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last scene
Last Scene
《夜が明け始めた時頃、とあるアパートの一室。》
「どうだ秀一、少しは好きになったか?」
「すまん英和……それは無理だ」
《昨晩は早く寝すぎた住居人が、珍しく二人とも目覚めていた。
今日もまた、新しい一日が始まる。》
「そんなっ……俺はこんなに好きなのに……!」
「待てっ! その言い方なんかやめろ! あらぬ誤解が生まれそうだ……これはあくまでタツオのこと、タツオのことを言っているんだぞ!」
「……当たり前じゃないか。っていうかどんな誤解だ? 前から思ってたんだが、お前って時々誰に向かって言ってんのかわっかんない時あるよなー」
《春はあけぼの、やうやうしろくなり行く山ぎはすこしあかりて。
今年も、穏やかな季節がやってきました。》
fin.