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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第三章  【悪霊の墓】表層
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第九話  上級進化

ちょっと短いかもです。


……え、いつも短い?


ごめんなさい。

走り出した身体は止まらなかった。


敵の死も確認せずに油断した自分が許せなかった。


レイが諦めたように目を閉じたのも許せなかった。


お前は俺の従者だろう、と。


こんなところで死ぬんじゃない、と。


そう言ってやりたかった。


その為には、レイを死なせてはいけなかった。


俺も冷静ではなかったのだろう。


こんな事をせずとも、サーフィスを殴り飛ばせばそれで良かった。


しかし、この時はこうする事しか考えられなかった。


いや、考えるよりも先に身体が動いていた。


従者を守るのは主の務め。


だから俺は、レイを庇ってサーフィスの渾身の一撃の前に躍り出たのだ。


めきょっというような形容し難い音がした。


これほど強い攻撃を食らった事があっただろうか。


幸いにして痛みは感じないが、俺は自分の身体が宙に浮き、数秒間浮遊しているのを感じた。


やがて地面に叩きつけられる。


うっすらと目を開けると、10m程吹き飛ばされたのだと理解できた。


この時ばかりは自らの身体の頑丈さに、心の底から感謝した。


これがもし俺以外だったら、今頃そいつはバラバラに砕け散っているところだろう。


霞む視界に、サーフィスが動くのが見えた。


しかし先程の攻撃が限界だったのだろう。


膝から崩れ落ちて、それでも立ち上がろうとする。


それは魔物の本能か階層主の誇りか。


負けてはいられない。


こいつらの主として、たった一撃食らっただけで、寝てなどいられない。


そう思った。


全身に身体強化の魔術を施して、ふらふらと立ち上がる。


身体中が悲鳴をあげている。


何ヵ所の骨が折れているのか、考えるだけでも憂鬱になる。


我に返って駆けつけようとするセレスとサリスを静止させ、立ち上がれないままにこちらを睨み付けるサーフィスに向き合う。


これが最後だと全力で魔力を練り上げ。


「悪いな……配下が見てる前で…………主人が負ける訳には……………いかねぇんだ……。」


そう言って、闇の弾丸を打ち込んだ。




『表層の主討伐、おめでとう。条件を達成したわ。貴方の種族が進化するわよ。』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



声が聞こえた。


最初は孤児院の院長と子ども達の声。


院長はあれこれ心配しているように話しかけてきて、子ども達はただただはしゃいでいる。


次に幼馴染み達の声。


秋人は笑っていて、春香は拗ねていて、真冬は呆れている。


その次はマリアとミレイの声。


二人して意味不明な事を捲し立てている。


そして…………配下(あいつら)の声。


三人が俺の名を呼び、駆け寄ってくる。


あぁ良かった、守れたんだな。


従者を死なせずに済んだんだ。


それは………良かった………。


…………………………。


おい、ちょっと待て。


どうして最後に国王が出てくる。


顔を近付けるな。それ以上近寄るな。


おい、やめろ!!やめてくれ!!


「助けてくれっ!!」


バッと起き上がりながらそう叫ぶ。


目の前に国王がいない事を確認し、夢だったのかと安堵の溜め息をこぼす。


辺りを見ると、階層主の間である事に気付いた。


身体に異常がない事を確認し、立ち上がった。


ふと違和感を覚える。


俺の視線はこんなに高かっただろうか。


あきらかに視界が違う。


身体の感覚にもズレがあった。


視線を移して身体中を見る。


明らかに身長が伸びているし、筋肉質になっている。


そう言えばサーフィスを倒したのを確認した瞬間気を失ったからよく覚えていないが、なにやらスィーリアの声を聞いた気がする。


もしや………進化したのか?


