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「…で、それから?」

「それから谺とその与謝野晶ってコとよく話すようになって、3人で行動することも多くなったんです。恥ずかしながら、この2人が初めてできたそれらしい友達だったんですけど…」

言ってから、蜂須賀は少々目を伏せがちになった。3人の表情も自ずと堅くなる。

「…与謝野くんは終業式のあった日、7月の22日に交通事故で亡くなりました」

「え…?」

「…何やそれ、流石に唐突やあらへん?」

「そう、突然すぎる死でしたよ。だからお葬式に出席した時も、全然泣けなかったし、普通に与謝野くんの番号に掛けようとしてたし…まだ事実を受け入れられていなかったんでしょうね」

場は静まり返った。単に彼女の昔話を聞こうとしただけだったのに、まさか人の死がこうも簡単に蜂須賀の口から滑り出て来るとは、3人には予想もできなかったからだ。無理もないだろう、流石に「ある男の子と仲良くなった」という話がいきなり「その男の子が事故死した」という話に展開するのは、いくらなんでも段階をいくつか飛び越えてしまうような話題の飛躍だ。

「…それで、『懐かしみたい』って言葉の意味は、その話にどう結びつくんや?」

最初に我に返った笠置が、彼女に問うた。

「実は、与謝野くんを轢いた犯人がまだ見つかってないんです。車…というか残骸?は後日見つかったんですけど、持ち主は事故の何年も前に亡くなっていたらしくて…そこからは迷宮入りです」

「車に指紋とか、物的証拠は?」

「指紋も何も、車は与謝野くんを轢いた後炎上したので…見つかったのは骨組みと片方のナンバープレートだけだったそうです」

「じゃあ、運転手は車ごと焼かれたんじゃないのか?」

「それはないです。あの事故…"事件"での死者は与謝野くんしか確認されていません」

彼らは蜂須賀がこの件を「迷宮入りした」といった理由を、ここで思い知った。

「確かにそれじゃ、個人として犯人を特定するのはほぼ不可能だな…」

「せやけど、その炎上した言う車のナンバープレートは確認できとるんやろ?そのナンバーを追って湧いてくる購入者の情報とかが警察側で未だ洗えてないってのは、不自然とちゃうか?」

「はい。私は、そういった本来遺族に開示されるべき情報の堤防になってる人間が警察側にいるんじゃないかと考えて、こんな風に恩を売ってその握っているだろう情報に迫ろうとしてるんです。都合よく内部に友人もできましたし」

一同が驚いたのは、何よりもこの蜂須賀が知らないところでこれ程までに思考を展開し、行動に移っていたことだ。健気な外見に似合わずアクティブな少女である。

「って、結局媚び売ってるのとそう変わらねえだろ…」

「う、うるさいなあ」

一通り聴き終えた後、はあ、と大きな溜め息を吐いたのは、田倉崎だった。

「そういうことなら無駄に溜め込むなよ、仲間なんだから」

「いや、あんたを仲間と思ったことはないけど」

「ええ!?じ、じゃあ俺はお前にとってどういう立ち位置なんだよ!?」

「うーんと…知り合い」

「言い切った!こういう質問は普通疑問符付くもんじゃねえのか!?」

滑稽なやり取りを見た2回生2人の愉快そうな笑い声が、6畳程の小さな部屋に響き渡る。

「…その点先輩達は随分と仲いいですよね」

「ま、ボクらは中学生来からの付き合いやからな」

「ここまで一緒に居ると、価値観も自然と似てきてしまうものなんだろうなあ…」

飄々とした笠置とクールな黒滝では性格は一見正反対だが、見えないところで意気投合しているのだろう。人間関係がよく磁石や電荷に例えられる所以がよく解る。

「畢竟するに、ミーちゃんは昔亡くなった彼氏くんの死の真相を掴むべく、警察の捜査にお呼ばれしてるっちゅーわけかいな」

「今回は自分から進んで協力するようにしたんですけど…って、与謝野くんは別に彼氏じゃないです!」

「あれ、違うのか?私はてっきり…」

「そんな、確かに与謝野くんは優しかったし、カッコよかったですけど…」

「ぶっ、本音漏れとるで」

「ああ、いや、その、あああ…!」

笠置の巧みなイジりに、蜂須賀が真っ白なはずの顔をすっかり赤らめてワタワタし始める。

「まあ、お前の抱えてる事情は概ね把握した。その上で、私達が手伝えることはないか?」

「そ、そうですね…先輩方と田倉崎は、私と親密であるとはいえ部外者なのでテープを越えることは出来ないかと…。お願いできることといえば、情報収集くらいですかね」

「情報収集か…じゃあ俺は、一応バイト先全部に聞き込みぐらいはしてみるッスわ」

「ん、それならボクの手柄の方が飲み込んでまうと思うで」

3人の注目を集めた笠置はフフン、と得意そうに鼻を鳴らした。

「…明人、まさかアイツを使うのか?」

「せや、アイツの協力があれば百人力やで」

「あの、その人そんなにスゴイんですか…?」

彼女の問いには答えず、黒滝は代わりにガバッと立ち上がり、食べ残していたデニッシュを一気に口に詰め込む。

「そうと決まれば『善は急げ』だ、早めに連絡を入れておいた方が…」

「あー壺美ちゃん、アイツきっとメールも電話も応答できひんと思う」

「む…確かにアイツの職業柄を考えるとそうか」

「ほ、本当に大丈夫なんですか…?」

「大丈夫だ蜂須賀、少々捻くれてはいるが、悪い奴ではない」

「え、いやそういう問題ではなくて…」

「ほな、もうアイツに直接あった方が手っ取り早いな。いちいち霞ちゃんに仲介してもらうのも申し訳あらへんし」

「ちょ、ちょっと本当に大丈夫なんですよね!?」

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