表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

【第7話】シーツァの白き広がり

“Candor primigenius, velum munditiae,

extende pacem super stratum,

Sheetza, dea silentis ordinis.”

(原初の白よ、清き帳よ、

 床に平穏を広げたまえ、

 シーツァよ、静けき秩序の女神。)



モーフォンが夢を紡ぎ終えたあと、

フトンヌの上には、形なき残滓が舞っていた。

それは甘い幻の名残。

目覚めれば消えゆく、けれど確かにそこにあったもの。


その余韻の上を、すっと一枚の布がなぞった。

まるで風のように、しかし何よりも整然と。


現れたのは――シーツァ。


彼女は秩序の神。

乱れたものを正し、絡まったものをほどき、

眠りの舞台を整える清き手。


「眠りには、静けさがいる。

 静けさには、均しき広がりがいる。」


シーツァの生地は白く、やわらかく、

しかしその端には一本の律が通っていた。

乱れを嫌い、歪みを整え、

布の一折りにさえ意味を見出す者。


彼女が現れたとき、フトンヌの上は一変した。

マクラミの位置は微調整され、

タオルヌとケットミの重なりは滑らかに、

ネブクロムの袋も静かに整えられた。


すべてが整った瞬間、

夢の痕跡すら、まるで最初からそこになかったかのように、

シーツァの下に静かに溶けていく。


彼女は白であり、始まりの幕であり、終わりの帳。

眠りに入る者にとっては道しるべであり、

眠りから覚める者にとっては静かなる結界。


こうしてフトンヌの世界には、

「整え」という役目が刻まれた。

それは目立たず、されど失われればすべてが乱れる――

不可欠なる、白の神の誕生だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