アパート暮らし
元から広かった家を改築してアパートにして困っている人に部屋を貸している。
彼が亡くなってから悲しみにくれたほのちゃんは怒り、棺桶を蹴るくらいだった。
絶望、まさにそれがふさわしいの一言である。
でも、いつまでも悲しんでもいられない娘がいるんだからこの子が希望なのだから。
彼が残してくれた希望なのだから………。
医学にかかわる大学に通いながらもアパートの大家をすることにした。
多忙ではあるけど、これも娘のためだからって頑張って過ごす。
あれから何年たったかわからないけど、咲良は三歳になっていた。
彼譲りの髪色に私ゆずりの瞳、まさしく生き写しといってもいいかもしれない。
だから、大事に大事に育てることにした。
宝物だからこの子は私の生きがいだから………。
「さあ、今日も幼稚園に行こうね」
「あい!」
笑顔で笑いかけると笑顔で返事がかえる。
私の大事な大事な宝物。
咲良の髪を結んでやり、幼稚園の服を着せて食卓にいき、テーブルに料理を並べていると。
寮に住んでいる人たちが集まる。
ほのちゃんは心配だからってこっちに来た。
芹香さんも榊さんと美桜さんと一緒にこっちにハスキー犬のヤマトもつれて住んでくれてる。
猫屋敷みたいなものだけど、ヤマトと仲良くやっているようである。
裕香ちゃんと裕樹さんも心配してここに住んでくれている。
なんでも用心棒なんだそうです。
「ゆーかおねーたん!」
「咲良ちゃん、元気だね~♪」
咲良は裕香ちゃんに甘えることが多くて、困らないかなって思ったけど。
甘えるのも甘えられるの好きなんだそうで。
「手伝う」
「ありがとう、裕樹しゃん」
並べるのを手伝ってくれる裕樹さんにはいつも感謝しっぱなし。
「みなもちゃんは大家さんなんだからそんなにかしこまらなくていいんだよ?」
「そうそう」
「芹香ちゃんの言う通りよ~♪」
と、これまたいつもどおりに言われてしまう。
うーん、大家失格かなぁと想いつつ、今を楽しめるのがこんなみんないてくれて娘がいるからじゃないかと思う。
一度倒れてかなり叱られたこともあるし、死ぬ瞬間に立ち会い泣き崩れ意識を失ったこともある。
そんなときにここに住んでいるみんなが励ましてくれた。
だから、今を頑張れるんじゃないかなと思える。
「じゃあ、咲良を幼稚園に送ってきますね」
「ユウ兄ちゃん、つきそい!」
「はいはい」
わたしがそういうと裕香ちゃんに促されてついてきてくれる裕樹さん。
それを見ながらなかなか裕樹さんにあうお嫁さんで恋人さんができなくてお姉ちゃんができないって裕香ちゃんが嘆いていたなぁと思い出す。
「ママ、さくら、きれいね~」
「そうだね。 咲良の名前もここからとったんだよ?」
手を繋いで歩きながら言うと嬉しそうに笑う姿はとても愛らしくて守っていかないとって強く決心できるほど。
咲良を幼稚園に送り届けて医大へと向かうまでも裕樹さんは付き添ってくれる。
なんでも狙われるからってよく言われるんだけど。
そいうもんなのだろうかって思えるわたしはおかしいのかどこか壊れているのかもしれない。
「じゃあ、また迎えにくるから」
「一人でも大丈夫でしゅよ」
裕樹さんがそういうけど迷惑ではという感情があるので遠慮しようとするが。
「あのな、自覚を持てとはいわんが遠慮はするな。 ほら、あの家では家族だろ」
「ふふ、そうでしたね」
そういわれてくすっと笑いながら頭をさげて医大へと入る。
わたしの心には秀久くんがいまだにいる。
でも、周りはそろそろ再婚してもいいんじゃないかと言われている。
咲良のためにもって………。
「秀久くん、わたしは……幸せになっていいのかな?」
ぽつりと空を見上げてつぶやくわたしにだれも問いかけに応えてなどくれない。




