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閑静な夜とどよめく朝

−宙を舞う白雪に目を奪われたならどんなに素敵なことだったろうか。



僕、シーは直径10cm弱の雪が異常なデカさだったことは、脳の思い込みによるものか、まったく違和感を感じなかったのだが、くりくりした丸や三角の黒点から、ソレが雪ではないと気づいた。


「へ? れぇ? 大福?」


突然気づいたので、変に間の抜けた声が漏れてしまう。

しかし、そのおかげで驚きが幾分かクールダウンし、豆大福の招待を捉えることが出来た。


「シマエナガだ…」


2つのおめめに光は宿っていなかった。

虹彩なんて色鮮やかな言葉とは無縁の、黒ベタ塗り一色であった。


三次元であることを忘れてしまいそうな奥行きの無さに圧迫感を覚え、目を逸らす。

その先にあるショーウインドウに自分の姿が映った。

本来、栗色であるはずの僕の髪の毛が、真っ黒に見えたので一瞬ギョッとしてしまう。


(いやいやマテマテ、今は夜だしガラスは鏡じゃない。色が曇るのは当たり前だ。まだ頭が軽く混乱しているのか)


「ふぅー」


深呼吸をする。次に身の危険がないことを意識する。

ナゼ? を考えればこの超自然的な現象には恐怖を感じるが、置かれた状況だけ見れば害の無さそうな小鳥さんに囲まれているだけだ。


(あぁ、ソレはソレで怖いぞ。悪夢でも見ているのか?)


僕は頬っぺたを抓ってみた。ベタだが。

夢の中で一番ホンモノらしく振舞うのは、僕の場合、視覚情報だ。

だから今流れている春夜の風と匂いは夢の作り物とは思えない。


(現実なんだな…)


止めどなく降り注ぐシマエナガ。

現在同じ景色を見ている人もいるとは思うのだが、少数では騒ぎにならない。

ただこの状況では、烏合の集が騒いでもしょうがない気もする。


日が昇るまで何が出来るわけでも無さそうだったので、僕はとりあえず帰宅することにした。


挿絵(By みてみん)

(※挿絵は作者の画力不足により正確でない部分もありますが、大筋に問題はありません)



######次の日######


朝、ベッドから起き従業員用の出入り口から外に出る。

天気は曇りだが比較的明るい。

シマエナガの白い体に光が反射して、より明るい世界を作っているようだ。

レストランは定休日なので、リペアリア兄姉はまだ寝ている。


懸念した通り町の人達は騒ぎ立てており、町長の職場がある方角に人の列が動いている。

おそらく質問攻めにしているであろう群だろう。

しかし、少し歩くともっとすごいものを見てしまった…


「うわぁ、びっしりだ…」


どうしてか海沿いにずっと人の堤防が出来上がっている。

人の壁でまったく海が見えないので、僕は店の自室まで戻り、窓から海を見ることにした。


「なんだよ…アレ…」


シマエナガは雲の上から降ってきているわけでは無かった。

降り注ぐシマエナガが邪魔なのだが、最も密度の高い方に目をやると、白い蚊柱のような物が上へ上へ伸びている。

動きから察するに、下から押し上げられているようだ。

とすると、あの大量のシマエナガを吐き出しているのは何なのだろうか…。


僕は駄目元で、リペアリア兄姉を起こしに行った。

あの2人ならもう少しマシな見解をしてくれそうだと思ったからだ。

しかし定休日の2人は冬眠したヘビのように、ちょっとやそっとじゃ起きてくれないだろう…。


まだアンプルの方が(あくまでバイアルと比べてなのだが)寝覚めがマシなので、部屋のドアをノックしてみた。

当然なんの反応も帰ってこないので、普段お昼ご飯ができたことを知らせる時と同じように、部屋に入る。


そこには要塞が築き上げられていた。

布団の塊が、先程見た堤防よりもコンクリートのように、重厚感を漂わせている。

昼では見ない光景だ。今まで見てきたのは、おそらく二度寝による寝返りで多少瓦解した後の城だったのだろう。

どうやら熟睡中はあまり動かない人らしい…とそこを分析していても埒が明かない。


(何か工夫しなくては…)



【次回! 策を思いついたシーが取った行動とは? そしてリペアリア兄姉のシマエナガ事件に対する反応はイカに!? 皆、楽しみにしててくれよな☆】by 作者

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