28 あの消し炭になるまで焼肉やいちゃダメです。あと網はちゃんと洗ってください。火力が落ちます。
キラン。勇者はマジックバックから自信ありげにそのピコピコハンマーなるものを取り出す。
ただ、それはどう見てもおもちゃのソレ。
その辺の露店で面白そうだから買ってしまっといたやつである。
「なんだ。ただの子供のおもちゃではないか。ね?我のことバカにしてない?」
勇者の額を再びツーッと伝う汗。
「そう見えるか?」
「どう見ても、おもちゃだが…。それで戦うのか?」
聖女がどうすんのよあんたっ感じで口をパクパクさせる。
たぶん焼肉パーティはごめんだわと言っている。
その横では神に祈るように自身の武器を置き、両の掌を合わせて天を仰ぐ戦士。
「できないのか?」
戦士ちょっとどうにかしなさい。
たぶん聖女の次の口パクはこういっている。
勇者はその場から動かない。
ピコピコハンマーを構えたままである。
なぜならそれはおもちゃであり、何もできないから。
ひとたび振り下ろせば、ぽふっと音が鳴り、何の威力もないただのおもちゃであることが証明されてしまうからである。
今勇者の頭の中ではどうしよという言葉が巡り、何とか時間を引き延ばし、相手の出方を探っているのだ。
だが、それももう…。
時間切れであった。
「では、約束通り、貴様らを消し炭へと変えてやろうぞ。」
ふしゅーっと鼻から蒸気を出すワイバーン。
口からは炎が漏れ、やる気まんまんである。
「ではさらばだ。」
その時、急に天から光が差し込み、勇者の持っていたピコピコピコハンマーを光が包む。
「なんだ、眩しい。」
ワイバーンは攻撃をやめ、勇者から目をそらす。
「何事?」
聖女は服の袖で顔を隠し、戦士は天を拝んだまま、目を細める。
キランとひときわ強く輝く光。
と同時に勇者の手にそれは降りてきた。それはさながら黄金のハンマーのよう。
「というかハンマーだよね。」
「いったいどこに、そんなモノを隠し持っていたのだ…。」
「これが俺たちの最終兵器。ピコピコハンマーだ。」
どう見ても先ほどのピコハンとは、大きさも色も、形状も違う武器を構える勇者。
「どうやら、運はまだ、俺たちに味方しているようだな…。」
急に勇者っぽいこと言う勇者。
その時、勇者たちはみた。
上空から現れたいくつもの光の矢を…。
そしてそれらはワイバーンたちの背中に見事命中。墜落したワイバーンたちはリザードマンの兵士たちの隊列を押しつぶし、さらにリザードマン兵士にそれが当たると衣服と武器だけを残し、消失する。まさに神の矢。
「これが…。神の矢なのか…。」
そうつぶやく兵士たち。
「これでとどめだ。」
黄金に輝くそのハンマーをワイバーンへと振り下ろす勇者。
「くっ。」
なお、後世の歴史書にはこう書されている。
そう、それはまさしく神の矢であった。神はまだ我々を見捨てていなかったのだ。
ただ、同行した聖女によれば、アレはまさしく神の行いであったが降って来たのは矢ではなく、槍や剣、だったのだという。
なぜ…空から剣や槍が降って来たのか。
それは神のみぞ知るということであろう。
☆☆☆
「ねぇ、それどこからもってきたの?どういう特技なの?」
「いや、分からん。街の露店で同じものを買って、一生懸命再現しようとしているのだが。」
「なぜかできない。」
「あの時はできたのになぜだ?」
「しかも、あの時のピコハンどこにもないんだ。」
「え?トイレの荷物棚にでも置いてきたんじゃない?」




