12 くまたん、謎肉を所望する
竜血池をすぎ、荒涼とした景色を進んだ先。
ちょっとすさんだ宿場町。
「旅人か。珍しいな。」
ちょくちょくこっち見てはそんなようなことを言うドラゴンたち。
私たちはというともちろん変装中。
「まおーさまっ。まおーさまっ。あれみるくまっ。」
ローブの下でうにゃうにゃ何か訴えるくまたん。
「肉くまっ。あれほしいくまっ。」
くんくん、たしかにいいにおいがする。
その先には肉屋の屋台。
「というか、見えないはずだよね?ローブで?」
「においで分かるくま。ほめてほしーくまっ。」
またしてもうにゃうにゃ動くくまたん。
「しろくまっ。あんまり動くと、バランス崩すのでやめてください。騎馬戦の一番上はきついでしょうわかりますか?」
「たしかにさぼてんの一番上はきついくまね。でも、重たいホラーマンのせてる方もきついくまよ。ちょっと重くなったくま?」
「うるさいですね。肉がつけば、重たいのは当たり前なんです。」
また、ごちゃごちゃ言ってるよ。
バランス崩して見つかってクマ鍋にされなきゃいいけど…。
と、そんなことを考えながら目の前の屋台に目を移す。
謎肉と謎肉と謎の肉。
ナンノニクデスカコレハ?
いや唯一分かるものがあった。
うろこのついたでかい肉。
くし刺しにされてるけど、これ…。
アレだよね。
そう。
「おお、嬢ちゃんお目が高い。そいつはドラゴンのしっぽ肉だ。」
「しっぽ肉?」
首をかしげる私。
「ああ、知らないのか。この辺でとれる肉と言えば基本ネズミ肉だ。ほら、そこのやつがそうだ。よく焼けてるだろ?」
「うーむ。」
確かにしっぽ付きだ。
よく見れば手と足と耳も。
絶対に食べたくない。モザイクかけとこ。
「あんまり好きじゃなさそうだな。そんなグルメなネズミ焼き否定ドラゴンさんには。このドラゴンのしっぽをお勧めするぜ。この辺りは荒涼としてなんもないからな。ちな、この辺りじゃ高級肉だぜ。」
「高級肉?」
「ああ、生活に困ったドラゴンが泣くに泣かれずしっぽを自切するのさ。」
え、せつない。ドラゴン世知辛い。
「ま、嬢ちゃんも知っての通り、何年かして、また生えてくるんだけどな。」
え、生え変わる系?なの?
「それで、どうよ買ってくかい?」
「いくらかしら?」
「123ドラコだ。」
そういう店主のドラゴン。
そういえばここは別の国。種族も違えば通貨も違ってて当たり前か。うちの国ではしっぽ肉売ってないし。
でも。お食事は欲しい。くまたん用の。
だって買わなかったよって言ったら絶対ごねる。
「ちなみに、ネズミ肉はいくらなの?」
興味本位でそう聞いてみる。
どのくらいの物価なのか知りたいし。
「ああ、そいつか。大きい奴がどぶで3ドラコ、ノーマルが1ドラコだ。」
どぶってなんだ、どぶって。
まあ、ともかくドラゴン肉がお高いのはわかった。
だが、やっぱりネズミはイヤだ。というか、いらん。
となると残りの選択肢はドラゴンのしっぽ。
問題はどうやって買うかだ。
だって通貨持ってないし。
自国の通貨を見せればその時点で、兵士を呼ばれてしまいおしまいだし。
よく、おとぎ話であるドレスを売ってお金に換えるああいうの、そう物々交換は使えないだろうか。
「物々交換ではだめ?」
「ああ、いいが嬢ちゃん、失礼だが、そんなに金目のモノを持ってるようには…。」
がさっ。私は懐に忍ばせていたあるものをとりだす。
「上質な矢よ。使用済みだけど。価値はあるでしょ?折れてもいないはずだけど。」
「おお…。まるで、国軍が使用する矢みたいな高級品だな。嬢ちゃんこんなのどこで手に入れたんだ?」
「店主。入手ルートは聞かないのがお約束だろう?」
「それもそうだな。嬢ちゃん。」
「熱いから気をつけろよ。」
そう言って、店主はでかいドラゴンのしっぽの串焼きを渡してくれた。
もぎゅっ。もぎゅっ。
そのあとに予約した宿屋で肉の塊を満足そうにほおばるくまたん。
「まったく。しろくまの胃袋は底なしですね?」
「でも満足してくれたならそれでいいかな。」
テーブルに向かい合いクスリと笑うリリアと私。
ちなみに宿屋の代金も矢で払いました。
「代金はこれで。」
「ええ?これはすごく上等な…。矢では?ほんとに手放してよいのですか?」
「ああ、残りはチップにしてくれ。釣りはいらぬっ。」
「えっ。かっこいい。」
きゅん。
そしてこの矢。
もちろん竜血池で私たちに向かって放たれた矢を「必殺、界面活性剤くまっ。」とかいう謎すぎる力でくまたんが跳ね返してたやつをスライムの分体くんがかき集めたもの。
なので完品なのである。




