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第4章:ギルド、そしてクレーム再び

「おはようございます、話術師の咲良さんですね!初出勤、お待ちしておりました!」


朝のギルド受付カウンター。


担当は、例の新人職員カーティス。

笑顔は明るいが、目が完全に寝不足。


「……寝てない?」

「いえ!寝不足ですッ!」

「『いえ』なのに『です』で肯定、それ完全にテンパってますよ。」


咲良が配属されたのは「対外調整係」


―― 冒険者・市民・王族など、あらゆるトラブルの“初期対応窓口”だった。


「オペレーター業務……続行してますね私」


ギルドでは噂になっていた。


> “話すだけでモンスターを手懐けた女がいる”


> “依頼より早く納得させて、逆に感謝状もらったらしい”


その日も、咲良の元にひとつの案件が舞い込む。


> 案件No.0471 クレーム分類【過剰反復型】


> 内容:「依頼報酬が少ない/説明が不十分だった/俺はもっと評価されるべき」


> 来訪者:冒険者 ランディ=スロッグ(通称:ランスロ)


「来た……カスハラ、異世界版……」


案の定、ランディはギルドの床に寝そべり、大声で叫んでいた。


「俺は伝説級の実力があるってのに!報酬が安すぎる!! 説明が足りん!それに対応も冷たい!おまけに昨日の夕飯が――」


「お客様、今のご発言を“1件ずつ”整理して伺ってもよろしいでしょうか?」


その瞬間、咲良の声が会議室全体に魔法として放たれる。


> 《整理話法》+《クレーム要素分離術》が自動発動


> ランディの口から次々と出る不満が、項目ごとに“スライド表示”される魔法演出


「な、なんだこれ!? オレの文句が視覚化されてる!?」


「はい、次は“説明不足”という点について、“どの文脈で感じられたか”をお聞かせください」


ランディは最初こそ反発していたが、気がつけば、咲良が進める“ヒアリングの流れ”に自然と乗せられていた。


「えーと……だから、その依頼、最初に“危険ランクがC”って言ったじゃん?でも途中でゴブリンじゃなくて、ウルフが――」


> 《ヒアリング共振》発動中:


> 会話のペースが“相談者”の心理状態に同期される


「なるほど。では“実際の内容と事前説明の乖離”が問題だったのですね」


> 《要点要約》:


> 不満感情 → 論点変換 → 解決フロー提示


対応終了、所要時間:16分52秒


「……な、なんかスッキリした。すげーちゃんと聞いてくれて……え?オレ、泣いてる!?」


「ご利用ありがとうございました。またのご連絡をお待ちしておりません!」


カーティスが拍手する。


「咲良さんって、本当に……人を“言葉で納得させる”んですね」


咲良は笑った。


「“話すこと”って、魔法だよ。異世界でも、現実でもね」


そして今日もまた、咲良の言葉が、誰かの感情を救っていく――。

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