47 びゅんといってひゅうん。え?つまりどういうことですか?
「あ、そろそろ山が見えてきましたね。」
先ほどは遠くに見えていた山々がだんだんと近づいてきている。
たしか行きはあの山ドラゴンで超えたんだよね。
あまりにも断崖絶壁過ぎて。
「そうじゃの。そろそろ登り始めるころ…。」
☆☆☆
「あっみてください天使様、すごくいい景色ですよ。」
おっと、いけない記憶をどこかにすっ飛ばしてしまったようだ。
確かに眼下に見える景色は爽快。
だいぶ上まで上がって来たみたいだ。
記憶ないけど…。
「あ、あれこないだの温泉くま。」
くまたんが上からいつぞやの温泉を見つけた。
「ドラゴン混浴のですね…。」
相変わらずでかい温泉にでかいドラゴンが鎮座ましている。
「ああ、アレは竜骨温泉。この辺の竜たちの憩いの場じゃ。どんな傷も治ると評判じゃぞ。」
「あれ勇者たちくま?」
くまたんに言われてみると遠くに長い馬車や鎧を着た人たちの隊列が森に入っていく。
くまたんの言う通り、先に出発した勇者一行だろう。
「ゴマ粒みたいな大きさだね。」
ごま粒みたいな大きさだから、顔の判別はできないけど…。
なんだか空から見るとアリの行列みたい。
馬車も混じった隊列はとても長い。
次に会う日はいつだろうか。
「もう、追い抜いてしまいましたね。」
大変騒がしい一行と…。
「当たり前じゃ。我が国の竜車は最速なのじゃ。行けないのは水の中くらいじゃの?」
「あれってもしかしてうちの城?。」
遠くに見える白亜の城を見つめる私。
「その向こうにもなんか城みたいな屋根が見えるけど。」
「ああ、アレは人間領にあるお城ですね。それこそ、勇者たちの住む国のですね。」
「へー。意外と近いんだね。」
「まあ、今は山を隔ててるだけですから。昔は仕掛けとか魔物とかいたでしょうけど…。距離的にはそんなに遠くないですよ。」
人間領…そういえばあるんだよね。勇者たちが来たところ。
はたして訪れることはあるのだろうか。
まあ、遅かれ早かれ行きそうな気はしてるんだけど…。
面倒ごとに巻き込まれなければそれでいいんだけどね。
「人間領の食べ物食べてみたいくま。」
隣でヨダレを垂らしているくまたん。
「あんまり食べると太るよ?」
「くま⁉」
☆☆☆
「おお、ホワイトドラゴンか珍しい?」
弟子の声に振り向くとこれまたなつかしのいつぞやの白い竜。
この子の背中に乗って、温泉に行って国境超えたんだよね。
「ホワイトドラゴンはとても珍しいのじゃ。いるにはいるのじゃがだんだん、鱗に汚れが蓄積して色ついて普通のドラゴンと見分けがつかなくなるのじゃ。じゃから白いタイプはすごく珍しいのじゃ。確か国境沿いに警備として一匹おったが…。いや、あいつは赤っぽかったかの?」
「あれ?つまりは…。私はドラゴンに固着した表面の汚れを洗い落としたということ?」
「てっきりあれは天使様の魔法の効果で白くなってると思いましたが…。」
「ただの頑固な汚れだったくま?」
「もしかして、きれいにしてくれたから背中乗せてくれたのかな?」
再びホワイトドラゴンに目をやる私。
「ぐがあああ?」
「多分あれじゃの、城まで送ってくって言ってるの。」
「がぁ。」
「え?わかるの?」
「そりゃ、同じ竜じゃからな。」
「おっと。」
「あれ?なんかな、な、な、斜めになってない?この竜車?」
その白いドラゴンを見ていると平衡に飛んでいるはずなのになぜか視界が斜めになり始めた。
「ああ、もう頂上じゃから、そろそろ下るーのっ。しっかりつかまるのじゃー。」
弟子の忠告通り、絶叫マシンよろしく一気に下っていく竜車。
一気に斜めに傾く車内。
私はとりあえずその辺の手すりをつかむ。
車内を飛び交う小物。
「わああああああ。」
「くま⁉なかみとびでちゃうくまー。」
衝撃で飛びそうになる中身を必死に抑えるくまたん。
私たちも当然座面に押し付けられる。
「もうちょっと、平穏に進めないの?」
飛んできた竜王の私物のぬいぐるみを持ちながら、竜王に話しかける私。
「ナイスキャッチなのじゃ。」
「安全運転とかないの?」
あとついでにシートベルト。
「最近、竜たちの間では急降下、急上昇、する危険な遊びが流行ってるのじゃ。なので好奇心は誰にも止められないのじゃ。たまにケガする者もおるけど竜族は丈夫なので問題ないのじゃ。」
「私たちその竜族じゃないんだけど‼」
「それもそうじゃの?とにかく皆のモノしっかりつかまるのじゃ。」
「ねえこれいつまで続くんです…すか?」
リリアが竜王に問いかける。
「地面につくまでじゃな。」
愚問だった。
「くうくうっくくくくまぁっー。」
あっ。くまたんが吹き飛ばされてうしろに積んである竜王の荷物に埋もれました。
というか弟子荷物多すぎなのでは?
そして私もあっ、そろそろ限界です。
次起きるときはマイホームについていることを信じて無事気絶する私なのだった。
☆☆☆
ちゃんと後で発掘してあげました。
「死ぬかと思ったくま。」




