45 隣の国の最強ドラゴンさんが、いつのまにか、私物を車に詰め込んで、ついてくる気満々なんですけど、どうしたものでしょうか。
お城でのお茶会。
「ねぇねぇ姉さま。あーんしてくださいまし。」
「ほら、あーんですよ。あーん。」
「お口開けてくださいまし。」
ケーキをフォークで掬うと私に勧めてくる弟子。
これ、めっちゃ反応に困るやつだよ。
「あーっそっぽ向かないでくれまし。」
「私そういうの勘弁だから。」
「えー。お口開けてくださいまし。」
「お口をだんだん閉じてきてくださいまし。」
「イーっってしてくださいまし。」
「…。」
「歯医者か何かなの?」
「え?姉さま虫歯ないんですの?。」
「歯の異物を取り除くのも、立派な弟子の仕事ですのよ?」
「え?ホンソメワケベラ?」
「え?乾燥ワカメスープ?」
というかたぶんその変な風習巨体なドラゴン族ならではのやつだよ。
たぶん。
☆☆☆
ダメだすっかり懐かれてしまった…。
廊下で。
お庭で。
お外で。
寝室で。
「姉さま、遊んでくれまし。」
「姉さま何してますの?」
「姉さま?」
「姉さま眠れないのです?」
四六時中私の周りから離れない。
「まおーさま帰るくまよー。」
国へ帰るときも。
「天使様帰りますよ。」
馬車?いや竜車の前で止まる私。
だって…。
「え?あなたもいくの?」
私の隣でせっせっと荷物を詰め込む竜のツノを生やした女の子。
「え?だって私、姉さまの弟子ですから。当然です。それに我の手配した竜車なので。あとこれとこれも…積んで…。」
さも、当然じゃないですかといった風で大きな荷物を馬車いや、竜車に軽々と積んでいく。
「あっ、あと、あれもですね。」
なんかすごいでかい可愛い感じのぬいぐるみをせせっと詰め込む私の弟子。
「ああ、これですか?これは私のプライベートな荷物なのです。」
いや、そんなことはわかってるよ。
にしても、めちゃくちゃでかい包や王族の座りそうな椅子を運び込むさまはとても…。
なんというか。
見かけによらず、力持ち‼
ってそういうことじゃなくて。
「え?でもこの国は?国はどうするの?」
王がいなくなれば困るのはその国で、混乱が生まれることは間違いない。
私は別についてきてくれてかまわないけれど、その間、この国で混乱が生じては困る。
だって隣国だし。
混乱から、対外戦争にだってなることもあるわけだし。
戦争でも起こされたらたまったもんじゃない。
何より私のスローライフから遠ざかってしまう。
それにトラブルが起きてもすぐには来れない。
ぶっちゃけ遠いし。
魑魅魍魎の巣食う森を超え、混浴の山とマグマ、ワイバーンのいる谷、超えなきゃいけないし。
「そこはふふん。優秀な部下のフルミネに丸投げなのじゃ。」
「え?」
突然声をかけられて困惑気味のフルミネさん。
私ですかといった感じの表情。
一瞬、後ろを振り向き確認するそぶりを見せ、そして誰もいないのを確認して自分自身に指をさす。
「私ですか?」
「そうじゃ。」
「いや、というかほかにおらぬじゃろ。おぬしの後ろ。」
近衛的なポジションのヒトいや、竜みたいだけど。
「今日から竜王代理を命ずるのじゃ。頼まれてくれるな?」
「へ?あっはい。」
困惑気味に竜王の手を取り、答えるフルミネさん。
「はっ。内政に関してはお任せを。これでも歴代の竜王様をサポートしてきたプロですから。」
「何かあれば、我に伝えるのじゃぞ。」
「糸電話でですか?」
「いやそれじゃ近距離でしか通用せんのじゃが…。」
「では、魔法か、お手紙かでお伝えするようにしますね。」
「任せるのじゃ。」
「というわけで、行きましょう姉さま。わたくしがエスコートして差し上げますわ。」
「ちょっと。手引っ張らないで…。」
竜王が私の手を引っ張り馬車いや、竜車へと迎い入れる。
そしてこの人…。いやこの竜。
「握力強い…。握力強いからー。」
握力、馬鹿みたいに強い…。
私の手が真っ赤に晴れちゃうぐらい。
その握力はゴリラ並みか。
いや、ゴリラに手握られたことなんてもちろんないわけだけど。
ふふーッと息を吹きかけ熱を冷ます。
「つい握りしめてしまいましたの?許してくださいまし?」
「痛いの痛いの飛んでいけーですわ。」
そしてガチャンと閉まる竜車の扉。
残るもの、去るもの。
馬車いや竜車の窓から乗り出し手を振る竜王。
「達者でな―。」
それを涙ながらにハンカチで見送るフルミネさん、兵士たち。
「竜王様こそ…。」
「毎日ちゃんと歯を磨いて、寝る前には必ずトイレに行くのですよ。」
「…。」
「いや、我子供じゃないんだけど?」
城の兵士たちが小さく見えなくなるまで、窓を開け手を振る竜王。
やがてそれも見えなくなり、窓を閉め、車内へと戻る。
ドラゴニアでの長い旅に別れを告げ、帰路につく私たちなのだった。
かつての荒涼とした大地、今は緑あふれる高原を揺れる馬車いや、竜車に乗って突き進む。
風がなぎ、草が揺れる。
草の間から顔をのぞかせる小さなトカゲ。
緑豊かな大地をただひたすらにあの謎の温泉のある山の方へと走り続けるのだった。
☆☆☆
「そう言えばなんだけど…。あのすごい高い山とかどうやって上るの?」
「やだな。姉さま飛ぶに決まってるじゃないですか。竜なんですから。そもそも、我の城、出た時、飛んでましたよ。だって川あるので。水面すれすれで飛んでたから気づかなかったかも知れませんが。」
「え?じゃあ山のぼるときは?」
「びゅんといってひゅうんです。つまり急上昇、急降下です。」
「なにそれジェットコースターか何か?」
☆☆☆
竜車…馬車と違い竜なので飛行が可能。乗り心地はいいのか悪いのか。車内が宇宙空間にならないことを願うばかりである。
☆お知らせ☆
2025/10/26改稿しました。前半の竜王とのリリィとのやり取り、全体的に文章量をましましにしました。




