8 森をかけぬけて ~ポーズ画面はもちろん頑張るか続けるしか選択できません~
森を抜けた先そこにあったのは大きながけ。
竜骨山脈と呼ばれる、聖アルデバラン王国国境地帯。
「え?ココ登るの?近道とはいったい。」
思わず思ってしまったことが口にででてしまうぐらいの非常に急峻な崖。
「でも、ココしか道はないくま。とりあえず、登るか。一回休んでから登るか。もう一回休んでから登るのか。それが問題くま。」
いや、それ結局、登るしか選択しないやつ。
「くまたん。それ、ノーコンティニュ―ってやつだよ。」
「きのうのこんにゃくきょうくう?なにそれくま?それうまいくま?」
「いや、食いもんじゃないわ。」
うちのくま。
雑食です。
☆☆☆
「天使様、大変お悩みのところ、恐縮なのですが、それはそうと、天使様としろくまは天使なのですから…。その背中についた羽で飛べばいいのでは?」
名案をいうリリア。
なるほど、そっか、確かにこの体に慣れてなさすぎて気づかなかったけど。私、天使なんだよね。そしてこの天使に見えないクマも。
「その手があったくまね。ホラーマンもたまにはいいこと言うくま。」
「しろくま(#^ω^)。」
リリアが低い声でうなる。
「まおーさま…ファスナーひっぱってくまー。」
それを聞いてか、聞かずか、あるいは聞いてるけど聞かなかったことにしてるのか、華麗にスルーして私のもとへとやってる。
「はーやくするくまー。」
私の前でふわふわ、もこもこな体のまま、ぴょこぴょこ跳ねる。
いや、かわいいなお前。
「はいはい。」
そういって下までファスナーを降ろしてあげる私。
さっそく衣装を脱ぐくまたん。
「この形態でないと、羽でないのが若干めんどいくまっ。」
しかもご丁寧に着ぐるみをきれいにたたんでいる。ちなみにくまたんの着ぐるみは頭と胴体は分かれていないタイプである。
中身の本体をきれいに出したくまたん。
「あーっ。やっぱ。スース―するくまーっ。」
そして。後ろから徐々に近づく、お怒りオーラ。
スパンっ。
ナニカが切れる音…。
「え?」
突如、スロー再生みたいになる視界。
リリアが鞘みたいなマジックバックから剣を取り出し…。
くまたんの後ろですぱーん。
「このぺちゃぱい。しろくま、許しませんからね?」
「くぅぅうまっ?」
スロー再生終わりと同時に視界に入る謎の光線。
揺らぐくまたんのパレオ。
「くくくまあまっまままああああ。」
とりあえずその辺の茂みを丸ごとかっさらって光線を消すくまたん。
「教育に悪いくま。」
「くまたん。あとで私の貸してあげる。」
☆☆☆
「まおーさまのやつ…。」
すー。大きく息を吸い。
後ろで止める。
え?くまたんの体をすり抜けていくソレ。
そしてそれを拾うくまたん。
♢
♢
「え?サイズが合わないから返す?」
私にそれを返すくまたん。
「でも?」
「一応予備は持ってきてるくまよ。あとまだ、成長期くまっ。」
「???」
☆☆☆
「いくくまよ。」
崖に向かって飛び立つ準備をするくまたん。
「くまぁああああ…。」
力を入れ、小さな翼をパタパタうごかし…。
「とべたくまっ。」
地面から1cmぐらい浮き上がるくまたん。
「天使様。愛があれば…できないことなどありません。」
いやソレ、言いたかっただけだよね?と言うかそんなキャラじゃないだろっ。
ただ、肝心のくまたんはなんだか辛そう。というかさっきの位置からは全くと言っていいほど上昇していない。
「くっ…まぁ。これが限界くま。」
はぁはぁ言いながら地面に降り立つくまたん。
「ですが、やはり、浮遊魔法なしでは厳しいようですね…。」
「え?浮遊魔法?」
「はい、空を飛ぶ系の種族はたいてい持ってたりするのが常識なのですが…。持ってなかったりする場合ももちろんありますので!」
「お前、分かってて言ってた。訳じゃないくまよね?」
「ぴゅうぴゅう。」
くまたんの問いに謎の口笛を吹くリリア。
絶対ごまかしてる。というか日頃の恨みじゃん。まあ、いいけど。
「とにかくココでは、浄化魔法も役に立たないですし、浮遊魔法を持っていない、我々の飛行能力では厳しいものがあるかと。」
「やっぱり、登るしかないのかな?どこかにはしごでもない?」
「昔はあったのですが…。国境地帯ですから。どこかで外してしまったのではないかと。」
うん、梯子はずされちゃったってわけね。
「ん?」
突如地面に揺らぐ影。
自然と上を向く私の視線。
その視線の先にいたのは…。
おおっきなドラゴン。
よくファンタジーで見かけるようなアレ。
鼻からはふしゅーっと吹き上がる蒸気。
RPGよりの真っ赤なドラゴン…。
しかも飛んでる…。
「天使様、あやつ、帝国の紋章をぶら下げています‼」
ということは…。やっちゃっていい奴ってことだよね。
杖を構え、準備する私。
「しろくま。援護を。天使様を守りますよ。」
「そんなこと言われなくてもわかるくまよ。こっちくまよー。」
ドラゴンの視線がくまたんの方へずれ、熱い炎のスパイラルが通り抜ける。
「今です。天使様。」
リリアの声。
「ピュフリケーション‼」
極大魔法「カタルシス」を使用します。
この魔法は地形変化、爆発などの副作用が生じる場合があります。
本当に使用しますか?
はい/いいえ
極大魔法「カタルシス」を使用します。
地形の変化、爆発にご注意ください。
次の瞬間。
女神様よろしく杖から発出される極太ビーム。
真っ白になる私の視界。
そして、ぐるぐる目を回した竜が衝撃とともに地面へとめり込んだ。
ちょっとやりすぎた…?
☆☆☆
「うん、サイコー。」
外の風が心地よい。
ドラゴンの背中さいこー。
「まさか、この手があったとは…。」
「ん?天使様、あのあたりに、焚火の煙が。」
「勇者くまかね。」
なるほど、勇者くんたちもそこそこ進んでいるようだ。
まぁこれから私たちはそこもショートカットしちゃうんだけれども。
「それじゃ行ってみよう。いざ、隣国へ!」




