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死霊の異世界カーニヴァル  作者: 豚骨ラーメン太郎
第三章  【悪霊の墓】表層
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第五話  配下と進化

目の前で起きた出来事に、暫し呆然となる。


スケルトンが……喋った?


いや、ゾンビである俺が喋れるのだからおかしくはないのかもしれないが、少なくとも今まで喋る魔物には出会った事はなかった。


俺が喋れるのは自我があるからだ。


邪神(スィーリア)の祝福によって、俺は魔物だが自我を保つ事ができている。


とするならば、もしかしてこのスケルトンも祝福持ちなのだろうか?


気になって話しかける事にした。


「な、なぁ……あんた………」


骨魔術師はその声を聞いてキッと俺を睨み付けた………のだと思う。


骨だから表情とかわからないが、何となくそんな感じがする。


「よくも……よくもサリスを!!」


高くて綺麗な声をしている。


生前は女性だったのだろうか。


「いや、先に襲ってきたのはあんたらの方だろう?俺は反撃しただけだぞ。」


「それは………でも…………」


骨魔術師は動かない骨剣士を見て悲しげな声をあげる。


何か俺が悪いみたいじゃないか。


このままでは気分が悪い。


何より、こいつらには聞きたい事がある。


骨魔術師が話せるなら骨剣士も話せるかもしれない。


そう考えて、俺は骨剣士を助ける事にした。


「おい、そこの骨魔術師。ちょっと退いてくれ。」


「ほ、骨魔術師??」


骨魔術師は急にそんな呼び方をされて困惑しているようだ。


「とにかくそこを退いてくれ。そいつを治すから。」


「これ以上サリスに危害を加えるなら、私が相手になってーーーえ?……な、治す?」


「あぁそうだ。治してやるからいい加減退けっての。」


半ば無理矢理、骨魔術師を退かした俺は、骨剣士の前に膝を折って魔力を練る。


横で骨魔術師が何か言ってるが気にしない。


練り上げた魔力を闇に変えて、骨剣士へと放った。


「闇の癒し」


この魔術は屍霊にしか効かない回復魔術だ。


再生スキル以外にも回復手段が欲しいと考え、予め作っておいた。


闇は骨剣士を覆い、やがて霧のように消えていった。


後に残ったのは、折れたはずの骨が治っている骨剣士。


さっきまで煩かった骨魔術師は、その光景を見て絶句していた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



あの場にいては屍霊が集まってくるかもしれない、という事で、俺達は近くの空域へと避難していた。


もちろん骨剣士も抱えて連れてきた。


空域に入れるという事は、少なくともこいつらは邪のものではないようだ。


「先程は申し訳ありませんでした。それと、妹を助けて頂いて、本当にありがとうございます。」


骨魔術師はそう言って頭を下げてくる。


「妹?お前達は姉妹なのか?」


「はい、生前より私達は姉妹でした。私の名はセレスと申します。」


「そうだったのか。俺はネクロだ。宜しくな。………ところで、早速聞きたい事があるんだが。」


「何でもお聞き下さいませ。」


「セレスは邪神の祝福を持っているのか?」


「邪神の祝福………ですか?いえ、そのようなものはありませんが。」


「なに?邪神の祝福があるから喋れるんじゃないのか?」


「ネクロ様はご存知ないのですね。屍霊型の魔物の力は、生前の実力に左右されます。生前、一定以上の力を持っていた者は、屍霊となっても自我を保つ事ができるんです。」


そうだったのか……。


つまり俺は、邪神の祝福があるから自我があるのではなく、祝福の影響で強くなったから、自我を保てているのか。


「なるほどな。ありがとう、参考になったよ。」


「いえいえ、どうかお気になさらず。」


さて、これからどうしようか、と考えていると、気を失っていた骨剣士(サリス)が目を覚ました。


「う、うぅ………ここは………………はっ!お前は!!」


そして俺を見つけるなり、警戒心を見せて後ずさる。


「安心しろ。俺はネクロという。お前に危害を加えるつもりはない。」


その言葉に最初は疑心を持っていたサリスだが、傍にセレスがいる事に気付き、セレスが説明する事でなんとか理解したようだった。


「そうか、僕は負けて………あなたが治してくれたのか。」


「まぁな。話も聞きたかったし。」


「そうか………感謝する。それと、すまなかった。」


基本的に悪い奴らではないようだな。


「なぁ、どうしてお前らは俺を襲ったんだ?」


二人は顔を見合わせると、セレスが代表して説明をした。


「あそこは私達が拠点としている場所だったんです。それが急に荒らされて、探ってみるとネクロ様がいらっしゃったのです。ゾンビは私達よりも高位の存在ですし、速やかに排除しよう……という事で。申し訳ありませんでした。」


