14 竜王様それ何度も言ってますが、お酒じゃなくてジュースです。
なぜこの街がポイズンパレスと呼ばれるのか。
それはここが死の川と呼ばれる八つの河川の合流地帯だからである。竜血池をはじめとする火山地帯から流れ出た、八つの川は火山性の有害な毒を帯びている。
そしてその合流地点である河川の中州にあるのが首都ポイズンパレス。
周囲の世界からは毒の河川によって隔絶され、守りやすい鉄壁の自然の要塞である。
交通手段こそないものの、そこに住む住民の多くは翼のあるドラゴン種のため、不便さは感じていないのだという。
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「さて、隣国のあほ面どもは今頃、竜骨山脈から放たれる。竜たちの息吹によって火だるまかの?」
金の玉座のひじ掛けの左右に小さな足と頭をかけ、寝そべるように座る赤髪ロールの小柄な少女。
真っ赤な髪からは金色のツノ。下半身には真っ赤なうろこのついたしっぽ。
頭にはじゃらじゃらとした宝石。首からもというかあちこちに色とりどりの宝石をぶら下げている。
「酒じゃ、酒を持ってこい‼」
「恐れながら申し上げます、竜王様。」
バルコニーに影が差し、ドラゴンの翼を携えた女兵士が窓から現れる。
「なんじゃ?もう新しい酒を持ってまいったか?フルミネ?」
「いえ、戦況報告にございます。」
竜王の前で片膝をつくフルミネと呼ばれた金髪ロールの女兵士。
「おおっ。そっちじゃったか。わが方の勝利報告であるな。しかと聞かせよ。」
「それが…。」
「なんじゃ、もったいぶるでないぞ、早く聞かせよ。」
寝転ぶのをやめ、早く申せという竜王。
「国境付近に展開していた我軍ですが、隣国の迎撃に会い、進軍を止めているとのこと。」
「なんじゃ、勝利報告ではないのか。ほう。隣国をも指を咥えて見てるだけではないのじゃな。」「して、数はいかほどじゃ?」
「それが…。」
竜王の額の宝石が揺れる。
「なんじゃ、申してみよ。」
「はっ。敵軍は総勢2人。」
「既に我が軍の迎撃をかわし、我が領土内に進軍を許していると思われます。」
「おい?聞き間違いかの?2人とは?2千とかそういう数じゃなくて?ゼロ忘れてないゼロ?」
素の声でも出ているのか、口調が少し変わった竜王は玉座から起き上がると、床につかぬ足をぶらぶらとさせる。
「はっ、確かに伝令にて2人、いや正確には2人と一匹と報告が来ております。」
兵士は片膝をついたままそう報告する。
「まさか、その一匹とはドラゴンなのか?」
「いいえ、それが、クマとのことです。」
「くうううま?」
「…。」
再び揺れる竜王の額の宝石。
「くま?とはあのクマかの?鮭くわえてるアレかの。」
「はい。そのクマにございます。」
「…。」
「フルミネ…そのクマってそんなに強いのかな?どっちかとこうかわいいイメージじゃない?」
「そうなのですが…伝令によれば万年の笑みでドラゴンのしっぽを喰らうていたと。」
「それ…。倒したドラゴンのってことだよね?共食いじゃん。」
揺れる額の宝石、驚愕する竜王。
「いえ、ドラゴンとクマですので共食いには当たらないかと…。」
「あっそっか。」
うーんと腕を組む竜王。
「で、残り二人は?」
「人間。」
「人間?」
「のように見えるのですが…。たぶん違いますね。アレは。」
「え?」
「なんというかこう、神々しいのです。」
「え?」
揺れる竜王の額の宝石。
「見ればわかります。」
「え?でも隣の国ってでも魔族領じゃないっけ?」
そう首をかしげる竜王。
「そうだったかもしれませんが、我々、ほとんど、ドラゴニアから出ないのでわかりません。」
ぐっと竜王にポーズをして見せるフルミネ。
「…。」
「ゴホン、それでそやつらは今、どこにおるのじゃ?」
咳ばらいをし、また元の声質に戻る竜王。
理由は外の扉の向こうから足音が聞こえたから。
「それが、死の谷までは足跡を辿れているのですが、何者かによって、死の谷唯一の吊り橋が落とされており…。現在我が軍は足止めを喰らっております。」
扉をがんと開ける音。
「竜王様。」
現れたのは重装備のワイバーンの兵士。
「こんどはなんじゃ?」
竜王は次から次へと入る伝令に少々いらつき始める。
「城内に…。」
「侵入者が現れました‼」




