17 照り焼き不確定ドラゴン
「戦士食べないのか?なかなかうまいぞ?この肉?」
屋台の店主とのディールに打ち勝った勇者は串焼きを食べるため、宿場町の外れに移動した。
だっていつまでも目深にローブをかぶっていたら怪しまれるし、いつか気づかれること間違いなしである。一行はごつごつした石の上に腰掛け、ローブを取り外す。
「やっぱ、視界が狭いのはよくないな。開放感がない。」
下から登ってきた戦士を岩へと引っ張り上げる勇者。
「おう、さんきゅ。」
戦士は勇者から肉を受け取り、ほおばる。
「焼きたてだから気を付けろよ。」
「ハフハフ言いながらそれをほおばる戦士。」
「よくあんたたち、そんなギトギトのやつ食べれるわね?」
魔法でふわりと岩の上に降り立った聖女がそれを横から半分くらい侮蔑の目で見つめる。
茶色い肉の表面にはテカテカした油。
「うえ。見てるだけで酔いそう。」
「ああ、この油はな。あとから店主が丁寧にすり込んんだものらしいぞ。そのままだとぱさぱさして食えんのだと。」
垂れる肉汁はたぶん、肉汁ではなく油なのだろう。
「ふーん。ぱさぱさね…。戦士その肉おいしい?」
「ああまぁまぁだな。」
むしゃむしゃ肉を喰らう戦士にそう聞く。
「聖女は食べないのか?」
肉を差し出す戦士。
「私はやめておくわ。」
♢
♢
「ところで勇者…?この肉、何の肉なの?」
常に心中に浮かんでいた疑問を呈する聖女。
「なんか、変な肉じゃないでしょうね?」
少なくとも鶏肉とかそういうたぐいの形はしていないし、道中に牧場らしき建物も見当たらなかった。
とすると、残るはジビエか、魔物の肉か。
あるいは…。
聖女の中にそうした疑念が過ぎるのも当たり前である。
加えて、まだ、旅の途中だし、変なもの食べて体調崩したら困るのよという聖女の心配もある。
というか、このパーティ魔法が使えるのは聖女しかいないので、二人ともダウンすると聖女が二人とも治癒魔法で何とかしなきゃいけなくなるわけなので実に的を射た心配である。
うーんとちょっと考え込む勇者。
「店主はどぶと言っていたな。」
「他にはこいつの一回り小さいのが売ってた。店主によれば、魔物とかではなくて。この辺りの割とポピュラーな食材って言うのを安心して買ったんだが…。」
「あと、少し前には別の串焼きも売ってたそうなんだが、そっちはすぐ売れてしまったらしい。」
「どぶ…?」
勇者の発した言葉から推理をめぐらす聖女。
どぶ…。
のつく生き物で…。
くしに刺せるぐらいのサイズ感。
やせた土地でも大丈夫。
魔物ではない。
ポピュラーって言うことはある程度数がいるということ。
この地に牧場はない。おそらくジビエ。
あとは肉の形状。
「なんだ?やっぱり食べるのか?」
戦士から食べかけの串を預かり観察する。
「食べないわよ。私まで倒れたらどうするつもりなのよ…。」
全くもうこの二人はいつだって楽観的なんだから…。
「そしたら、俺が介抱してやる‼」
「いや、勇者倒れてる前提の話なんだけど…。」
はじめての土地ではよくあることなのだ。
見知らぬ土地に、見知らぬ種族、珍しい文化、言語、そして疫病や感染症。
その土地の種族は対応できても外部の人間にはそれを防ぐ耐性はない。
だからこそ警戒が必要なのである。
骨付き、骨格。
あとこれは?
しっぽ?
あとは不衛生でないことを祈るばかりなんだけど。
もしかしたら、もう手遅れかもしれない。
だけど…。
半分くらい自業自得である。
「あんたたち…。」
「お腹壊しても知らないわよ。」




