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 あれから車を走らせること三十分弱、恭介は目的の町に到着した。

 人口は約二万人弱、特産品は牛肉や蟹等の海産物。温泉も有名ではあるが北海道では割とありふれたものだ。恭介は駅前のビジネスホテルにチェックインすると荷物を部屋に置き、ベッドの上に大の字に転がる。


「はぁ」


 思わず声が漏れる。久しぶりの長時間運転だ。すっかりあちこちが凝り固まっていた。首を回したり体をひねったりしていると「あぁ」だの「うぅ」だのおっさんくさい声が続けて漏れた。

 そうして一通り体をほぐしてやると少しは体が楽になったのか、ベッドの端に座るように起き上がるとスマホを取り出し電話を掛ける。相手は直ぐに出たようだ。


「七瀬さんですか?柏木です。到着しました。そちらはどうですか?……誰も来ていない。それは良かった。適当に仕事切り上げて帰っても良いですからね。……はぁ、真面目ですね。え?私が不真面目?嫌だなぁ。……はい、はい。何かあれば直ぐに連絡してください。急ぎの際にはあの台帳に書いてる……、分かってますよね。失礼しました。はいどうも。ではまた連絡します」


 定時連絡を終えると恭介は例のSNSに返信が無いかを確認する。

 『鏡屋』と何一つ説明も無いホームページタイトルと掲示板のみ。質素すぎるトップページから掲示板に入る。書き込みは依頼終了の時点で削除をしているため表向きには本当に何もないように見えている。管理者用のIDとパスワードを入力すると非表示になっていた何件かの書き込みが姿を現した。

 数件の書き込みの中から目的の書き込みを見つけたが書きこまれた後は無い。書き込みがあった際には多少遅れるが別のアプリに連絡が入るようになっているのだが。


 恭介は落胆することも無く画面を閉じるとスマホをポケットにしまいこむ。書き込みなど無い方が好都合だ。

 確かこの町の牛肉は有名だったはずだよなぁ。そう思い出した恭介はテーブルに置いていた車のキーを手に取るとかなり遅くなった昼食をすることに決めた。




 ビジネスホテルを後にして恭介はお目当てのステーキ定食を食べた後、書き込まれた住所へ向うために再度車を走らせていた。

 ゆっくりと食事をしていたためかもう陽はゆっくりと傾きつつある。

 あまり遅くなってしまっては慣れない土地で目的の住所までたどり着けないかもしれないな。他人事のように考えながらカーナビをちらりと見る。

 駅前からまだそんなに走ってはいないのだが回りは既に田園地帯が広がっている。目的の住所は『字○○大字△△』などという住所のため更にここから車を走らせる必要があるのだろう。後目的地まで十五分と表示されていた。


 コーヒーを飲みながら恭介は車を走らせていると集落めいた住宅郡が見えてきた。道路の横には古くなり半分ペンキが剥がれかかっている看板が立っている。土地着きの建売で都市圏の三割安程の値段が書かれていた。

 住宅街を作ろうとして失敗したのだろうか、多くの区画は建設予定の立て札が立ったまま長いこと雨風にさらされているようだった。空き地の方が多いが新しめの住宅も幾つか見受けられた。見たところ多少の住人もいるようだ。

 目的地はまだこの先を表示しているがもう直ぐの様だった。カーナビからは「目的地まであと少しです」と音声が聞こえてきた。どうやらこの住宅予定地を抜けて直ぐのところが目的地らしい。


 カーナビの通りに運転を続けていると「目的地に到着しました。お疲れ様でした」との音声が聞こえる。目の前には古びたアパートが一件建っていた。二階建てでノスタルジーな外観をしている。特徴は立ち入り禁止とあちらこちらに半分剥がれかかった張り紙が残っているところだろうか。

 やれやれと肩をすくめながら恭介は車を停め外に出る。


「仕事になりそうな感じだなぁ」


 恭介はそういうとアパートを改めて眺める。昭和を思い出させる作りのアパートの窓には全てベニヤ板が打ちつけられており中を伺うことは出来なかった。二階へ上る階段は鉄製だがあちこちが腐っていて穴だらけになっていた。踏めば直ぐに底が抜けるだろう。


 恭介はそう見当をつけているとあちらこちらからこちらを見ている感覚が伝わってきた。

 アパートから目を外し辺りを見回してみるとそれらはいた。

 黄土色の毛がはえたバスケットボール大の塊に四本の足と尻尾が生えていた。毛並みだけを見れば狐のように見えるそれには顔は無く、塊の真ん中よりやや上側、首がある辺りにいびつな歯が生えた口のような穴がぽっかりと見えている。

 そのほかには三角形の頂点を合わせたようなものがひらひらと蝶のように空を飛んでいる。その奥には馬ほどもある四足歩行の毛の生えた塊がこちらを見ている。頭がある部分には立派な雄鹿の角が生えていた。

 遠巻きに眺めているそれらはその場をうろうろとしているがこちらに向ってくる気配は無い。


 それらは動物の神霊だった。何が原因で死んだのかは分からない。生前に持っていただろう自我としての記憶を頼りに姿を作りそこに佇んでいるだけの存在だ。悪意は感じない。


 恭介はそれらを眺めながら車に乗り込んだ。シートベルトを締めた後スマホを取り出すと例の掲示板を確認する。


 予想通りそこには新着書き込みのマークが光っている。恭介は良くあたる自分の勘を恨みながら溜息を吐いた。

またも見切り発車ではございますがお話は進行いたします。


時間がある限り更新をしていきたいと思いますので、宜しければこの後もお付き合い頂ければ幸いです。

今回は夢で見た内容が元になっております。なんでこんな夢見たんだろうなぁと起きてみてびっくりです。


最後まで書き終えれるよう頑張ります。

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