A
やっと登りきった。目の前には足跡のない白、そしてまた急勾配の赤い山。穴ぼこだらけのその山は光が当たって怪しげに光る。
僕は歩くうちに仲間とはぐれた。どうしよう帰り道もわからない。僕はただひたすらに歩くだけ。足元の白は足に絡み付いてきて冷たい。
泣きそうになりながら一歩また一歩と歩を進める。いつもは歩くのは得意だ。どんなに重い荷物を持っていたって仲間とならどこまでも行ける。
どれだけ家から離れても怖くないし僕達は家の場所を決して忘れなかった。来た道を戻ればいいのだから。でも一人になった途端、僕は心細くなって来た道を忘れた。
あぁ、これが夢だったなら。もう一度目をつぶって開けたならそこに自分の部屋があって暖かい布団の感触がしたならどれだけいいだろう。でも目の前には白と赤。
とぼとぼ歩く、うつむいて歩く、大股で歩く。どんな歩き方をしても一人。上を向いて歩く。太陽の位置を見れば時間か方角かなにかわかるだろうか。
もっと良く見ようとして僕は足を踏み外した。白と白の裂け目へ僕は落ちる。
さよならみんな。
目が覚めた。目の前には黄の洞窟。あぁ、落ちた裂け目があんなに遠い。生きていられた。落ちたところが柔らかくてよかった。
でももう這い上がるのは無理だ。ここで息絶えるのか、それともこの黄の迷宮をあるかどうかもわからぬ出口を心の支えにまた彷徨い歩くのか。
僕は歩くことにした。歩けば歩くほど黄の洞窟は無限だった。時々またあの白や赤に出会う。洞窟は暗かったけど僕は暗闇はそんなに嫌いじゃない。家も日当たりのいいほうじゃないし、毎朝出かける道もトンネル。
とぼとぼ、とぼとぼ。
永遠かと思ったけれど光が見えた。歩調を早める僕。久しぶりの外の世界。眩しい太陽が僕の黒い体を照らした。6本の足は棒のようだったし、触角だって暗闇の中で頼りすぎてくたくた。ただの糸くずがついてるみたいだった。
外から見て初めて、僕が迷っていた黄と白と赤で出来たものを眺めた。それは僕らがいつも運んでいるケーキだった。「いつも運んでいるのに気づかないなんて馬鹿だな僕は」そう思うと笑えてきた。
少しの間呆然としたけれど暗闇で沈んだ心が外の明るさと共鳴したようにだんだん明るくなった。僕は今度は明るい世界を家を探して歩き出した。
きっと仲間が心配している。
そう思うと僕の足は羽に変わった。
初めての投稿なのでよろしくお願いします。