セレスとサリスが頭を下げてくる。


「いや、そういう事情があったなら仕方ない。俺も不注意だった。」


まさか拠点を持つ屍霊がいるとは思っていなかったからな。


「まぁ、お互いにこの件は気にしないって事で。」


そう締めくくった。


そして俺達は、お互いの事情を言える範囲で話していた。


当時の文化等を知識と照らし合わせてみると、どうやらセレスとサリスが死んだのは、もう100年以上前の事らしい。


詳しい事は聞かなかったが、冤罪で火炙りとなり、死体をここに落とされたのだとか。


生前の天職を教えてくれたのだが、これがビックリ。


何と二人の天職は賢者と剣聖であった。


まさかこんな所に真冬と秋人の先輩がいたとは。


まぁそのお陰で、その魔術と剣の技量には納得できた。


次に俺の事を話した。


異世界人だというのは黙っておいたが、とある人間に恨まれて殺された、というのと、邪神の寵愛という祝福を持っている事を伝えた。


このダンジョンからの脱出を目標にしている事も。


それを聞いた二人は、驚きの行動をした。


「ネクロ様、どうか私達をネクロ様の配下にして頂けませんか?」


「お願いします。」


そう言って、二人して深々と頭を下げたのだ。


「お、おいおいちょっと待てよ。いきなりどうしたんだ?」


「私達も、このダンジョンからの脱出を夢見ているのです。しかし、私達にはそこまでの力はなく、もう二度と外には出られないと諦めておりました。」


「それで、俺の配下になって外に出たいって?」


「その通りです。神の祝福を受けた方に忠誠を誓えば、その恩恵を受ける事ができる、と言われております。」


ほう、それは知らなかったな。


「まぁ俺としても、このまま一人でダンジョンを攻略するのは危険だと思ってたし、お前達程の実力者なら色々と助かるかもしれないしな………。よし、わかった。お前達を俺の配下と認めよう。」


「ありがとうございます!」


「感謝します!」


その瞬間。


『条件を達成したわ。貴方の種族が進化するわよ。』


そんなアナウンスが頭に響いた。


ていうかこの声スィーリアだろう。


何をしているんだあの()は。


そんな風に呆れていると、俺の身体から煙のような闇が溢れ出てきて、全身を包んでいった。


「ご主人様!?」


ご主人様!?何だそれ!?


自分に起きている現象よりも、セレスの呼び方に驚いてしまった。


セレスとサリスは慌てながら、俺に纏わりつく闇をどうにか払おうとする。


「落ち着けセレス、サリス。俺は大丈夫だから。」


あのアナウンスは俺にしか聞こえなかったようだな。


「し、しかし!!」


「本当に大丈夫だから。安心して待ってろよ。」


そう言って俺も、無抵抗に闇に包まれた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



闇に包まれて、おそらく数分と言ったところだろう。


身体中の骨や肉なんかが不気味な音を立てていた。


これが進化なんだろうか。


痛みを感じない身体で良かったと、心底思った。


やがて闇が晴れ、セレスとサリスが近寄るのが見えた。


「ご主人様!お怪我はありませんか?」


「ご主人様、大丈夫ですか?」


二人が心配してくれる。


「大丈夫だって。………ていうか、そのご主人様って何?」


「私達はご主人様の配下ですから。」


配下だから何なのか。


「それは配下じゃなくてメイドとかなんじゃ。」


「細かい事はどうでも良いんです!それよりもご主人様、本当にお怪我などは………」


「あぁもう大丈夫だから!気にするなって。ちょっと進化しただけだよ。」


「進化………やっぱり今のが…………。」


「あぁ……つっても、見た目は特に変わってないみたいだけどな。」


「けれど、やっぱり雰囲気が変わってますよ。」


「む、そうか?まぁ良いや、ステータス見てみよう。」


俺は自分に向けて魔眼を発動する。




【ステータス】

『名前』

 ネクロ

『種族』

 レヴァナント

『スキル』

 体術Lv2

 格闘術Lv2

 再生Lv2

 魔眼Lv2

 魔力感知Lv3

 魔力操作Lv4

 無属性魔術Lv3

 闇属性魔術Lv2

『称号』

 元無能魔術師

 邪神の寵愛

 名持ち魔物

 屍霊の主




「お、種族がレヴァナントになってる。しかも全部のスキルレベルが上がってるな。これが進化か。」


強制的にスキルレベルが上がるのか。


凄まじいな。


「レヴァナント………中級の魔物ですね。おめでとうございます!」


「おめでとうございます、ご主人様。」


セレスが元気に、サリスが静かに祝ってくれる。


「あぁ、ありがとな、お前達のお陰だ。」


条件とか何とか言ってたし、こいつらのお陰で進化できたのだろう。


俺は新たな仲間に感謝を捧げた。

昨日から急にブックマークが増えました。


前作で私を見限らずに、読んで下さっている方が多いのでしょうか。


本当に嬉しいです。


感謝します。

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