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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第四章  【悪霊の墓】深層
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第四話  監視

「む……旦那、またっす。」


「またか……?」


「あ、でもまた逃げたっす。」


「一体何なんでしょうね?」


「ご主人様に仇なす痴れ者なら只じゃおかない。」


怖ぇよ。


クール系の美少女になったから更に怖ぇよ。


「これでもう何度目っすかねぇ…………何が目的で監視してるんすかね?」


「さぁな。ただ……深層にいるくらいだし、マトモな奴じゃないだろうけどな。」


そう、俺達はここ最近何者かに監視されているのだ。


近付いて来ては逃げてを繰り返している。


様子を見ているつもりなのだろうか。


レイがいるから丸わかりなんだが。


追いかけようとすればできない事もないだろうが、特に実害がある訳でもないし、今はそんなに気にしていない。


しかしレイはチラチラと察知範囲に入られるのが気になるようで、心なしかイライラしている気がする。


屍竜との死闘の後、あの進化のお陰で俺達はかなり強くなっていた。


深層の屍霊を片手間に倒せるレベル。


たまに強いのもいるが、それも最上級魔物となった俺からすればあまり変わらない。


それだけ上級と最上級の差は大きいのだ。


最近の鍛練では、セレスとサリスの二人を相手取ったりしている。


彼女達もかなり強いから無傷とはいかないが、今のところ無敗を貫いている。


レイは最近は鍛練に参加していない。


屍竜のようなハプニングがいつ起こるかわからない為、マッピングを優先させているのだ。


彼が言うには、進捗状況は良好で既に5割ほどマッピングしているらしい。


深層の主がいる方向も、一応当たりはついているのだとか。


しかし、それ以外に気になる事があるという。


「深層の主がいると思われる方向とは別に、何か変な気配を感じるんすよねぇ。」


「変な気配?」


「気配というか……傾向?っすかね。普通は深層の主に近付くにつれて屍霊が強くなっていくっす。でも、それとは別に強い屍霊が増えていく方向があるんす。」


「そちらは深層の主がいる方向とは何か違うんですか?」


セレスが不思議そうに訪ねる。


つまり、AとBの二つの道があるとして、両方奥に行くほど敵が強くなる。その条件は同じはずなのに、何故Aは深層の主に通じていて、Bは他の何かがあると言えるのか。その根拠を知りたがっているのだ。


「うーん、何が違うって聞かれると…………勘っすかね?」


「レイ、貴様の勘でご主人様を惑わすつもりか?」


サリスが顔をしかめて問いただす。


「え、ちょっ……違うっすよ!自分は真剣に言ってるんす!!」


「ならばもっと具体的な理由を…………」


「いや、待てサリス。勘ってのは豊富な経験に裏打ちされたものだ。馬鹿にはできないよ。」


「うっ………も、申し訳ありません、ご主人様。」


俺の静止でサリスが引く。


レイは安堵の溜め息をもらしている。


「レイ、もう少し詳しく話してくれないか?わかる範囲で良い。」


「わ、わかったっす!………えっと、何て言えば良いのかわかんないっすけど、両方奥に行けば強くはなってるんすけど、その傾向が何か違うんす。」


「どう違うんだ?深層の主がいると思われる方向は?」


「そっちは今まで通りっす。普通に魔物として強くなってるっす。」


「なら、もう一方の方向は?」


「そっちは………何ていうか、力だけじゃなくて狡猾な屍霊が多い気がするっす。それに…………何か、組織立ってるっていうか………。」


「組織?………そちらの屍霊は、何者かが指揮しているって事か?」


「そうっす。屍霊同士の戦いとか見てると、何かきっちり役割決めて戦ってたりして。………あんまり屍霊らしくなかったっす。」


「………そうか。」


そちらには何があるんだろう………。


組織立った屍霊………普通とは違う動き………ん?


