おかしなこと
「おかしなこともあるものだ」
僕は最近やけに体を軽く感じる。
僕の体は小さなころから太っちょで、ダイエットなんてしたこともないからずっと太り続けた。
身体測定ではずっと肥満体の結果を貰い続けた。
そんな僕が、何故か体がふわふわしているかのように軽い。
痩せたのかと思い、体重計が無いので代わりに、ウエスト周りを測ったがちっとも変っていなかった。
それでも、外をいくら歩いても疲れない、本屋で立ち読みもいくらでも続けられた。
外見は変わっていないのに、体は確かに軽い。
つくづくおかしなこともあるものだと思った。
――コンコン。
ドアのノックが響く又あの人だろう。
* * * * *
「おかしなこともあるもんだ」
俺は不動屋さんから訳ありだけど安い物件だと勧められ、このアパートに最近から住んでいる。
越して来てすぐに訳ありの意味が分かった、この部屋は壁が薄く、隣の生活音が入ってきて夜な夜な騒々しい。
隣の太った男にはいつも注意するのだけど、「僕じゃないですよ」と言っていつも改めようとはしてくれない。
今日もいつも通り五月蠅かったのだが、女を連れ込んでいるらしく、一段と耳障りな声がずっと聞こえていた。
流石にこれはいい加減にしろと、俺は切れて隣の部屋に乗り込んだのだが、いくら男の部屋を漁っても女は影も形も居なかった。
男は、いつも通り「僕じゃないですよ」と言い、今回は何も言いようがないのですごすごと帰った。
つくづくおかしなこともあるものだと思った。
ところでここ最近、男の所へ行くたびに何処からか視線を感じるんだけど。
* * * * *
「おかしなこともあるものね」
息子の話を聞くたびに私は思う。
息子の話によると、殺人事件が起きたアパートに最近越してらしい男の人が変なのだという。
なんでも、よく隣の部屋へ文句を言いに行く姿を見るけど、その部屋の前の住人は殺されていて今は誰もいないらしい。
誰も 住んでいない部屋に文句を言うなんて、とても私には理解できないおかしなことだわ。
私の以前居た所だと、そんな話はちっとも入ってこなかった。
地球っておかしなこともあるものね。
つくづくおかしなこともあるものだと思った。
こういう短編は、思いつきとノリで、ササさっと作っています。