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真琴は麻理の運転する車の助手席で冷や汗をかいていた。
どう見ても隣で運転する麻理の身長が足りていない。いや、足りてはいるのだろうがギリギリすぎて交差点などから発進する際には真琴が歩道側の安全確認を自発的に行っていた。助手席に座ってからというものの、まるでジェットコースターがゆっくりと坂を上がっていくときのような緊張感が永遠に続くように感じていた。
既に真琴の家に立ち寄り簡単に出張の準備を整えてから1時間は経っているのだが体が慣れる様子は見られていない。これが後どれ位続くのかは分からないが影女とは違う恐ろしさを感じていた。
その緊張に気付いているのかいないのか、久しぶりに現れた信号で停車をすると麻理が真琴に話しかける。
「いきなりこんなおばさんと出張って言われても困るよね」
「いえいえいえいえ。ぜんぜんおばさんなんかに見えませんって」
「あら嬉しい。結構年なんだけどね」
そう言って麻理はからからと笑う。
「緊張してる?突然の出張だもんね。あいつも前もって話しなきゃダメだよね」
緊張しているのはこの大型ワゴンとあなたの運転ですとは言えず、真琴は困ったような顔で頷くことが精一杯だった。それに気付く様子はなく、信号が青になると麻理は車を発進させた。
「これから向う仕事のこと何も分からなきゃ緊張だってするよね。向こうに着くまで結構時間もあるから簡単にだけど説明をしておいたほうがいいかぁ」
幸い麻理は好意的にその表情を受け取ったようだった。
「今回の依頼はちょっと面倒みたいでね、土地神様を鎮めるんだけど道具が必要なんだ」
「神様ですか?あの神社とかでやるお祓いなやつでもやるのでしょうか?」
「私たちは神職ではないからそれとは違うかなぁ。結構乱暴なやり方かもね」
「神様に対して乱暴なやり方って、天罰とか祟られたりとかは大丈夫なんですか?」
「あら、勿論お怒りを買ったらただじゃすまないと思うけど」
麻理はにっこりと笑うが真琴は引きつった笑顔を浮かべることしか出来なかった。
一個人が神霊となった影女ですらあの恐ろしさがあったというのに、今度は神様が相手となると正直どうなってしまうのか予想もつけることが出来なかった。
「私たちだって馬鹿じゃないから神様にいきなり喧嘩売るようなことはしないから安心してね」
「はぁ……。期待しています」
「素直で宜しい。まぁ真琴ちゃんは事務員さんだから危ない目には合わないと思うけど」
それってフラグを立ててますよね、とは言えずに真琴は引き続き引きつった愛想笑いを浮かべることしか出来なかった。
「まぁどちらかって言うと人間相手のほうが危ないかな。今回の依頼者は地域一体の大地主さんの娘さんでね、依頼者の家族が奉ってある神様の食べ物になる予定の娘さんを神様から取り上げるって言うのが大体の流れなんだけど、まぁ妨害されるよね」
「神様相手にそんなことしてもいいんですか!?」
「良いか悪いかで言えば良いのよね。私たちの仕事は大神様以外の神霊がこの現し世に干渉することを防止することだから。ついでにその神様が居なくなってその一族がどうなろうとも気にしないわ。向こうの娘さんも何を考えているのか分からないけど私たちを利用しようとしているのは間違いなさそうだしお相子よね」
「……もしかして大変そうな話ですか?」
「大変かと聞かれれば大変かもね。下手したら行方不明とかにされるかも」
「帰りたいです降ろして下さい会社辞めます」
「大丈夫だって。そうならない様にもう一人も現地で落ち合う予定だから。恭介がいるから神霊も心配する必要なんてないから安心して美味しいものでも食べて帰る予定でも立ててましょ」
そういって麻理は大きなあくびをすると、長時間の運転で少し疲れたのか首を回したりしている。その姿には緊張感は見当たらない。
「……もしかして柏木さんって割と凄い人だったりするんですか?」
「恭介はこの世界じゃ上から数えたほうが早いくらいの天才かな。相手が神様だろうと関係ないから大船に乗ったつもりで良いわ」
「へぇー」
「まぁとにかく先ずは恭介との待ち合わせ場所まで行かないとね。少し飛ばしていきましょうか」
麻理はそう言うとアクセルを踏み込んだ。
話がまとまらずやっとの思いで作成しました。
ちゃんと話の大筋くらい考えてから投稿しないとダメですね。
次回はもう少し早めに投稿できれば良いなと思っています。
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