43 知らない天丼、いや、知ってる天丼。上天丼。
私が目を覚ますとそこは知らない天井。ううん。知ってる天井。
これ、うちの城だ。
木材と石が組み合わされたつくり。
城のあちこちに置かれている初代の竜王様のモノか、ひぃおじい様のものかよくわからない竜の像もある。
この像は果たしてどっちのモノなのだろうか。
確かその話をフルミネから聞いて…。
最終兵器で侵入者と戦って…。
そうか、我はあの侵入者たちにやられて。
最終兵器の溶け落ちた残骸にまきこまれて。
そのあとは…。
で?なんか変な夢も見た気がする。
追いかけられる系?だったような。
なんかめちゃ悪い、悪夢?だった気がするけど。
こう、なんというか紫色のふにゅあふにゃした空間で…。
あ、ダメだ。思い出そうとすると頭が痛い。
どこかで頭でもぶつけたのだろうか。
戦車に乗り移るとき?
そういえば他の兵たちは?
フルミネは?
あの、溶け落ちた残骸に巻き込まれた後、彼らはどうしたのだろう。
「あやつらは?あやつらはどこじゃ?」
いつもの見慣れたわが城。
石造りの壁も…。
壁に掛けられた肖像画も。
何も変わっていない。
唯一違うのはこの部屋には今は私しかいないこと。
世話を焼くメイドも近衛もいない。
おそらくここは城内にたくさんあるゲストルーム的な場所の一つなのだろうけど…。
ココがどこかまではわからない。
何せ城内にはあほみたいな部屋数があるので私もすべて把握してるわけではない。
最終兵器のしまわれた謎のものおきしかり、昇降機付きのトイレっぽい部屋しかり。
歴代の竜王が増築に増築を重ねた結果なのだが…。
もはやどの部屋が何の部屋なのかよくわからぬ。
知らぬところに罠やトラップが仕掛けられているのはよくあることなのである。
「あっここ知らない通路だ。」
と思って足を踏み出したら、壁から矢が飛び出してきたり。
(後日、立ち入り禁止‼のテープが張られました。)
「あっこんな部屋あったんだ。」
と思って踏み出したら、両側から壁が迫ってきて、ぺしゃんこになりそうになったり。
(後日、立ち入り厳禁‼のテープが張られました。)
「うわー綺麗な宝石と思ったら。」
壁からレーザー光線が飛び出してきたり。
床から無数のとげが出てきたり。
(後日、触るな危険‼のテープが張られました。)
とかもろもろである。
まあ、この部屋に関してはあまたあるゲストルームのひとつっぽいし、問題ないのだろうけど…。
兵たちかフルミネがここまで運んでくれたのだろうか?
戦車から降り立った後。
私は溶け落ちた最終兵器ドラゴンゾンビの残骸に埋もれて、それから、やっぱり、変な夢を見た。
「ということは…。我死んでるの?」
変な夢は地獄でここは天国?
コンコンコンコン。
そんなこんなに思いをめぐらせていると扉がたたかれる。
誰だろ?
フルミネ?
いや、でもフルミネはたいてい、窓から入ってくるから…。
「あ、目が覚めたのね。よかった。」
そういって入って来たのは近衛のフルミネではなく、真っ白な髪に両翼の真っ白な翼、サファイアみたいに真っ青な瞳に、青いドレスをきた女神のような神々しい女の人。
アレ私やっぱり死んでたの?
ということはあの人は、天使?
「お迎えですか?」
きょとんと首をかしげる私。
「いや、あなた、死んでないから…。」
それに冷静に突っ込んでくる女の人なのだった。
☆☆☆
「ハーブティーでもいかかが?」
ワゴンの上に置かれた透明なティーポットを手に取り、カップへと注ぐ女神みたいなヒト。
透明なポッドがからとろけるように流れ落ちる水滴。
「我が国でハーブなど取れないはずじゃが…。」
「そういわずに飲んでみて。」
ベッドの上でそれを飲み干す私。
トロんと垂れたハーブティーのしずくが乾いた私の喉を潤す。
「どう落ち着いた?」
ベットに腰掛けそう問いかける天使のような人。
いや、天使だとしたら人ではないのか。
「しかし、よいのか、少なくとも、この荒涼とした大地ではハーブはとても希少じゃ。たとえそれが外部から持ち込まれたものだとしても…。」
それに対してにこにこと笑う女の人。
「それね。確かにうちの国でもハーブはとれるようだけれど…。でもそれ、うちの国から持ってきたものでも外のモノでもないのよ。」
「外を見て。」
そういって重く厚いカーテンを開く女の人。
カーテン越しに広がるのはいつもの荒涼とした大地ではなく…。透き通るような小川、みどりの草地に色とりどりの花畑。
「見事な魔法じゃの?」
「魔法じゃないよ。すべて本物。荒地にだって、いつか花は咲くのよ。」
「ねえ、もっと近くで見ていいかの?」
「どうぞ。」
布団をはぎ、ベッドから降りると日のさす方へ向かう。
太陽がまぶしい。
女の人が身長の低い私のために出してくれた椅子の上によじ登り、両開きの格子状の窓のかぎを外し、開け放つ。
そのとたん、部屋の中に清々しい漂う新緑の香、そしてそれを送り届けてくれるそよかぜ。
窓の外を見てみれば、色とりどりの花畑を竜族の子供が走り回り、上空をワイバーンやドラゴンが飛び交う、そんな景色が広がっていた。
そこに荒涼とした大地も、埃っぽい乾燥した風も微塵もない。
元々、我が国は毒と溶岩のおかげで食物が取れず、外の世界に活路を見出すことしかできなかった国。
それゆえ、近隣国へ戦争を挑んでいた。今回も討伐されたドラゴンを勝手に使者ということにして隣国に戦争の言い掛かりをつけていただけだったのだが…。
「まけましたわ。」
まさか、こんな結末を迎えるだなんて。
竜族には掟がある、ドラゴンは強きものに従う。古くからの慣わしである。
敗者は勝者に師事をするのだ。
そして己を磨く。
私はこの掟をそう解釈している。
つまり…。
「そして感服いたしましたわ。わたくしを弟子にしてくださいまし‼」
弟子にしてもらえばいいのだ。
そして私はおそらく人ではないその美麗な女の人の手をつかむのだった。
「???」
「えっと?弟子?」
一歩の女の人は私のその発言を若干の戸惑いとともに受け取ったようだった。