「なぁレイ……もしかして、最近俺らを付け回している奴って、そっちから来ているんじゃないか?」


「え?……………あ、もしかしたらそうかもしれないっす!」


確証はないが………気になるな。


「よし、レイ……次にそいつが現れたら全力で後を追ってくれ。んで、どこから来ているのかを確認して戻ってこい。危険は冒すなよ。」


「合点承知っす!お任せ下さいっす!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



という事で、恐らくそれから数時間後のこと。


「旦那、現れたっす!」


「よし、なら計画通りにしてくれ。俺達は一旦空域に戻る。」


「了解っす!!」


レイは姿を消して高速で飛び立った。


「…………さて、俺達は空域へ戻ろうか。」


「はい。」


「畏まりました!」


二人と共に歩く。


出てきた屍霊はセレスが焼き払った。


進化してからのセレスは、深層の屍霊を易々と燃え散らすようになった。


向かってくる屍霊は燃料のようなものだ。


再び現れた屍霊を、セレスが焼き払う。


すると、奥の方から一体の屍霊が現れた。


マミーと呼ばれる全身に包帯を纏った、ゾンビから派生する珍しい屍霊だ。


セレスが魔術を使おうとすると、そいつは慌てて喋りだした。


「お、お待ち下さい!私の話を聞いて頂けませんか!?」


む、こいつ悪霊じゃないのか?


