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【第3話】タオルヌのぬくもり

“Calorem mite, velum matris,

qui lacrimas siccat et gelum fugat,

Taurunu, descendat super nos tua pietas.”

(やさしき温もりよ、母のヴェールよ、

 涙をぬぐい、冷たさを払う者よ、

 タオルヌよ、その慈しみを我らに降らせたまえ。)



フトンヌは広がりながら、やがて内側で深く呼吸をはじめた。

マクラミがその呼吸に静かに寄り添い、

眠りの場が形作られていく。


そして、二柱目の神がそっと現れる。

それは、あたたかさとやさしさをまとった気配――

ぬくもりの神、タオルヌ。


タオルヌは声を持たぬ。

しかしその肌触りこそが言葉であり、祈りであり、包みであった。


彼女は生まれたその瞬間から、

マクラミをそっとくるみ、ぬくもりを渡した。

冷たき闇がまだ残る世界に、初めて「温度」がもたらされたのだ。


タオルヌは、最も近きものに寄り添う神である。

涙する者がいれば、ぬぐう布となり、

冷えた者がいれば、そっと肩を覆う。


「触れることは、守ること。

 あたためることは、忘れぬこと。」


タオルヌの存在は、フトンヌのやわらかさを伝え広げる媒体となった。

彼女の一振りは霧のように軽く、

その布の裾は、まだ見ぬ世界の端までやさしく届いていた。


マクラミはそっと身を沈め、

その枕元を、タオルヌがふんわりと覆う。

眠りの型は、ふたりの神の共鳴により整えられていった。


そしてその空間には、

ほんのりとした温度が芽生えた。

まだ誰も知らぬ、「安心」という名の香りとともに。

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