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scene15
Scene15
「おい聞いたか? あいつ結局武藤のところに戻ってきたんだってよ」
「は? 誰が?」
「俺たちの憐れな友人」
「……あぁ、笠木か。なんだ、とうとう諦めたのか」
「……いや、前から諦めてたと思うけどな……」
「今度はお前が情報を仕入れてきたのかー」
「あー、俺の妹と笠木の姉ちゃん、同じピアノ教室に通っててさ。仲いいんだ」
「なるほど」
《そこで一旦話を切り、原田と国崎は噛んでいたガムを紙に包んでゴミ箱に捨てた。》
「あっ、そういや俺また『ナニーユ・エニ』でお菓子買わないといけないんだよなー」
「またか。今度はなんだ?」
「マドレーヌ」
「そうか……今日はさすがにあるんじゃないか? まだ昼過ぎだし」
「そうだな」
《そして二人が店へと向かい、辿り着いて見たものは「休業日」の文字。》
「そういや、そうだった……」
「なるほど、まさに『なにゆえに』、だな」
「ほんとだな……俺、なんかしたか……?」
《虚しく、春の柔らかな風が二人を包みそびれてさっさと通り過ぎていった。》