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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第四章  【悪霊の墓】深層
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第一話  深層

階段を下ると、心なしか周囲が暗くなった気がした。


深層は表層よりも更に暗いようだ。


夜目が利く屍霊の俺達でさえ、遠くを見渡せなくなった。


「さて、まずはここから一番近い空域を目指そう。レイ、案内を頼むよ。」


「合点承知っす!」


ビシッと敬礼をするレイ。


彼は既にいくつかの空域の位置を把握している。


マッピングは順調に進んでいるようだ。


隊列を組んで前進する。


隊列は俺が一番前で、斜め後ろにサリス、後方にセレスだ。


レイは上空から道案内と敵の警戒をしている。


正直、俺達がどんなに気を張ろうとも、レイ程の察知能力はない為、あまり周りを気にする必要はない。


先にレイが敵の接近に気付いてしまうからだ。


「あ、敵が近くにいるっす。どうするっすか?」


深層での初戦闘だ。


もちろん戦う。


「行くぞ。敵の数は?種族はわかるか?」


「敵は三体っす。骨の音が二体分、あと一体はたぶんゾンビっす。」


「了解。………俺がゾンビを縛り付けるから、サリスとセレスはスケルトン……いや、ワイトかもしれないな、とりあえずその二体を撃破してくれ。レイは新手の警戒を。」


「畏まりました!」


「承りました。」


「了解っす!」


俺達にも気配が感じられるくらいに近付いてきた。


「よし、行くぞ!」


先手必勝。


こちらから走り寄る。


敵はレイの言う通り、ゾンビと骨二体。おそらくワイトだ。


敵は俺達の接近に気付いて武器を構えた。


「闇縛り!」


即座にゾンビを縛り付ける。


上級種(ドラウグル)の魔術に下級種(ゾンビ)が抗える道理はない。


ゾンビは闇に縛られて動けなくなる。


その横をサリスが走り抜けてワイトに向かう。


ワイトは構えた槍を突き出すが、サリスは片方の細剣でそれを受け流すと、もう片方の細剣でワイトの喉骨を一寸の狂いもなく貫いた。


更に全身の要所の関節を次々と貫いていき、あっという間にワイトを分解させてしまった。


もう一方のワイトは、そちらに助けに入ろうとして動き出した瞬間、前方から飛んできた複数の火球によって焼殺された。


「流石はセレスとサリスだな。俺も負けていられない。」


念の為にゾンビを縛ってから待機していたのだが、そんな心配は無用だったか。


二人が敵を倒すのを見届けた俺は、魔力を練って闇の槍を作り出す。


三本作ったところで、縛り付けられてもがいているゾンビに投射した。


闇の槍がゾンビの顔、胸、腹を貫いた。


魔眼を発動し、ステータスが現れない事を確認する。


表層の魔物よりは強そうだったが、修行のお陰か地力の違いか、全く危なげなかったな。


「よし、皆お疲れさん。この調子なら深層でも大丈夫そうだな。」


「はい!」


「お疲れ様でした、ご主人様。」


「相変わらず自分やる事ないっすね。」


それぞれが反応を返す。


レイはそう言うが、戦闘中に他に気を配らなくて良いというのは、実は非常に助かっている点だ。


「そう言うなレイ、適材適所だよ。索敵関係は、お前に任せたぞ。」


「もちろんっす!任せて下さいっす!」


こいつは何だかんだ自分の偵察能力に誇りを持っている。


戦闘だってその気になれば中級の魔物くらい倒せるはずだ。


だが、レイはそれをしない。


手を貸す必要などないし、もしそんな状況になっても邪魔をしてしまうだけだろうと考えているようだ。


能天気に見せて意外とシビアな考え方をする。


これも生前の名残なのだろうか。


ともかく、レイに任せておけば突発的状況は滅多にない。


セレスもサリスも頼りになる仲間だ。


深層の屍霊相手でも、これなら十分に戦えるだろう。


そんな事を考えていたからだろうか。


ソイツ(・・・)が現れたのは、それから暫くしてからの事だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「敵がいたっす。今度は…………お、自分の同類っすね!」


深層での初戦闘から、体感的には数時間は経っているだろうと思う。


あれから何度かの戦闘を終え、空域にも辿り着いていた。


そこで休憩を取り、つい先ほど探索を再開したのだった。


「同類?レイス………いや、ゴーストか?」


「はい、間違いないっす。二体いるっす。」


「そうか……なら、一体はセレスがやれ。もう一体はレイだ。」


「畏まりました!」


「え、自分っすか!?」


急に指名されたレイは驚いている。


「あぁ、お前もたまには戦っておかないとな。」


「りょ、了解っす。」


という事でゴースト二体。


一体はセレスが瞬殺した。


霊体型の屍霊は、普段は滑らかに動いているくせに瞬間的な動きは意外に機敏だったりする。


前までのセレスなら何発かは外していただろうが、度重なるレイとの鍛練によって操作性と命中力は著しい成長を遂げていた為、火球二発を命中させてゴーストを消し飛ばす事ができたのだ。


