表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/27

【第8話】マモーレスの境い目

“Custos liminis, manus invisibiles,

circumdant somnum sacrum,

Mamores, stat vigil in tenebris.”

(門を守る者よ、見えざる手よ、

 聖き眠りを囲み守れ、

 マモーレスよ、闇にて見張れし者。)



シーツァの白き秩序が広がったとき、

眠りの場は整えられ、

夢は深く、静寂は満ちていた。

だが、その完全な眠りの外には、

まだ不穏なる「外界」が横たわっていた。


そこに――境を引く者が現れる。

名はマモーレス。


彼は守りの神。

フトンヌのふちに立ち、

眠る者と世界とのあいだに、

柔らかき防壁を築く存在。


「眠りは世界を断つこと。

 境なくして、安らぎなし。」


マモーレスの腕は長く、

しかし誰の目にも映らぬ。

その腕は眠る者の四方を囲い、

音も、光も、振動も――

すべてを遠ざけていく。


彼の作る境い目は、

絶対の静寂でもなければ、完全な遮断でもない。

あくまで“守る”という一点に集約された、

微睡みのための境界線。


それは柔らかく、けれど確かで、

母の手のようでもあり、

結界のようでもあった。


マモーレスが布く守りの力により、

フトンヌの世界はついに、

“外界”から完全に隔てられた。


こうして初めて、

眠りは誰にも侵されぬものとなった。


それはすなわち、

フトンヌが“神々の国”として閉じられた瞬間であり、

完全なる内界の誕生でもあった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