドラウグルの頭が潰れている。


駄目押しの下段突きで止めを刺した。


残りのドラウグルに向かおうとしたら、敵のリッチが魔術で攻撃をしようとしているのが見えた。


一瞬警戒したが、セレスを信じて停止せずに走る。


結果、リッチよりも先に、セレスの魔術が文字通り火を噴いた。


巨大な火球がリッチ目掛けて飛んでいく。


その速度も大きさも威力も、以前までとは段違いのものだ。


リッチも慌てて魔術を完成させようとするが、その前に火球が命中し、辺り一面に広がる火柱を上げた。


ドラウグルは立ち上がって俺に向き直っていたが、セレスの魔術の余波で隙ができた。


空かさず入り込み、ドラウグルの前面に連打を浴びせる。


またもや駄目押しのアッパーカットで顎を跳ね上げて止めを刺した。


その間に火柱が止み、中を見るとリッチが辛うじて生きていた。


しかも中断された魔術を今度こそと作り上げている。


しかし、生き残る事を予想していたセレスの魔術によって、再び妨害され燃え尽きた。


……………敵ながら憐れなり。


両手を合わせようかとも思ったが、そんな場合ではないと残ったボトムに向き直る。


敵の攻撃が段々と早くなり、サリスも回避が追い付かなくなりつつあった。


急いでそこに近寄り横から前蹴りをすると、ボトムは一度下がって距離を取った。


サリスの前に出て対面する。


「セレス、魔力を練っていつでも魔術を発動できるようにしといてくれ。範囲は狭くて良い、威力重視の魔術だ。」


「畏まりました!」


「サリスは一度下がっていてくれ。」


「承りました。」


二人に指示を出して、敵を警戒する。


屍霊の王同士の戦いだ。


互いの固有スキルは意味を成さない。


存在の格も、スキルレベルにもそう大した違いはない。


大きな違いが一つだけあるが………俺に勝機があるとすれば、その一点(・・・・)だ。


オマケにスキルの構成までほとんど一緒。


互いに少しずつ近寄る。


やがて、同時に踏み出した。


ボトムの右拳を左手で廻し受け、右拳を突き出す。


しかしボトムは首を曲げて避け、俺の右腕の上から被せるように左拳を打ち込んでくる。


所謂クロスカウンターのような打ち方だ。


俺は咄嗟に右肘を大きく曲げてその攻撃を回避し、空いた空間から右足での前蹴りを入れた。


軽く吹き飛ぶボトム。


しかし大したダメージは与えていないはず。


俺は吹き飛んだボトムに追い討ちをかける為に飛び込み、右拳を突き込む。


ボトムは両腕をクロスして防ぐが、俺がその上から無理矢理振り抜くと、ボトムは更に吹き飛んだ。


存在の格は同じであるのに、何故これほど膂力に差が出るのか。


それこそが俺とボトムにある、ただ一つの大きな違い。


無属性魔術である。


無属性とは通常、属性を持っていない存在にのみ与えられるもの。


それは魔物であっても例外ではない。


しかし俺は、『属性を持っていたのに無属性だった』という矛盾した存在であった。


封印されていた闇属性が解放された後でも、既にスキルとして持っていた無属性が消えなかった為、俺は闇属性でありながら無属性魔術を使える、という特異な存在になったのだ。


身体強化の魔術は無属性の中では初歩的なものだが、しかしとても有効な魔術だ。


元の強さが同じならば、強化した方がより強くなるのは自然の理。


それも、現在の俺は並列部分強化という離れ業を為している。


俺とボトムの間には、もはや埋めようもない基礎能力の差が生まれていた。


ボトムに隙ができるまで何度も追い討ちをかける。


もちろんこのやり方は良策とは言えない。


何か失敗をして反撃を食らえばただでは済まない為、余程自らの技量に自信がないとできる事ではない。


以前までの俺ならばこんなリスキーな作戦は取らなかったが、今の俺には十分に戦えるという自信と自負があった。


更なる追い討ちにボトムの防御が間に合わなくなる。


やがて隙ができた胴体に全力の正拳突きを打ち込んで吹き飛ばした。


だが、俺はここで攻撃をやめない。


吹き飛んでいる最中のボトムを魔術で縛り付ける。


瞬時に切られてしまうが、既に後ろに回っていた俺は、脇腹に思い切り廻し蹴りを入れ込み、先程とは逆方向に吹き飛ばした。


そして大声で指示を出す。


「セレス!今だ!!」


「はい!」


セレスが即座に魔術を発動した。


「燃え散りなさい……巨人の炎剣(レーヴァテイン)!!」


燃え盛る炎によって形作られた剣がボトムに向かって飛んでいく。


しかし、空中で身動きが取れないと思い込んでいたボトムは、何と闇の球を自らに当てる事で軌道を変更し、回避してしまった。


本来なら驚愕する場面だがーーー


「サリス!!」


「承知!!」


念の為そちらに寄っていた俺は炎剣を掴んで、ボトムに向かって走り出しているサリスに投げ渡した。


サリスは返事と共に炎剣を掴み、地に足をつけたばかりのボトムに向かって飛び込む。


ボトムは逃げようとするが、セレスが土の壁を作り、俺が縛る事で妨害する。


一瞬の……しかし大きな隙を作ったボトムの胸に、サリスの神速の刺突が打ち込まれた。


サリスが手を放して下がった瞬間、炎剣がそのエネルギーを放出し、爆発が起きる。


大きな火柱が上がり、煙が辺りを包む。


「セレス!サリス!レイ!こちらに寄れ!!」


指示を出すと、三人が瞬時に寄ってきた。


三人の前に立って前方を警戒する。


「ーーー来るっす!!」


レイが警戒の声を上げた瞬間、俺とセレスでかつて竜の息吹を防いだ魔術を発動させる。


作り出された壁に、瀕死暴走によって強化されたボトムの正拳が突き刺さる。


中に隠れる俺達にも衝撃が伝わってくる。


その威力は竜の息吹にも劣らない凄まじいものであったが、あれから更に成長した俺達の防御を破る事はできなかった。


魔術を解くと同時にセレスが火球を打ち込む、瀕死の状態で渾身の一撃を打ったボトムは、その火球を正面から食らい、膝をつく。


空かさず駆け寄り、右拳を構える。


「はあぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


気迫と共に正拳を顔面に叩き込み、魔力を解放して打ち込んだ。


吹き飛んでゴロゴロと転がる。


魔眼を発動させると、ステータスは表示されなかった。


…………………………。


静寂。


恐る恐る口を開く。


「これは………勝った……………んだよな?」


「は、はい……………勝ちました………ね。」


「やっと…………やっと………終わったんですね。」


「これで外に出れるんすよね!?っすよね!?」


一番最初に現実を受け入れたのはレイだった。


次第にセレスも歓声を上げてはしゃぎ回った。


サリスはその感動を静かに受け止めている。


俺も徐々に状況を把握できるようになった。


「はっ……はは……………やった、やったぞ!!俺達は遂に!このダンジョンを踏破したんだ!!」


喜びを分かち合いはしゃぐ俺達。


しかしそこへーーー


『残念ながら、君達をこのまま出す訳にはいかないな。』


そんな男の声が聞こえた。

ちなみに当たり前のように魔術で作った剣触ったりしてますけど、これは作った者の触らせようとする意思と、触る側の精密な魔力操作がないとできません。


どちらが欠けても触った瞬間ドカンです。

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