表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘビトモ  作者: 銀龍
7/16

scene7

Scene7



 薄桃色の桜は目立たなくなり、いつの間にか葉桜の季節となっていた。感じる気温もだいぶ暖かくなり、重ね着が少し暑いくらいだ。

 そして相変わらず苦手だがようやくタツオの存在にも慣れ始め、以前ほどには武藤と言い合いをしなくなった。言い合い、といっても俺が一方的にぎゃあぎゃあ言っていただけなのだが。

 だが勘違いしないでほしい。あくまで存在に慣れてきただけであって、触れ合うことなど言語道断! いまだ近付き難し。

「武藤、茶飲むかー? っておわあぁぁああ! おまっ、それ以上近付くな! タツオを乗せたままこっちへくるんじゃない!」

 俺は慌てて後ろへ下がり、冷たい麦茶をコップへと注ぐ。

「飲む飲むー、ん」

 そんな俺の態度に武藤も慣れたようで、タツオを首に巻いたままではあるが腕をぴんと伸ばし俺にできるだけ近寄らないようにして、同じように腕をぴーんと伸ばして微妙に震えている俺の手からコップを受け取る。そして左手を腰にあててぐいっと飲み、

「ぶはーっ、うめぇ」

 と言った。俺は思わずツッコんだ。

「風呂あがりの牛乳か」


 その日の夕方。

「ふふふ見てごらん……夕陽がきれいだよ。まるで幻想豊かなぼくの心をそのまま映しているかのようだ……」

「笠木ぃ、だぁいじょうぶかあー? 戻ってこーい」

 暮れ行く空を眺め、僅かな間自分の不幸な状況を忘れ、思い出して小さな溜息をつく。これも今や日課となっている。

 だって想像してごらん? もしタツオが夜中にケースから出てきて、朝起きたらベッドの中にいましたなんてことがあったら……! 恐ろしい、恐ろしすぎる……!

 というわけで、タツオを実家に連れ帰ってほしいという気持ちに変わりはない。そうさせる気力はもはやないが。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