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一年生編 春 第十四話

 


 私の名前は吉田恵、もうすぐ16歳になります。ここ聖盾女学園に通う華の女子高生である。そして、高校生の三年間は短い。それこそ華の命のように儚く過ぎ去っていくの。だからこそ、今の一瞬を楽しまなくちゃ損じゃない? だから多少の無茶やおふざけは許してもいいと思う。そう、なんでも有りが女子高生の特権。



「だからといって、教師と生徒が一線超えるのはまずいと思うの」


「お前は何を言っているんだ?」



 扉の前で呆れた表情で立つ恵。


 榛菜の叫び声に急いで駆けつけたようで息が荒い。



「ち、ち、ちちち! 違いますよ!? 吉田さん! 私は何もされてませんから大丈夫です。ほ、ほら! シーツに血がついていませんし」


「先生、落ち着いて下さい。弁護になっていません、寧ろ悪化しています。」


「はぅ……」



 年上なのに可愛い人だなあ、と両手で顔を覆い恥ずかしがる榛菜に対し思ってしまう恵。



「そうだぞ? 私がそんな下衆な事をする訳が無いだろう」


「黙れ脱ぎ魔」


「朝から痛いぞ?」



 仕方が無いので手製のハリセンで百合の頭を叩く。その事に対し抗議するも素っ裸なのでかなり異様な光景であった。



「とにかく、隠しなさい。」



 少し冷静になったのか、シーツを百合の身体にかける榛菜。



「まったく、昨日夜遅くに帰ってきたと思ったら先生拉致してくるし、そのままベッドに寝かせたと思ったら裸で襲ってるし……」


「それは酷い奴だ」


「襲われてません! それに拉致って……」


「あれ? 憶えて無いんですか? 先生が階段を踏み外してこいつに落ちてきてそのまま気絶したのを寮まで連れてきたんです」


「え?」



 恵の発言に驚いた表情で百合を見るが、片目を瞑りながら舌を出す彼女の様子に何かを察したのか



「え、ええ、そうなんです。うっかり踏み外しまして……」


「気をつけて下さいよ? こいつがクッションになったんで良かったものの怪我をしたら大変なんですから」


「その言い草だと私は別にいいと?」


「あんたは階段から落ちたくらいじゃ怪我しないでしょ?」


「確かにそうだが、最近私に対してきつくないか? 色々と」


「自分の胸に聞いてみな」


「ふむ……そうだな、自分で言うのもなんだが良い張りをしている」


「なんだろう? すごく殺意が沸いてきた」


「えーと……」



 二人のやり取りに戸惑う榛菜。というより早く服を着て欲しい……



「とりあえず、先生はお風呂に入られたらどうですか? 上着はハンガーにかけたのですが、スカートは流石にそのままでしたし」



 見れば昨夜の格好のままである。



「私のでよければ着替えが……」



 そこまで発言して止まる。



「さて、私は先生の分の朝食の用意を……」


「待て」


「きゃんっ」



 そのまま踵を返す恵の襟を掴む。



「だって! だって! どう考えても無理だもん! それともあれが大人の余裕なの!?」


「えっと……」



 榛菜の胸を指差しながら足をバタつかせる。



「解った、解った。とりあえず私のを貸すから、教官を風呂まで案内してくれ・」



 このままでは埒があかないので、自分の予備のスエットを恵に手渡し促す。



「ん、解った。」


「えっと、それじゃ吉田さんお願いしますね。」


「はい、こちらです先生。」



 そうして風呂場へと向かう為、百合の部屋を後にする。閉められた扉を見つめながら一人溜息を吐く。







 着替えを早々に済まし、先ほどまで寝ていたベッドに腰掛ける。先ほどまでの騒がしさが嘘のように静かだ。



 さて、どうしたものか? 



 心の中で自問する。まずは、私への嫌がらせの対処であるが……



 ひとつ、ひとつ、整理していく。



 まず、相手が一人なのか、それとも複数なのか。



 単独は考え難い、リスクが高すぎる。



 まず、誰もいないとはいえ教室内に進入して一生徒の鞄の中を漁り、尚且つ中身を破壊する。これだけの行為を一人で行うには手際が良すぎる。



 となると、複数による犯行が妥当だな。



 入学して間もない百合のクラスや席順を一体どれだけの生徒が把握しているだろうか?



 余り考えたくは無いが、クラスメイトの誰かが協力している可能性があるということか。



 確かにクラス全員と仲が良いわけでもない。まだ一言も会話していないクラスメイトもいるくらいだ。ともあれ、



 クラスメイトを疑うのも悪い。となれば、こちらから罠を仕掛けるほかないか……



 広い校内、大勢の生徒の中から犯人を探すよりは手間も時間も省ける。要は狙われている自分を囮にすればいい。



 ふむ、となれば色々と準備が必要だな。



 考えが纏まると、クローゼットの奥にある隠し収納スペースを漁りだす。そこには昔愛用していた特殊なグッズが所狭しと保管されていた。















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