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-9ー

 柏木さんとあの日廃校から帰る途中私はダメ元で鏡屋で働かせてくれないかと頼んでみた。勿論柏木さんのようなことは出来ないので事務員や雑用係としてだ。


 長く休みすぎてしまったことも会社に戻りたくない原因の一つだけど、一番の問題は病院に併設している介護施設ということ。つまりは人の亡くなる瞬間に立ち会うことが他の仕事よりも圧倒的に多いのだ。

 あの後もう少し柏木さんと車の中で話をしていたところ、恐らく私はこれからも度々神霊を見かけるようになるだろうという内容のことを聞かされた。そんなことを聞いてしまってはあの事務所の中で落ち着いて仕事はもう出来ない。ただでさえ亡くなられた患者さんが廊下を歩いてるだのその手の話題にはいつも事欠かないのだ。


 それであればこの手の問題を解決してくれている柏木さんが直ぐ傍にいる職場で働いていた方が安心できるだろうという安易な発想だった。勿論それはその内後悔することになるのだけれど。

 あ、柏木さんは少し考えた後いつもの笑顔で「三ヶ月間試用期間があります。時給は確か1,200円で……」とあれこれと説明をしてくれた。どうやら本格的に人材不足のようだった。ハローワークには求人を出しているが仕事内容をあまり詳しくは伝えられないため誰の目にも留まらず困っていたとの事。その点神霊を実際に見た私はそこらへんの説明をする必要も無い訳だし。実にあっさりと次の就職先が決まった。


 ともかく私はあの後自宅に帰り辞表を書くと次の日に上司に手渡した。するとなぜか上司は少し緊張した顔でそれを受け取ると何も言わず残りの有給や溜まっていたフレックスの消化を促してくれた。もともと話の分かる人ではあったけど。後で分かった事だがこれについては柏木さんが後ろで手を回してくれていたらしい。


 その後思ってもいなかった連休に戸惑っていたが、有り余る時間を利用して思い切って綾香と孝弘に連絡を取り今までのことを色々とぼかしながら説明をした。二人は半信半疑というところではあったが私がもう立ち直ったと伝えると本気で喜んでくれていた。

 ……まぁ後から聞いたところ精神疾患に掛かって病院に行って無事回復したんだと思っていたらしいのだが仕方が無いだろう。私だってあの二人から聞かされても病院を紹介するところだ。


 そうそう。もう一つ伝えたいことがある。気になってはいたのだが柏木さんになかなか聞けずにいたことだ。私が初めて鏡屋に来てあの影女を間近で見て動けずにいた時何かを落としたような音が聞こえたことを憶えているだろうか?

 あれは柏木さんが助けてくれたものとばっかり思っていたのだがどうやら違うらしい。あのビルには神様が居るらしく私はその神様に助けてもらったらしい。柏木さんはそれを知っていたので様子を見ていたらしいが分かってるならさっさと助けに来い。案外酷いことをさらっとする色白眼鏡には気を付けなくてはならないと気を引き締めたところだった。


 翌月からは鏡屋で事務見習いとしてせっせと働き出した所、何処でどうこの鏡屋を知ったのかは知らないが大体一週間に一人のペースで依頼者がやってきた。大抵は柏木さんが私にも渡したあの三点セットを渡した所で怪異や心霊現象は収まっているようだった。どうやら私の影女は意外と厄介なやつだったんだなと改めて教えられた。


 それからしばらく時間が経ち試用期間も終わりかけたとき、一件のSNSの書き込みを柏木さんに見せられた。……うん、ブログとかもやってんだよね、会社で。見せられた時は思いっきり脱力したけど。

 その書き込みは短く、必要なことしか書いていなかった。


『助けて下さい』


 どうやら柏木さんも書き込みの内容をどう捉えたものか少し困っているようだった。

 取りあえず返信をしながら様子を見てみようとなり、ご挨拶を含めて返信を行ったところ数日たった所で再度の書き込みが見られた。

 

 それは北海道の道央にある町の住所だった。ここから二、三時間車で走った先にある。私も何度か行ったことはあるので町名は分かっているのだがその先の細かい住所はさっぱり分からなかった。

 だが柏木さんはその場所を知っているのか、難しい顔をしながらどこかへ電話を掛けていた。奥の部屋に行ってしまったので内容は分からなかったが。


 その更に数日後、柏木さんはどうやら書き込みのあった住所へと出かけるようだった。小さめのキャリーケースを持って車に乗り込むと私に試用期間を切り上げて正式採用をすることを伝え、何かがあったら書棚の中にある連絡先に連絡を取るよう指示を出した。


「じゃあ行ってきます。留守の間宜しくお願いします」


 そう言って出発した柏木さんを見送りながら私は胸騒ぎを覚えていた。

取りあえず「影」はこれにて終わりです。

登場人物のご挨拶という感じで書かせていただいたので色々と消化不良で終わっている部分が多いとは思いますが、徐々にでも色々なものを回収できれば良いなぁと思っております。


次は北海道の道央の町で起きた不思議な出来事を柏木さんとそのお仲間が解決をするお話の予定です。



そういえば途中からホラーとしての要素が無くなり、「あ、これどっちかって言うとファンタジーだよね」と気づき……。キーワードに「ファンタジー要素あり」を挿入させていただきいています。そしてホラーランキングを眺めながら、これがホラーか……と思いながら勉強させて頂いています。


ちなみに所々自称お化けが見える方々のありがたいお話をご参考にさせて頂いております。古本屋さんのおじいちゃん、まだ元気かなぁ。


宜しければご感想などを短くても構いませんので頂ければ猿のように喜びます。また、こんな稚拙な文章ではありますがここまでお読みいただいた皆様に感謝を申し上げて終わりとさせていただきます。

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