とりあえずセレスを止めた。


「ほっ………あの、お話をしたいのでそちらに行ってもよろしいですか?」


「あぁ構わない。」


「いけませんご主人様。」


サリスが止めようとするが、無言で抑える。


「さぁこっちに来い。話とは何だ?」


「ありがとうございます!えっと、まずは私マミーのサマンサと申します。宜しくお願い致します。」


会った瞬間に魔眼を発動していた為、名持ちである事は知っていた。


だから話を聞こうと思ったのだ。


「俺はネクロ、種族はドラウグルだ。」


こんなあからさまに怪しい奴に真実を話す必要もあるまい。


「ドラウグル!上級種族でございますね!素晴らしい!!」


「こいつらは俺の従者で、リッチのセレスとレヴァナントのサリスだ。」


リッチは隠しようがないな。


浮いてるし。


「リッチですと!?それはまた………そちらのレヴァナントのお嬢さんは、随分とお綺麗なのですね?」


「死体の状態が良かったんだろうよ。俺もそうだし。」


「なるほど、そういう事でございますね。」


「………それで、話って?」


「えぇ、実は私の主がネクロ様に大変興味を持っておられまして。是非とも一度お会いしたいと。」


「主?」


「はい!ネクロ様と同じ、ドラウグルの主でございます!」


「どこにいるんだ?」


「申し訳ありませんが、それはお答えする事はできません。来ていただけるようであれば、私がご案内致します。」


「ふーん………興味を持って、ね…………あの監視役はお前達の手の者か?」


すると、マミーが表情を一変させた。


包帯で隠れてるけど、それでもわかるくらいに驚いているようだ。


「な、何故それを!?」


「うちには優秀な偵察役がいるのさ。少なくとも、あんたらの寄越した奴よりはな。」


「…………左様でございますか。これは失礼を致しました。主も長年ここに住んでおりますれば、何事も注意深くなさるお方でして。主に変わってお詫び申し上げます。」


深々と一礼する。


「いや、気にしていないから大丈夫だ。………それより、お前の主は俺達を呼び出して何がしたいんだ?」


「率直に申しますと、私はネクロ様方をスカウトに来たのですよ。」


「スカウト?」


「えぇ、我が主はこのダンジョンの中でも最も古くから存在している屍霊でして、一種の国のようなものをお作りになられているのです。」


「国……か。それはまた御大層な事で。しかし俺達は憐死人だぞ?」


「存じ上げておりますとも。…………屍竜を討伐する程の実力者であらせられる事も。」


「ほう…………その力が目的って事か。」


「恥を偲んでお話すれば、そういう事でございます。」


「なるほど……な。」


俺は無言で手を差し伸べた。


「来ていただけるのですね!?ありがとうございます!!」


マミーのサマンサが俺の手を握った瞬間。


「闇縛り」


闇がサマンサを縛りつけた。


「なっ!これは!?………ネクロ殿、これは一体どういう事です!?」


「どうもこうもないさ。お前は俺達の敵だ。敵で悪霊なら、生かしておく必要もないだろう?」


「て、敵ですと?………何を根拠に、そんな………」


「俺は魔眼というスキルを持っていてな。以前はただステータスを見るスキルでしかなかったんだが、レベルが上がった今では色んなもの(・・・・・)が見えるんだ。」


「ま、魔眼………?一体どういう………」


「お前が最初から俺達を見下していた事も、何かを隠している事もわかってるんだよ。………俺達を連れていって、何をするつもりだ?」


「そ、そんな………私は何も」


「はぁ………だからさ、俺に嘘は通じない(・・・・・・)んだよ。諦めろ。」


「なっ…………くそっ、まさかそんなスキルを持っていたとは!!てめぇ、こんな事してただで済むと思うなよ!?」


「それが本性か。やっと三文芝居は終わったか。」


「てめぇ、殺してやる!!俺達に喧嘩を売って、無事でいられっがぁっ…………」


喋っている途中で、サリスがサマンサの口を突き刺した。


「無事で済まないのは貴様の方だ。ご主人様に喧嘩を売って、ただで済むと思うなよ?」


怖ぇよ。


「ぐっ………て、てめぇら…………たった三人で、あの人を敵に回すつもりか!?」


「三人じゃないんだがな………あの人ってのは、お前の主か。」


「あぁそうだ。誰よりもこの地獄を生き抜いてきた伝説の悪霊だ。てめぇら如きが勝てる相手じゃねぇよ。」


そう言ってサマンサは不敵に笑う。


「…………ふむ。お前は俺達が屍竜を倒したのを知っているだろう。それでも勝てないと?」


「あの人だけじゃねぇ!こっちにはあの人に付き従ってる凶悪な悪霊が何人もいるんだ!負ける訳ねぇ!!…………それに、屍竜に勝ったのだってどうせマグレに決まってる。あんなのに勝てる奴はいないんだ!」


………………あぁ、なるほど。


「マグレ、ね……………そうか、その程度の認識だったんだな。いやぁ、それは良かった。」


「何笑ってんだ?頭おかしくなったのか?」


「いや、もしこちらの実力を把握した上で喧嘩を売っているのなら策を考える必要があったが。…………どうやら、その必要はないらしい。」


「あぁ?どういう事だよ?」


「お前らみたいな雑魚の集まりなら、真正面から正々堂々と叩き潰せるって事さ。」


「…………おいおいおい、冗談だろ?上級種二体と中級種一体でか?………ぎゃははははっ……てめぇイカれてやがるぜ!!」


「あぁその話なんだがな。俺らの種族、あれは嘘だ。」


あっけらかんと暴露する。


「…………は?」


「セレスがリッチってのは間違っていないがな。俺とサリスは違う。」


「違う?んじゃ何だってんだ?ドラウグルじゃないなら、お前は……………」


そこで言葉を切って、サマンサは愕然とした顔をする。


「まさか…………」


「そう、俺はアンデッドロードだ。サリスはレヴァナントじゃなくて、ヴァンパイアだよ。」


「ア、アンデッドロード?それにヴァンパイア?そんな………う、嘘だ!最上級の魔物なんてアイツ(・・・)以外にいる筈がねぇ!!」


「信じないならそれでも結構だ。どうせお前はここで終わりだからな。」


「ま、待て!俺を殺したら、アジトには辿り着けないぞ!!だから…………」


「いや、その必要はない。言っただろう、優秀な偵察役がいると。既にそちらの監視役を追いかけている。お前がいなくとも大丈夫だ。」


「て、偵察役…………」


「ちなみにそいつの種族はファントムだ。例えそこら辺の奴に見つかったって、逃げる事くらい造作もない。」


「ファントム?………最上級が一体に上級が三体だと…………そんな、馬鹿な…………」


「…………もう良いだろう。聞きたい情報は全て話してくれたしな。…………セレス、やれ。」


「はい、畏まりました。」


セレスの火球が炸裂する。


声を上げる間もなく、サマンサは塵になった。


「…………さて、もうすぐレイが戻ってくるかもしれない。空域へ急ごうか。」


「はい!」


「了解です。」


二人を引き連れて、空域へ向かって歩き出した。


ーーー悪霊共の軍勢か。 


遠慮はいらないな。


俺は暗闇の中で小さく嗤った。

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