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第3章:初めての顧客(ゴブリン)対応

「……この森、ぜったい罠」


咲良は腰に結んだ即席の“魔導スピーカーストーン”をポンポンと叩きながら、鬱蒼とした林の中を進んでいた。


ギルドで登録したばかりの話術師の依頼―― 内容はこうだ。


> 【低ランク依頼】


> 近隣の村の畑を荒らすゴブリンたちと交渉可能か調査せよ。


> 武力は禁止。話し合い希望。


「異世界に来てまで“カスタマー対応の現地調査”みたいな仕事振られるって何?」


さっそく目の前に現れたのは、3体のゴブリン。


革の装束を着て、片手に棍棒、目をぎらつかせている。


「クク……よそ者。だが女……食料になる?」


「ではまず、“何をご希望か”を明確にしていただいてよろしいでしょうか?」


咲良の声が森に響き、魔法陣のような音波が広がる。


> 《第一声魔法》+《共感誘導》を自動発動


> 敵意レベル:85% → 50% に減少


「な、なんだ今の声……いや、ちょっと……落ち着く……?」


ゴブリンたちが不意に戸惑いはじめる。


咲良はすかさず畳みかけた。


「このあたりの畑を荒らす理由、まずは“あなたたちの立場”から教えていただけますか?」


> 《傾聴フィールド(ヒア・ゾーン)》展開


> 周囲の音が消え、相手の“本音”が伝わる空間に突入


「お、俺たち、村を追われたんだよ!前の族長が人間に喧嘩売って、居場所なくして……でも食料、ない……!」


咲良はゆっくり頷く。


「つまり、“敵意”ではなく、“飢え”が問題……ですね」


咲良はすぐさま“謝罪モード”へ移行(顔は真顔)。


「これまでの人間側の対応で、不安なお気持ちにさせてしまったこと、申し訳ありませんでした」


> 《謝罪波動:深低音》発動


> 伝えた“ごめんなさい”が、相手の怒りの核に作用


「うっ……なんか、泣きたくなってきた……」


交渉は30分続いた。


最終的に彼らの食料支援と畑の立ち入りルールを取り決め、咲良は小さな契約書を結ぶ。


「はい、“村との菜園利用協定書”ですね。署名、印……親指でOKです」


ゴブリンたちが感涙にむせびながら押印して去っていったあと――


「……あの人間、なんかこえぇけど、好きかも」


ギルドに戻った咲良は、受付のカーティスに報告書を提出。


「……って、話し合いで!?しかも合意書付き!?な、何者ですか咲良さん……」


「たぶん、異世界版“カスタマー窓口マネージャー”じゃないかな」


こうして、“初依頼でモンスターと契約を結んだ話術師”として、咲良の名は少しずつ広がり始める。


誰も知らなかった、“交渉だけで戦わない冒険者”の物語が、ここから動き出す。

カーティス・ウィンザード

年齢:24歳|職業:ギルド窓口の新人職員|言い返せない系男子


咲良が初めて出会った“善良なのにメンタル弱め”なギルド職員。


顧客(=冒険者)の理不尽な要求に怯えつつも、咲良の姿に憧れを抱く。


彼女の「YESセット魔法」や「テンプレ話法詠唱」に毎回うっかり感心してしまうポンコツかわいい担当。


将来的に“共感魔法”の才能が覚醒するとか、しないとか…。

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