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cool*sweet  作者: ましろ
3/5

第2話 それぞれの時間

青葉君と別れて十分後くらい

私は家に帰り着いていた

「ただいま」

私が玄関のドアを開けると、奥から騒がしい音を立てながらお母さんが飛び出して来た

「おかえりー、唯ちゃん」

来栖川天音、それが私のお母さんの名前だ

外見は私より少し小さく、童顔で、声もどこかそんな感じで、なんでも大げさで

だけど、一緒にいるとどこか落ち着く

それがこの人の仕事にとって天賦の才なのだ、と前に家に来ていた同僚の人が言っていた

私にとってもとてもいいお母さんではあるのだが

自分の親に対して言うのもどうかと思うが、この人は若すぎる

「どーだった?新しいクラスはー?」

「特に…、普通だな」

クラスに関しては特に何もなかった

全体で言えば、担任が異様に騒がしかったことくらいだろう

あれじゃ、行事のたびにすごいことになりそうだ

「そーなんだぁ、特に悪くなくてよかったねー。ところでー」

「何?」

「いつも無表情な唯ちゃんがそんなにニコニコしてるのはなんで?」

「……?」

私はその時初めて自分が笑みを浮かべていた事に気が付いた

「何か良いことがあったんでしょー、それもとびきり良いことが!」


「うん…、まあ」

そう言うと、お母さんは目をキラキラさせて

「聞きたいなー、もうすぐご飯ができるから、その時に聞くよ!

早く着替えて降りて来てねー」

そう言うとお母さんはドタバタと奥に引っ込んでしまった

私は部屋に繋がる階段を上がりながら

(私が、彼氏が出来たって言ったらどんな顔するんだろ…。

喜ぶかな、怒るなんてことはないと思う……けど)


同時刻、青葉家

「ただいまー」

どうせ返事が無いことは知っているが帰宅の挨拶をしておいた

昔、ただいまというだけで家に人がいると思い泥棒が狙わなくなるとかなんとか

聞いた気がする、別に関係ないけど

昔からの習慣なのだから仕方ない

やはり、返事がないということは、二人の姉はまだ帰宅していないらしい

(夕飯、作るか)

帰宅が俺より遅い場合、姉が料理していたら夕飯はかなり遅くなる

親が二人とも出払っている我が家の夕食作りは多くの場合俺の役割となるのだ

カバンを放り投げ、制服を脱ぐ。

(今日は…焼きうどんにしよう)

メニューを決めて調理に取りかかった


時計の針が8時をさした少し後

ちょうど用意が終わった時、玄関から声が聞こえた

「「ただいまー」」

すぐに居間の扉が開き

「お、ちょっと夕飯ができたようだな」

と言う、長身で眼鏡をかけた

いかにも堅そうなイメージの姉その1、名前は梨花

「んー、お腹すいてたのー。悠ちゃんナイスタイミング!」

親指を立てながら、

続けたのは俺より小さい天真爛漫という言葉がぴったりの姉その2、名前は桃花

ちなみに二卵生の双子だ


「いただきます」

三人で食卓を囲む

最初に口を開いたのは梨花姉だった

「どうだった、始業式は?」

「いや、別に…悪くなかったけど」

俺は今日あった衝撃的な出来事を悟られないように冷静に答えたつもりだったが

「ふむ…」

梨花姉は俺をじっと見据える

「悠、お前何か隠しているな」

「えっ……、隠してなんか!?」

俺がそう言うが

「悠ちゃん、顔がうそ付いてる顔だよー?」

「!?」

ジト目の桃花姉がそう言った

「大体、悠は緊張するとまばたきが増え、目が明後日のほうを向く癖があるからすぐにわかる」

と静かに言った


(やっぱ無理か)

俺は今更痛感した

相手が悪かったのだ

この二人、外見も中身も正反対だがやっていることは同じ、心療内科の医師。

メンタルケアを専門にし、毎日人の様子から変調を感じたり内面を見ているのだから…、そんな相手に故意に隠すなんて無理な話だ

「実は…」


「実は…、私彼氏ができた」

夕食の席、私の突然の告白にお母さんは一瞬驚いた様子を見せたけど

「よかったねー、唯ちゃんにも春が来たんだー」

と喜んでくれた

「まるで私の今までが氷河期みたいに言うんだ……」

しかし、お母さんは私のツッコみを鮮やかにスルーし

「相手は、どんな人なの?」

と聞いてくる

「うーん…、私も気が付いたら好きだったから、まだよくわからない、けど…いい人だ、優しい人」

お母さんは、私が言葉を切るたびにうんうんと首を振り

「そっかー、唯ちゃんがそう言うなら本当だね。唯ちゃん、人を見る目は厳しいもの」


「そ、そうか?」

「うん、激辛だよー」

そうだったのか……、気をつけないと

「ところで、どう?その子、今週末にうちに連れてこない?」

お母さんはカレンダーに丸をつけながらそう言う

「いきなり招待って……、驚くぞ」

「だってー早く見たいんだもん」

見たいんだもんって…、私も母親になればその気持ちもわかるのかな…

「わかった、聞いてみるけど……」

急だけど、大丈夫かな…


「よろしくね!……お父さんにも報告しなくちゃね!」

ああ、そうだった……

「喜んでくれるか……?」

お父さんは、きっと反対しそうな気がした

私がそう言うと

「大丈夫、お父さんはああ見えて唯ちゃんの事大好きだったから

絶対祝福してくれるよ!」

「うん、じゃあ後で言ってくる」

その後は、いつも通りの時間が続いた


「俺、彼女が出来たんだ」

俺がそう告げると姉さんたちは、

「悠…、幻覚でも見たか?」

「悠ちゃん、後でゆっくりお話しましょう」

2人して哀れむような目をしながら言った

「幻覚じゃねーってーの!告白されたんだよ!」

俺がそう言い返すと

「告白されただと…信じられん」

梨花姉はこの世の終わりを見たような顔をしていた

「でも、見てみたいなー悠ちゃんの彼女さん」

と桃花姉が言った

「確かにな。桃花、いつなら休みだ?」

「私は…、日曜日なら休みだよ」

「私も日曜日は休みだ。よし…」

そう言うと梨花姉は俺に

「日曜日、つれてこい、彼女を」

有無を言わせない口調でそう言った

「はぁ?」

「夕食会だ、早めに交流を持った方がいいしな」

「でも、相手の都合が…」

隣でうなづいている桃花姉もなんか言ったらどうなんだ。

しかし、梨花姉は

「とりあえず月曜日予定で聞いてこい、無理なら日にちを確定させろ。有給を使う」

とまくしたてた


「わ、わかったよ」

俺は迫力に押されOKしてしまった

「楽しみー。梨花ちゃん、日曜日は買い物に行って頑張って料理しよーね!」

「料理は任せた、私は苦手だからな」

などと、月曜日について語り出した姉を前に俺のテンションはがんがん急降下していくのだった

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