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cool*sweet  作者: ましろ
4/5

第3話 いつもどおりの日常と変わった一部

けたたましい音を上げる目覚ましを叩き、時間を確認する

「いつもどおりだな…」

俺はまだベッドに張り付きたがる体を無理やりたたき起こす

カーテンをあけつつ立ち上がり着替えを済ませる

階下に降りてキッチンへ

バスケットの中に大量に入っている菓子パンを2つ掴み、カバンの中に押し込んだ

朝は全員用意する時間がないという理由で、家には大量のパンが常備されていた

教科書の大半を昨日学校に置いてきた俺のカバンには、それとペンケースなど最低限の物しか入っていなかった

そんな軽いカバンを肩に掛け、俺は家を出ることにした


(今日も…、やっぱり人はいねーな)

俺の通う学校は私立だからか知らないが妙に部活はしっかりしていr

大抵の部活に朝練があり、それに参加する奴もまた多い

まぁ、それでもあんまり成績がよくないのが哀しいところだろう

故に俺の朝の登校は一人が基本なんだが……

「ん…?」

「おや…」

俺は通りに出る曲がり角に誰かが立っている事に気がついた

どうやら、相手も同時に気がついたみたいで

「おはよう、青葉君」

唯子さんがそこには居た


突然の事に思わず無言になる俺に対し

「どうした?」

と問いかける

ようやく思考が現実に追いついた俺は

「え…あ、いや…。驚いたんだよ」

と返した

唯子さんは、何で、といった顔をしたが

「ああ、何も言わずにここに来たからか?」

「うん…、それに来栖川さんってこういう事、しそうじゃなかったから」

そう言うと、彼女は

「いや、私は彼女は彼氏を迎えに行くものだ、と友人から教わったからな

当たり前かと思っていた」

当たり前、なのだろうか

「俺もよく知らないけど、来てくれるのはうれしいかな

毎日一人で登校するのは暇だし」

そう返すと

「じゃあ、これからは暇じゃなくなるという事だな」

私は毎日でも来るぞ、そう言ってくれた


その後ようやく話したかった週末の食事会の事を話した

すると唯子さんからも全く同じ事を言われ、お互いに土日で訪問する事で決まった

しかし……

(こんなに早く親と会うなんて…)

予想外の展開に正直戸惑いは隠せなかった


後は、他愛もない話をして、学校に着いて二人して教室に入った

何か思われるかと思ったが、まさか唯子さんと俺がそんな関係とは

誰も思われなかったみたいだ

特に変な視線も送られず俺たちは着席した

蓮はいつも通りチャイムぎりぎりに飛び込み

ちなみに奴は俺の3つ前

HRが始まり、今日もテンションが高い新任(蓮の予想通り女性)が

「今日から授業だ気合いれてこー、私も初めてだけど!」

とよくわからない激励を送り、その初めての授業は

1時間目に俺たちになのに、去って行ったりして。

そんなこんなで

まぁまぁ普通な午前が終わった


昼休み、飯時だ

俺にとって現在唯一のクラス内の友人である蓮は

いつの間にかどこかへ消え去ったようだ

多分購買だろう

俺は隣の来栖川さんを見た

(いつもは昼をどう過ごすんだろう……)

