送別会は突然に その1
昼時、多くの学生が食堂を利用する為、150名程度の席はすぐに埋まってしまう。
この時間帯は、席を確保する競争が日々繰り返されている。
基本的に食事を受け取った後に席に座る約束事はあるが、これだけの人数が
集まると、受け取り前に席を確保するものもいる。
食堂の席取りはなかなか難しい。
受け取りカウンターで食事を受け取ったカイトは、周囲を見渡すが、
席の空きはない。
『さすがにもうないよな』
じっくり探す前からカイトは諦めて、教室で食べることにする。
いつも、このような思考が繰り返されている。
食器を片す手間はあるが、席をとれるかとれないかで気を遣うよりは楽と彼は考えていた。
そして教室に戻ろうとした時だった。
「カイト」
声がかかった
彼が振り向くと、そこには細身で、ネコ目が特徴の男子生徒だった。
満面の笑みで、カイトを見つめていている。
「キリングス先輩……」
「何だよ、よそよそしい。幼馴染だろ」
「一応(、、)、先輩ですから……」
「いちおう、って何だよ。
まぁいいか、そこに座れよ」
キリングスは一席空いていた横の席を指さした。
カイトは少し苦笑いを浮かべ、それに応じる。
「久しぶりだな」
「そうですね。
3年生とは、教室が離れていますからね」
「おっ、日替わり定食か」
「はい」
「先輩は?」
「俺はかつ丼だ」
「好きですね~」
「かつ丼は栄養満点なんだぞ」
「はいはい……」
「かつ丼は、栄養バランスもいいんだ。
ビタミン、ミネラル豊富……」
「カロリーが……」
「俺の肉体を見ろ!」
「ちょっ……」
「かつ丼ばかり食べているが、この肉体だ」
制止する間もなく、キリングスが上半身裸になる。
細身ながらも、しまった筋肉を見せつける。
周辺の生徒の目が彼に注目をし、ざわめき立つ。
「分かった、分かりましたから……」
そう言ってカイトはキリングスの上着を下におろす。
食事を終えたので、カイトは席を立つ。
「それじゃ、また後で……」
「お、おいっ、まだ話、終わっていないぞ」
カイトはその制止を相手にせず、さっさと教室に戻ってしまった。
キリングスが立ち上がるが、彼は何者かに手をつかまれる。
「キリングス君……」
騒ぎをかけてつけた先生がキリングスのもとにやってきた。
「先生……」
「ちょっと、職員室に……」
「うわっ、ちょっと、カイト、まだ話が……」
キリングスは職員室に連行されていった。
食堂には元の雑踏が戻る。
そもそも、キリングスがカイトを呼び止めたのは偶然ではなかった。
カイトの動きを見て、キリングスが声をかけたのだ。
キリングスが声をかけた理由は……
それは、遡る事2時間前……