10 落ちたら死ぬ!?灼熱の溶岩地帯で焼く石焼ビビンバは最高です
その国、巨竜国家ドラゴニアはかつてこのように呼ばれた、無敵の鉄壁要塞ドラゴニア。
「その国土は荒涼とし、火山帯や、大断層など、まさに自然の要塞。人間など住みようのない過酷な環境、また、今までは人間領との間に我が国が緩衝地帯として存在していたことから難攻不落の要塞都市と呼ばれていました。もっとも、今では、人間界との接触がないため、認知すらされていないようですが…。」
というリリアの大昔の話。
そして目の前に広がるのはぐつぐつと煮えたぎる血の色をした池。つまりはマグマ。
決して温泉ではない。もし入ろうと思えば跡形もなく溶けてしまうだろう。
「うわー。あつそー。」
リリアによれば、この竜血池を迂回するように回り込むのが正式なルートなのだそう。
というかそれ以外にルートはないのだが…
私たちの噂を聞きつけたのだろうか。
「なんかいるくま…。」
その一本道をふさぐようにいかつい鎧で武装したリザードマンやワイバーンたちの集団が向こうからわしゃわしゃ進んでくる。
「もうすぐ国境に入る。竜骨山脈を超えたあたりに拠点を作る。」
聞こえる兵士たちの声。
「軍隊でしょうか。」
「めっちゃ邪魔くま。」
ちなみにここはマグマの上の一本道、やり過ごせそうな岩陰もない。
正面からぶつかるか?
それとも、旅人のふりをするか。
「よし、とりあえず旅人のふり。」
たぶんこれ、うちの国に攻め込む部隊だと思うから、浄化魔法でバチバチして、こちらの動きがバレるのは避けたい。
ちゃちゃっと着替えるしかない。
変装用のローブとあと万が一のアレも持ってきた。
「まおーさま。なにするくま。」
「くまたんは、着ぐるみで表面積広いから…。」
そうくまたんを見つめながら、決断を下す。
「土台ね。」
「ぐまぁッ。」
その瞬間、組体操のようにくまたんの上に乗るリリア。
「天使さま、こういうことですね?」
なんか、目がきらきらしてるのは気のせいだろうか。
いや、そんなことはない。
「覚えてろくまっ。」
でその二人に長めのローブをかぶせる。
「うん、これでばっちり。」
私たちの体格じゃ、すぐ、ドラゴンじゃないって背格好でバレそうだもん。
で私の方もローブをかぶって。
「よっと。」
♢
♢
「なんだ、旅人か?珍しいな。」
一本道を進むと兵士の集団とかち合った。
「エエ、コノサキノシュクバマチ…メザシテル…ドラ…。」
「ああ?なんか変な語尾だな。さては田舎もんか。」
しまったてっきりくまたんみたいに語尾になんかつくタイプだと勝手に思ってたんだけど。
「…そうドラ?」
テキトーにごまかしておく私。
「そうか。」
「念のため、顔を見せてもらう。万が一隣国のやつらが現れたら厄介なことこの上ない。」
「おいっ。」
部下を呼び確認させる。
どうやら、先ほどから言葉を発している私の方から確認する用だ。
はがされるフード。
「白いドラゴン…。」
「サキススンデイイカ?」
「え?あ、どぞっ。」
スタスタ進んでいく私たち。
だが、そううまくはいかなかった。
「ところで知ってるか?嬢ちゃん。この辺りにはリザード系の魔物かドラゴンしかいねえのさ。そして、この国のドラゴンにそんな色のやつはいねえのよっ。」
リーダー格のリザードマンから放たれる槍がローブからでた白いドラゴンの頭をとらえる。
が、その瞬間、槍をよけるように歪む白いドラゴンの頭。
そして槍は白いドラゴンの頭を穿ち、真っ黒な地面に刺さった。
残念、作戦失敗、そんなに甘くはなかった。引き付けておくぐらいにはなったかもしれないけど。
「何だと?貴様、何者だ?」
「ナノルホドノモノデハナイ。タダノタビビトダ。」
「くっ。曲者め。」
「総員‼奴らを逃がすな。」
あっやっぱこうなるよね。しかも、すごい、数。
ちなみにドラゴンの頭は例のスライム(くんなのかちゃんなのかわからないけど)の分体。なかなかに優秀である。ちなみに本体はお城で留守番中である。
「それにしても多い。」
こんなとこで浄化魔法撃ったら、たぶんこのマグマの上にかかる一本道は崩壊する。
ほぼ確実に。
でも、そのうち勇者くんも追いつくだろうし…。相手してる余裕もない。
こうなったらあれだ。
国と国の間に橋かけちゃおう大作戦。
「リリア、くまたん。あれ、止められる?」
「天使様のご命令とあれば。」
「まかせるくまっ。」
ローブを解き放ち、リザードマンの爪と交錯するフライパン。
「焼肉にして差し上げます。」
「まとめて、石焼ビビンバにしてやるくま。」
くまたんも応戦中。
効果がいまいちなのか、首をかしげるリザードマン。
「効果はいまいちとでもおもったくまー。」
着ぐるみを脱ぎ捨て、攻撃するくまたん。
「必殺、身代わりの術クマっ。」
まとめて、ぐえっと吹っ飛んでマグマにあちちするリザードマン兵士。
「まおー様いまくまっ。」
「天使様、いまですっ。」
「うん。」
できるかどうか分からないけど、考えていた技を発動させる私。
「だんしゃーりー☆ピュフリケーション マキシマリスト」
だんしゃーりー☆ピュフリケーションの応用型。要らないものは断捨離、空いたスペースに必要なものをお取り寄せ。これにはお片付けできない系魔女もびっくり。
この魔法は使用者の練度によって差異の出る上級魔法です。
本当に使用しますか?
はい/いいえ
それはもちろんはい。
あっという間に真っ白になる視界。
あつあつの溶岩は消えてなくなり。あたりにはしんしんと雪まで降り出す始末。
「ぐえっ?」
リザードマン兵士のとぼけたような声。
その足元は氷に閉ざされ、動くこともできない。
「奴らを追え。おそらく奴らが我らを石焼ビビンバにして喰らうという隣国の恐ろしい魔物…。」
「隊長、足が凍らされて…動きません。」
「寒い…。」
「えーい、なら弓だ。弓を使え‼」
そして、光り出す溶岩地帯。どこかへ消えたマグマのかわりに氷があたりを覆いつくし、現れる大きな氷の橋。
道は開けた。
「いくよどこまでも。」
「はい、女神様‼」
氷で足元が封じられたため近づくことのできないリザードマンたち。遠くから投擲される弓を杖で打ち落とし進む。私たち。
リリアは剣で、くまたんは着ぐるみで。
「っていいの?着ぐるみではらい落として。」
「この着ぐるみ。あほみたいに固いから問題ないクマ。」
よく見ると矢がはじかれる何やら透明な膜が。
「必殺、界面活性剤くまっ。」
「世界観壊すのやめてくれない…?」
ドラゴンゾンビ首都、ポイズンパレスまで、もう少し。