慌てて魔眼を発動。




【ステータス】

『名前』

 ネクロ

『種族』

 ドラウグル

『スキル』

 体術Lv3

 格闘術Lv3

 再生Lv3

 魔眼Lv3

 魔力感知Lv4

 魔力操作Lv5

 無属性魔術Lv4

 闇属性魔術Lv3

『称号』

 元無能魔術師

 邪神の寵愛

 名持ち魔物

 屍霊の主




おぉ………ついに上級の魔物になったのか。


スキルのレベルも上がっている。


魔力操作は遂にレベル5に到達した。


軽く動いて確かめてみると、身体能力もかなり上がっている。


強くなった感覚に酔いしれていると、扉から三人が入ってきた。


俺が起きているのを見ると、驚いて走り寄ってくる。


「ご主人様!!起きられたのですね!?本当に良かった…………。」


「ご主人様、お身体の調子をどうですか?………僕達がついていながら、本当に………申し訳ございません。」


セレスは涙を浮かべて安堵している。


サリスはこちらを気遣いながらも、悔しそうに顔を俯かせた。


そしてレイは…………


「だ、旦那ぁぁぁっっっ!!!」


号泣しながら俺に抱き着いてくる。


そして通り抜けていった。


何がしたいんだこいつは。


つい呆れてしまった。


「うっ……うぐっ………旦那……旦那ぁ……うぅぅ………」


「流石に泣きすぎだろう、どうしたんだ?」


「だ、だって……自分のせいで、旦那に何かあったらって…………ううぅぅぅぅ………」


「見ての通り大丈夫だって、心配すんなよ。セレス、サリス、お前達もだぞ?」


「し、しかしご主人様!僕達が先に気付いていれば………」


反論しようとするサリスを防ぐ。


「従者を守るのは主の務めだ。………もし、今度何かあったら、その時は助けてくれれば良いさ。」


そう言うと、セレスは涙を拭いて元気よく返事をし、サリスは無言で膝をついて頭を下げた。


レイは更に号泣した。


何とか宥めること約十分。


やっとの事で泣き止んだレイは、バッと顔を寄せてこう言った。


「旦那ッ!!自分、旦那の従者になるっす!!」


「………?お前はもう従者だろう?」


「そうだけどそうじゃないっす!心から旦那に仕えるっす!旦那の為なら、深層だって何だって偵察してやるっす!!」


うおぉぉぉーっっっと暑苦しく燃えているレイ。


まぁ、頑張ってくれる事は良い事だ。


それよりも、セレスやサリス達と一緒ならば………。


『条件を達成したわ。従者の種族が進化するわよ。』


やっぱり。


聞こえた声が邪神のものである事と、これから進化が起こる事をレイに教えた。


初の進化でソワソワとするレイを闇が包む。


やがて現れたのは、特に外見の変わらない幽霊だった。


「お、おぉぉぉ…………力が湧いてくるっす!!」


これでレイも中級の魔物か。


上級が一体に中級が三体。


これがもし外だったら、一流の冒険者達が討伐しにくるレベルだな。


そんな事を思いながら、レイに向けて魔眼を発動させた。




【ステータス】

『名前』

 レイ

『種族』

 ゴースト

『スキル』

 物理透過Lvー

 体術Lv4

 短剣術Lv3

 投擲術Lv3

 気配察知Lv4

 気配隠蔽Lv5

 魔力感知Lv4

 魔力操作Lv3

 無属性魔術Lv3

 闇属性魔術Lv2

『称号』

 元忍者

 ネクロの従者

 名持ち魔物




気配隠蔽がレベル5になったか。


これで姿隠されて気配も隠されたら、たぶん見つけられないな。


レイの偵察能力は深層で必ず役に立つはずだ。


何よりも、こうして俺なんかに忠誠を誓ってくれる奴らがいる。


それが何よりも嬉しかった。

ネクロ「レイスとゴーストって何が違うんだ?」


レイ「ゴーストはレイスより高く飛べるっす!あと早く飛ぶ事もできるっす!」


ネクロ「それでダンジョンの上まで飛んでいけないのか?」


レイ「一度やってみた事があるっす。…………飛行時間の限界を迎えて地に落ちたっす。死ぬかと思ったっす。」


ネクロ「飛行時間なんてあるのか?」


レイ「厳密には自分たちは飛んでるんじゃなくて跳んでるんす。魔力を使って。」


ネクロ「そうだったのか!?」

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