俺はそこまでまだ知らない

大抵の生徒は教室で友人同士固まって食べるんだろうが……

唯子さん、クラスに友達いるのかな……

近寄りがたいオーラが出ている唯子さんには近づく人が少ないような……

「青葉君」

「ん?」

ちょうど唯子さんが声をかけてきた

「もし昼に誰かと過ごす予定がなければ、ちょっと付き合わないか?」

「あ、ああ…。構わないよ」

そう言うと、彼女は小さなカバンを持って俺を促し、教室から出た


「どこにいくんだ?」

「友達の所だ」

「友達…」

なるほど…、クラス内に友人がいなくても外にはいるんだな

「唯子さん」

「なんだ?」

「クラスに友達、いないの?」

そんなことはない、と返し

「分かりやすく言うと、友達の友達は他人ということだ。

それに、弁当はここで食べると決めているんだ」

いつの間にか、校舎の隅に来ていた


「ここは……」

「図書室だ」

そして、と唯子さんは言い

「しかし、中は飲食禁止、つまり…」

そう言うと、彼女はポケットからビニールシートを取り出し廊下に敷いた

「変わってるね…」

思わず言ってしまった

「確かにな

ここに来るのはクラス内に昼を過ごす人がいない人

ただ、勘違いしないでほしい

別にみんなが孤独だと言う訳じゃない

友人はみんなちゃんといる、ようするに

去年にクラス運がなかっただけ。

そして、他のクラスの友人の友人は他人だったんだよ」

来栖川さんはそう言って苦笑した

「一人は、今日も来るってメールがあったんだが…」

そう言って携帯を取り出す

…後でメアド聞いておこう


そして図ったかのように、どこからか足音が聞こえた

そして

「唯子ー!」

と声が聞こえた

その声の方を見ると小さな女の子が走っていた

一見すると下級生だが…

彼女はこちらに走ってくると、肩を上下させつつ

「さぁ、今日も楽しいお昼ご飯だ…、ってあれ?」

と俺を見る

「二人とも、…紹介しよう」

来栖川さんがそう言い、小さな子を示して

「彼女は榊原杏子。

私の中学時代からの同級生、それで…」

同級生!?同じ年なのか…

俺は衝撃を受けたが紹介は続き、今度は俺を示して

「杏子、この人は青葉悠。私の恋人」


そう言うと、杏子は目を光らせ

「おー、この人が唯子の彼氏さんですかぁ…。へぇー」

全身をじーっと見つめられ、若干引き気味になる俺に

「さえないですね」

「ほっとけ」

いきなり失礼な奴だな

「杏子、私の彼氏にさえないは失礼」

「あ、そうでした!」

そういうと、

「よろしくです、青葉君」

と手を差し出す

「ああ、よろしく」

握手とは変わってるな、と思ったが

俺はその手を握りかえした


「これで全員なのか?」

俺がそう聞くと

「まだ…、一人来てない、ただ来るって連絡がなかったから…」

「まぁあれはほっておいて、食べててもいい気がするけどー」

杏子がそう言い、来栖川さんも同意したため、食べ始める事にした

昨日の事を杏子から根掘り葉掘り聞かれ

相変わらず普通に答える唯子さんと

それを聞き恥ずかしさで悶える俺の姿があった

(なんで発言を一字一句覚えているんだ…)


精神的に限界が訪れかけたその時、また足音が聞こえた

そして

「うーっす、お二人さん。

いやー、購買が混んでてさー。

しかも、教室で友達と食べようと思ったらどっか消えてて、って!

何で悠がここにいるんだよ!?」

俺が振り返るとそこには、蓮が購買の袋を手に立っていた


「その問い、そのまま返すわ」

パン食いながら俺がそう言うと

「俺は前からここで飯食ってたけど…」

「え、何、お前、友達いねーの?」

「ちげーよ!?お前、友達じゃねーのか!?」

と、ここで杏子が口を挟み

「蓮は私が誘ったんだよー」

と言った

「そ、そうだよ、去年のクラスがどうにも俺には合わなくて、同じ部活の杏子に愚痴ってたら、じゃあ来ればって…」

なるほど


「まぁ座れよ」

「あ、ああ…」

とりあえず座らせて、

「お前さ、昨日の朝クラスに入った時に唯子さんの事をまるで噂でしか聞いたことないですみたいな反応したよな」

「ああ、そうだな」

「あれは演技か?」

俺がそういうと、蓮は購買の包みをはがしつつ

「そうだな」

しれっとそう言った

「何でそんな事したんだよ!?」

思わず俺はつっこんでしまった


「いや、だってよ…

来栖川が前々からこんな変人を想っている事は聞いてた

お前が来栖川を好きだってーのも勘だったが想像はついた

なら、俺はあそこでどちらに対しても深く関わらないでおくのが一番かなーと」

と答える蓮に

「別に、そんなに気を使わなくてもよかったんだが」

と来栖川さんが言った


「まぁ、来栖川はそう言うが例えば『来栖川さんはかっこいいな』

とか言ってた奴の目の前で俺が陽気に話しかけたらイメージが瓦解するだろ」

言っていた奴とは無論、俺の事だ

「で、悠がいるって事はそういう事か」

「……そういう事だな」

来栖川さんは静かに答えた


「そうかー。おめでとうさん。ま、悠はつまんねー奴だけど多目に見てやってくれ」

「つまらなくはないぞ、なかなか優しいしな……」

来栖川さんがそう言い蓮はジト目で俺を見据える

「ったく、いきなり彼女もちになりやがってよー」

そう言うとすかさず

「こんな事言ってるけど、里見君も助けてくれた」

「そうそう!

『悠はああ見えて押しに弱いからガンガン詰め寄ればすぐだ』

とか言ってアドバイスしてました!」

と二人が言った

「おいっ!榊原、やめろ!?」

焦って止めるがもう遅い

「なあ、蓮…」

「なんだー?」

「とりあえず、色々あったみたいでありがとうな」


俺がそう言った途端に顔を逸らし

「いいってこった…、

…俺も彼女ほしい…」

「紹介しましょうか!」

「うっせー!お前の紹介はいらん!」

こんな感じで…、少し変わった場所での、騒がしい昼は過ぎていったのだった

とりあえず、学校は問題ないみたいだけど、休日を考えると不安でいっぱいだった…

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