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「そ、捜査協力…!?」

黒滝はその言葉を聞いた途端目を見開いて驚き、思わず手にしていたデニッシュを落としそうになった。

「いや、別にそんな驚くことじゃ…」

「へえ、ミーちゃんにもそないツテがあるんや」

「まあ、ツテといえばそうですけど」

「そんなツテ使ってまで警察に媚び売りたいのかお前は」

「は、はあ!?誰が媚びなんて売るんだよ!」

「じゃあ、なんで捜査協力なんてするんだ?」

蜂須賀は何故か口ごもるような声で、黒滝の質問に答えた。

「それは…見返りにちょっと情報が欲しくて」

「情報…?」

「まあまあ壺美ちゃん、そこまでいくとプライバシーの侵害っちゅうヤツやでー」

「そ、そうだな。すまん蜂須賀」

「いえ、そんな大したことじゃないんですけど…」

言って彼女は、ゆっくりと窓へ視線を向け、何かを思い出すかのように目を細める。

「…ちょっと、懐かしみたいだけです」

「…なんや、悩みがあるんやったらボクとか壺美ちゃん頼ってええねんで?」

「あれ、俺はハブっすか」

「え…」

背筋が凍るような感覚が蜂須賀に走る。彼はもしや人の心が読めるのか。

そんな恐れを含んだ彼女の視線を受けても、笠置は無害な薄ら笑いを浮かべるだけだった。

「べ、別に悩みとか…」

「あはは、ミーちゃん隠すの下手やなあ」

「あの、俺は」

「…笠置さんに嘘は通じないですね」

「空気扱いすんなよ!」

田倉崎の台詞達を見事にスルーして、蜂須賀はゆっくりと語り始めた。
















とある早朝、正確には2013年4月4日の、朝の日差しが地に降り注ぐ時間。

美しい花弁を咲かす桜の木々が出迎えるI高校の校門の錠を開けようと出てきた初老の事務が、一人の少女に気付いた。

「…おや、新入生かい?」

「はい」

同高校の制服に加え、黒いパーカーをブレザーの中に着込んだその少女は、無機質な声でそう言った。

すらっとした痩せ型の体躯に加え低めの身長、そして純白にうっすらと桃色のアクセントが施された肌に雪を被ったように白い頭髪を持った少女だ。顔も整っており、肌の色も相まって、美しい陶人形を連想させる。

「登校初日からこんな早くに…真面目だねえ。ちょっと待ってな、今開けるから」

「……」

深く被られたフードと前髪の間から覗く彼女の赤々とした瞳もまた、光の宿らない虚ろなもののように見受けられる。

「教室は分かるかい?良かったら案内してあげようか?」

「…結構です」

言い終わらないうちに、少女は校内へと滑らかな足取りで入って行く。

「…なんだ、あの子」

しかし事務は大して嫌な顔はせず、そのまま校舎の中へと戻った。



体育館にて入学式が終えられ、各々が指定された教室へと散っていく。既に教室に到着した集団の中で一際目立っていたのが、九度山谺クドヤマ・コダマ与謝野晶ヨサノ・アキラだった。

何故この二人が目立っていたのかと言うと、

「何よ、あたしがここにいちゃ悪いっての?」

「そ、そこまでは言ってないだろ!ただお前までここに進学するなんて聞いてなかったから単に驚いただけで…」

「あ、もしかして逆に照れてるとか?」

「もっとあるか!」

このような恋人同士の痴話喧嘩のような会話が、2人によって為されていたからだ。それも大声で。

「ああ、もうやってらんねえ…」

そう吐き捨て、与謝野が足早に教室を出ようとしたその時、

「おっと」

「きゃっ」

丁度教室に入ろうとした、とある女生徒とぶつかった。先程のパーカーを着た彼女だ。

「す、すんません」

「いえ…こちらこそ」

崩れたフードを深く被り直すと、そそくさと教室に入る。

「ん、大丈夫?フードなんか被っちゃって、あいつになんか変なことされた?」

「お、おい何言ってんだ谺!」

「あら、止めようとするってことはやっぱり何か疚しいことがあるのかな〜?」

「お前いい加減に…」

「あの…」

2人の口論の間に、白髪の少女のか細い声が、弱々しく割って入った。

「私のことで、争わないでください

…」

二人は一瞬呆気に取られ、蜂須賀の方に顔を向けたまま固まった。まさかこんな大人しそうな女の子が仲裁に入ってくるとは、と。

「…あーごめんごめん、そんなつもりじゃなかったんだけど」

「お前がおちょくるからだ…スマン、名前を訊いてもいいか?」

畳み掛けるように言葉を掛けられ戸惑いつつも、少女は声を振り絞った。

「蜂須賀、未衣です…」

これが、彼女のそれらしい、彼女自身の人生を揺り動かしたガールミーツボーイだった。


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