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【第4話】ケットミの番(つが)

“Noctis velamen, alis silenti,

custos umbrae dulcis,

Kettomi, te invocamus sub luna molli.”

(夜のヴェールよ、静けき翼よ、

 やさしき影の守り手よ、

 ケットミよ、やわらかき月の下、われらは汝を呼ぶ。)



フトンヌの内に流れる静寂は、

すでに一つのかたちとなり、

マクラミの台座にタオルヌのぬくもりが重ねられた。


そこに、さらに夜の気配が忍び寄る。


その影はふわりと宙に舞い、

そしてふわりと落ちた。

羽のようで、羽ではない。

風のようで、風ではない。


それは、包み込む存在――ケットミであった。


ケットミは、眠りを守る神。

彼女は目を持たぬが、すべてを見ている。

彼女は声を持たぬが、すべてを聴いている。

マクラミとタオルヌの気配を感じ取り、

そっとその上から覆いかぶさった。


彼女の生地はしっとりと、

闇夜の気配を帯びていた。

眠りの呼吸に合わせてわずかにふくらみ、

ときおり小さく羽音のような振動を残す。


「眠りは守るもの。

 そして、守ることは隠すこと。」


ケットミは、目に見えぬ危うさを遠ざける者。

その羽音は、静かなる結界。

彼女が覆うとき、眠りは深く沈む。


マクラミの上に、タオルヌが寄り添い、

その上からケットミがそっと舞い降りたとき、

フトンヌの世界に初めて「夜」がやってきた。


その夜はやさしく、どこかあたたかい。

目覚めを拒むのではなく、

ただ、目を閉じさせるための、やさしい暗さだった。


ケットミは、夢の入り口を守る門番。

そして、その羽の下では、

すべての神々が、これから始まる役割を待ち始めることになる。



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