20 なんか見たことあるやつおるんですけど…。え?気のせいですよ?そうですよ?
パンパン、空に描かれる空砲の白い跡。
「おや、お早いおつきですね。お待ちしておりました。勇者一行様。」
丁寧に挨拶をするリリア。
「ああ。少々、早く着いてしまったんだ。」
「うそばっかり。」
後ろでぼそっとつぶやく聖女。
ガガガガガ、後ろの格子状の城門の開く音。
「それでは、女王様の元へご案内いたします。こちらへどうぞ。」
噴水のある中庭。
甲冑の並ぶ廊下。
その先は謁見の間。
「天使様、勇者様がいらっしゃいました。」
☆☆☆
「えっ?」
ちょ、ちょちょ、聞いてないぞ勇者君?
ちょ、ま、手紙の意味分かってる?
明日の夜。城に来てほしいって。言ったよね。私。
で、朝、窓の外みたらいるんだけど…どういうこと?
思わず紅茶吹き出しちゃったじゃん、私の朝の優雅なティータイムはどこへ?
ていうか、勇者くん、招待状にきちんと書いてあったはずだけど…。
遠いと遠い旅路を歩まれている勇者様一行へ
明日の夜あなたたちをお城の晩餐会へご招待します。
白亜の城に住まう城主より
きちんと夜って書いてあるじゃん。
文字読めないんか?
「だから、そんなすぐ来るなんて聞いてなーい。」
ゆれるティーカップの中のお紅茶とテーブル、ティーポット。
もう勇者はすでにまだ、開けてもいない城門に迫っている。
しょうがない、いそいで準備。
「まずはくまたん。きぐるみ脱いで‼そんな人間いないから。」
「え?これは体の一部…く…まあっ。はぎゃっ。」
かわいく悲鳴をあげるくまたんと背中のジッパーをスパッーンと下ろす私、そして中から出てくるパレオみたいな衣装を着た白髪の天使の女の子。
「なんかスースーするくまっ~。着ぐるみにと落ち着かないくま~。身ぐるみはがすな~くまっ。」
誰がうまいこと言えと?
「よしっ。」
「何がヨシなのかさっぱりわからないくま。」
☆☆☆
「えっ、なんでこんな薄着なのかくまっ?それは着ぐるみの中が灼熱地獄よろしくだからくま。」
☆☆☆
「あっ、でも、まおーさま勇者たちにはこの姿で、会っちゃってるくまよ?くまごろうって名前で、Sランク冒険者やってるくまっ。」
なんちゅう名前やねん。でもあいにくつっこんでる暇はない。今とっても忙しい。勇者たちも、もうすぐそこまできてるみたいだし。余裕はない。
「やっぱ着ぐるみで。」
くまたん腰のあたりまで降ろしたジッパーを再び、元に戻す私。
「はっきゃっ。」
再び、かわいい声をあげるくまたん。
「まおーさま、急くまっ。心の準備ができてないくまっ。でもやっぱり、着ぐるみの方が安心くまっ。こっちの方が安心くまっー。」
「で、ラウネは…。なにして…。」
「ここにいるね‼」
スーパー長いツタでシニヨンを結いながら洗面台の排水溝から出てくるラウネ。別のツタにはヘアブラシに鏡。
「ちょっとお髪を整えてたネ!」
「洗面台から毎回出てこないの!いや、ちょっと器用すぎ、ていうかそれ便利だよね。」
「わかるネ?ちょっとお客様対応中だったネ?」
でも、そのうち洗面台ごと壊れそう。
「???何の話?勇者たち来るし、ツタを…。しまって。」
「しまったネ。つい出ちゃうネ。」
「で、リリアはすぐ、部下引き連れて勇者の案内と開門。」
「はっ。」
ピシッと敬礼する元スケルトンのリリア。うんこっちは大丈夫そ。問題は…。他の…。
変なことなきゃいいけど…。




