送別会は突然に その2
教室はざわめいている。
試験の総合結果が配られていた。
友人と順位を比較して喜んでいる者、総合得点を確認して顔をしかめる者など、
様々である。
ユウ・ローゼンモートリオも試験結果を眺めている一人だった。
彼の表情は少し暗い。
試験結果には、総合得点と学年の順位が記載されている。
『学年2位』
この結果を後ろからみた男子生徒が声を上げる。
「おいっ、ユウ、2位かよ!」
「すげぇ~」
どよめきたつユウの周囲の人たち。
しかし、ユウの表情はすぐれない。
『2位じゃダメなんだよ』
ユウは心の中で叫んだ。
しかし、その声は周囲の人に届くことはない。
「すげぇ~、2位だって!!」
相変わらず、騒いでいる。
『ダメなんだ』
その声は、周囲の人に届くには十分だった。
周りの目は、ユウに注がれる。
『ダメなんだ……』
ユウの視線の先には、小柄の男子生徒がいる。
顔はよく見えない。
『あいつがまた1位か……
くそっ、奴を超えることはできないのか?』
その男子生徒の顔は見ないが、彼を見て笑っているように感じた。
『あいつ、俺を馬鹿にしているのか』
彼は怒りに身を任せ、この男子生徒を追う。
周りには何も見えない。
彼の目に映るのはこの男子生徒のみ。
もう少しで男子生徒を捕まえることができそうなところまできた。
しかし、男子生徒を捕まえることはできない。
それどころか、遠ざかっていく。
『待て、待てよ!!』
どんどん遠ざかっていく男子生徒を男子生徒。
それとともに、周囲が光輝き、男子生徒を見ることすらできなくなってしまった。
眩い光で男子生徒どころか周囲が見えなくなる。
「うわっ」
ユウは声をあげて立ち上がってしまった。
そこは、教室だった。
周囲の生徒の視線がユウに集まる。
彼は、周囲を気にしながらも、何事もなかったかのように席に座る。
『夢か?』
寝汗をかいている。
彼は夢の内容はあまり覚えていないが、彼にとって嫌な夢であったことは
間違いない。
彼が首をひねり思い悩んでいると、ユウは話しかけられた。
「よう、ユウ」
ユウにとっては、聞き覚えのある声だった。
「キリングス先輩……」
「送別会実行委員……」
「もう、その話は断ったはずですよ」
「何とか」
「何とかできません。
お引き取り下さい」
「部活の先輩の言うことが聞けないのかよ」
「引退した人は、部活の人ではありません。
もう、OBですよ」
「OBの……」
「何と言われようとダメです。
試験勉強があるんですから」
「頼むよ……」
「他の人に頼んでください」
キリングスはなおもユウを見つめるが、ユウは目をそらす。
その場は膠着状態になるが、ここでキリングスを動かす出来事が起こった。
それは、幼馴染のファリカが入ってきたのだ。