セレスはゴーストを消し飛ばして悠々と戻ってきた。


俺達三人の目には、空中で物言わぬゴーストと向き合うレイの姿が映っていた。


「ご主人様、レイは大丈夫でしょうか?」


サリスが心配そうに問いかけてくる。


サリスはいつもクールだからわかりにくいが、実は負けず嫌いだったり、仲間には優しくて心配性だったり、普段とのギャップが大きい娘なのだ。


レイに対して淡々とした罵声を飛ばして泣かせる事もあるが、何だかんだ仲間として認めているのだろう。


「大丈夫だ。レイは、人に守られてばかりいるような男じゃないさ。」


「そうですよサリス。レイさんだってたまには頼りになる事だってあります!」


セレスは弁護しているつもりなのだろうか。


微妙に酷い事を言っているような気もするが、セレスもレイの事を信頼しているのだろう。


「そう……ですね。」


三人で静かに見守る。


先に動いたのは、敵のゴーストだった。


ゴーストが闇の球を打ち込んでくるが、レイは平然とした顔で魔力の壁を作ってそれを防ぐ。


今度は逆に、レイが闇の球を作って打ち飛ばす。


ゴーストはレイの真似をして魔力障壁を張るが、レイが指を鳴らした瞬間、闇の球が破裂して辺り一面を黒に染めた。


ゴーストはレイの居場所を察知しようとするが、既に自分の後ろに迫っている事に気付けないでいた。


やがて魔力を感じて後ろを振り向いたが、その瞬間レイの魔術を食らってゴーストは消し飛んだ。


レイがふぅっと一息ついて降りてくる。


「よくやったレイ。完勝だったじゃないか。」


「いやぁ、真っ正面から戦うの苦手なんで、あんなやり方しかできなかったっすけど……。」


「レイさんらしい意地汚いやり方でしたね!おめでとうございます!」


「セ、セレスさんそれ誉めてるんすか……?」


「流石はレイですね。あのような畜生にも劣る卑劣な手段で勝ちを拾うとは。」


「サリスさんはもう誉める気ないっすよね!?貶してるだけっすよね!?」


「はっはは……まぁ良いじゃないか。レイだって頑張ったんだ。あの闇の煙幕、見事だったぞ。」


「うぅぅ……自分の味方は旦那だけっす……。」


涙脆い奴だ。


「さて、んじゃ探索を再開し………どうした、レイ?」


泣いていたレイが急に顔を上げて後ろを向いた。


その顔は先程までと全く違い、ふざけている様子はない。


セレスとサリスもその空気を感じ取ったのか、真剣な面持ちで警戒している。


「旦那……やばいっす、何かよくわかんないっすけど、何か(・・)が近付いてるっす。」


「何か……?わからないのか?」


「はい、今まで感じた事のない気配っす。すっげぇデカくて、危険な香りがするっす。」


レイの言う事なら間違いない。


「何だかわからんが、ここにいたら危ないかもしれないな。……空域に戻ろうか。」


そう言って道を戻ろうとした時、レイが焦りだした。


「旦那、気付かれたっす!こいつ、索敵能力も高いっすよ!すっげぇ速さで近付いて来るっす!!」


レイ程じゃないがかなり高い索敵能力を持っているらしい。


そして大きくて速くて危険。


本来なら情報もなしに戦いなくはないが、レイが焦るという事は、逃げ切れないのだろう。


ならば少しでも準備をしておいた方が無難か。


「セレスとレイは後ろに!サリスは俺と前衛だ!全員、警戒を怠るな!!」


三人は即座に返事をして配置につく。


数秒後、ドスンッドスンッと大きな足音を立てて、ソイツ(・・・)は現れた。


「おいおい………マジか…………」


見上げるような巨大な体躯。


全体的にその身体は黒い鱗に覆われている。


所々骨が見えていたり腐ったりしているが、それを補って余りあるほどの強靭さを感じさせる。


爬虫類のような眼は、生きていたなら全てを威圧する鋭い眼光を放っていたのだろうが、残念ながらそこには感情一つ映されていない。


背中にある大きな翼を目一杯広げ、天に届きそうな咆哮を轟かせる。


ファンタジーが好きな人間なら間違いなく知っているだろうと言える。


俺が知らないはずはなかった。


魔眼など使わなくとも、俺はソイツ(・・・)を知っている。


間違いない、こいつはーーー








「………ドラゴンかよ。」

第四章から0時の更新がなくなります。


ご了承下さい。

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