13 題して、勇者様御一行、おもてなし大作戦。
私はまず、ラウネに会いに行かないと…。会議にはいなかったから、城の畑かな?
いつもそこで城の野菜畑を管理してるらしいし…。
「ラウネいるかな…。」
城の裏側に作られた手作りの畑。城壁との間に細々とした畑が続く。最近は城の厨房にも野菜をおろしてるらしい。
どんなんだろという興味本位と、まずは勇者の胃袋からつかんじゃおーということでここまでやってきた私。
噂によれば、敷地が狭すぎて、城壁の外にも、畑を拡張しているとか、してないとか。まあ、間違いなくしてそうな規模だけど。
素朴な帽子をかぶった藁でできたかかしに木の枝を組み合わせて作られた素朴な柵。そう言った景色が、ずっと続いている。最初は小さかったけど、徐々に増えちゃった系だよねたぶん。
「ラウネいるー?」
畑の入り口でそう声をかける私。
聞こえないのかな。
今度はもっと大きな声で。
「ラウネいるーーー?」
ガサッ。
どこからか、聞こえてくる物音。
ラウネかな?
「キェ―――。」
と思ったら、突如視界に入るすさまじい雄たけびを上げるバカでかい草。私の背丈くらいはある。
「いや、誰ですかたあなた。呼んでないですけど…。」
話通じないタイプですか?もしかして…。ということは…。
「もしかして魔物⁉」
こんな城の近くに?というか、城の中に?しかも、なんかこっち向かってきてない?気のせいじゃないよね。気のせいであってほしい。気のせいであってくれ。だってあんなのに追いかけ回されるなんて、悪夢でしかない。
一見。形の悪い二股に割れたにんじんみたいだけど。顔、特に顔、アホみたいに怖い。普通にホラー級。
そして人間のように、走り、こちらへ向かってくる謎仕様。コレはもう、逃げるしかない。
そして、叫び声がひたすらにうるさい。夜も眠れないレベルというよりは完全に騒音、近所迷惑の領域。
とりあえず…追いつかれる前に浄化魔法を一発くれてやります。並大抵の低級魔物なら、コレで一発のはずっ。
勇者もいるし、威力は弱めで…。
「ピュフリケーション。(低出力)」
女神様の突然の思い付き(お詫び)によりMP×20
レベル99
HP 500
MP 7000×20
特技 浄化・治癒
特殊条件、低出力を使用します。
威力は弱めです。
本当に使用しますか?
はい/いいえ
手から飛び出す極少ビーム。狙うはよくわからん正体不明のこっちをむかって走ってくる魔物。超絶無敵の浄化魔法。
ピュン、地面を焦がし、煙をあげるビーム。肝心の魔物はよく見えない。
徐々に晴れていく煙。その向こう側には…。
「キェ?」
焼きついた地面でまるで何事もなかったかのようにしている魔物。こちらに気づいたのか目が合ったと思うとすぐにダッシュ。さっそう鬼ごっこ。
「えっ、まじ?」
畑の中を縦横無尽に駆け回る謎の魔物。
「浄化魔法効いてないじゃん。どーいうことー。ていうか、走ってないと追いつかれるー。」
激こわな顔をニヤつかせ、さらに気持ち悪い。
もう一度。
今度は普通の威力で…。
「ピュフリケーション。」
一瞬足の止まる魔物。
そして、根っこでガードしたかと思うと…。
ビームを弾き飛ばし、また、走ってくる。
「そんなのあり?」
やっぱりというか、どう見ても効いてない。それどころか、ピンピンしている。
こっちが柵乗り越えても、地面に穴を掘って追いかけてくる。まるで、モグラ。女神様どうなってるのー。
「キェーーーーー。」
またもや、鼓膜を破りそうな声で威嚇する魔物。耳塞いでないとちょっとキツイレベル…。とりあえず耳をふさぎながら走ってその辺の高い木に登る私。
「ここなら、大丈夫のはずだよね?」
☆☆☆
背中とお腹がごっつんこ。あれはこういう時に使うのだろうか。正確にはむしろ、頭と背中が、ごっつんこなんだけど。
「あれ?魔王様ネ?こんなとこで何してるネ。」
ぶつかったのは探していたはずのラウネ。
いつもの球根姿ではなく、チャイナ服でもなく、オーバーオールに麦わら帽子。大きな球根の代わりに足。
「あっ。わかったアルネ。魔王様アレに追われてるネ。」
すぐ下で喚く怪物を見つけ、そういうラウネ。
「アレはマンドラゴラ。とてもおいしい叫ぶ植物ネ。人間界では不老不死の薬、魔法界では治療薬の材料に使ったりするって聞いたネ。魔王様?知らなかったアルネ?」
「じゃっ、もしかして浄化できなかったのは…。」
女神様どうのこうのじゃなくて…。
「同じ聖属性だからネ。」
「キェ―」
木の上に登っていると気づき、下で叫びだす怪物。
「マンドラゴラは収穫時になると勝手に地面から抜け出して二股に分かれた根っこで周囲をうろつくね。そして、今がその収穫時ネ。」
そういって木の上から飛び降りるラウネ。
麦わら帽子、オーバーオールが風に乗って吹き飛ばされていく。
その下から現れたのはいつものシニヨンとチャイナドレスの女の子。
「収穫するときはまっすぐ上に引き抜くネ。」
いつの間にか、手に持っていた鍬でマンドラゴラを引き抜き、そして…。
「そして、とどめの一撃アルネ。」
ラウネの下半身がツタに覆われたかと思うと、一瞬で昔の球根状の姿に。
その鋭い口で、マンドラゴラが落ちてきたところを一刀両断。
「こんなものネ。」
☆☆☆
「あっそうだ。」
「ラウネにお願いしたいことがあって。」
ごにょごにょ。
「なるほど…分かったネ‼」
一瞬で私の言いたいことを察してくれるラウネ。くまたんも見習ってほしい。
「コレは入れていいネ?人間界では死に至るケースもアルネ。」
褒めたそばから爆弾発言するラウネ。
「うん、それは…。うんやめておこう。」
だってきもいし。
「じゃ、コレはいただいちゃうネ。」
あんぐり。
マンドラゴラを宙へと放り投げ、落ちてきたところを球根部分の口を大きく開けて捕食するラウネ。
食うのかよ…思わずそんなことを思ってしまう私なのだった。
☆☆☆
「そういえばラウネって?種族なんだっけ?」
「前はアルラウネ、ネ。今はドライアド、ドリアードともいうネ。」
「ドライアドって?」
「よく、神話に出てくるやつネ。確か人間界の神話にもいた気がするネ。」




