39 もしもし私、メリークリスマス。いまあなたの後ろにいるの。
「omya、ウaイク・・・ア?」
振り返ると背後から聞こえる怪物の声。
どうやら奴はこの紫の壁の向こうにいるらしい。
通るたび増えていた通路もヤツの仕業だとすれば納得がいく。
大方モグラのようなかぎづめかムカデのような大あごを持つ地中性のモンスターなのだろう。
そして壁に映ったヤツの顔は長く、大きな口。
その大きな口の中にさらに口が見え、とてもこの世のモノとは思えない様相。
夢の中のモンスターだけあって壁に映る姿は判然とせず、常に揺らぎ、落ち着かない。
「ウミャウミャ。」
壁の向こうで首をぐるぐる回し、不気味な鳴き声を上げる怪物。
「ひいぃいいいいいい。」
思わず叫び声をあげる私。
相手はミノタウロスではない、もっと何か別のものだ。獣系のナニカということは間違いないのだろうけど。
そもそも口の中に口が存在するミノタウロスなんて聞いたこともない。
そもそもミノタウロスは草食なのだ。肉食性ではない。
だが、少なくとも口の中に口のある生き物は獲物を逃がさないための二重構造、肉食性の化け物であることはわかる。
私の恐怖心が生んだ架空の怪物ということなのだろうか。
口が二つ付いているモグラのようなナニカ。
それとも別のナニカが。
そのナニカがナニカを咀嚼するくちゃくちゃという音。
何を食べているかなど考えたくもない。
少なくともこの場にとどまるのはどう考えても得策ではないし、そうすべきではないだろう。
第一、ヤツに食べられたくないし。
私は地面を蹴り、翼を広げ、全速力で先へと飛び逃げる。
あんな化け物に食われるよりかはまだ、迷路の中で迷っている方がましである。
それにおそらくドラゴンの飛行スピードに追い付けはしない。
それに私にはとっておきがある。
竜族の得意技。胸に吸い込んだ空気を燃焼させ、出す炎のブレス。
大きく息を吸い込み、口から炎を吐きだし、背後にいるであろう敵に応戦する。
熱により次第にトンネルは形を失い、溶け始める。
最後には溶け落ち穴ごとつぶれる。
「zrリョウ…ウママオイギュ…。」
断末魔と思われる鳴き声を発する怪物。
これで怪物もろともつぶれてくれればいいのだけど…。
「というかこの壁。私の炎で溶けるんだ。」
なら、全部燃してしまえばよいのでは?
立ち止まりそう考える私。
なら話は簡単だ。炎のブレスで周囲を燃やし尽くし、出口を探す。
私自身は炎に耐性があるので何の問題もない…。
よしそうしよう‼
ん?なんか背後から気配を感じるんだけど気のせいだよね?
そんなはずはないのだけれど、恐る恐る振り向こうとする私。
だって奴は竜のブレスで溶けた壁面の下敷きに…。
「おまえうまいくま?」
背後から当然聞こえる声。
「怪物‼」
「ひゃぁぁっぁっぁぁll。」
目のまえにある怪物の顔。
アレ?縦長じゃない?
でももう限界かも。
ゆっくりと綴じていく私の瞼。
私はそのまま気を失うことになるのだった。
☆☆☆
「あれ?気失っちゃったくま?」




