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◆3◆

 魔王討伐の失敗により勇者パーティーをクビになった俺は、エレナと一緒に仕事を手伝って欲しいと頼んでいる彼女の友人の元へ訪れた。


 やってきたのは魔王城からまあまあ近い場所にある町だ。

 魔王城に近いということもあってか、亜人と呼べる存在も多いが町の人々は気にしている様子はない。

 それどころか仲良く談笑したり、ケンカをしたり、場合によっては商談をしてたりしていた。


 亜人が多いということもあってか、彼らに合わせた住居も多い。

 背の高い木の上に家があったり、石やレンガで作られた建物があったり、中には落とし穴じゃないかと思うような家があったり。


 そんな町の端っこに俺達は向かっていた。


 陸続きの大地の傍らにある湖がキラキラと太陽の光を反射させ、そのほとりでのんびりしている鳥型モンスターを眺めつつ俺達は丘を昇る。


 町から少し離れた場所に建てられたそれは小さいながらも立派な店構えをしており、いかにも知る人ぞ知るといった雰囲気があった。


 まあ、悪い言い方をするならこんな所に人は来るのか、という話になるんだが。

 そんなこんなでようやくエレナの友人が営む店へやってきた俺達は、その扉を叩いた。


「やっと来たな、エレナぁ」

「久しぶりです、クレアさん」


 きゃっきゃっ、と楽しげに再会を喜ぶエレナ。

 クレアと呼ばれた友人も嬉しそうに彼女と戯れている。

 その証拠に猫みたいな耳と尻尾がぴょんと立っているよ。


「それより、後ろにいるそいつは誰だ?」


 まさかエレナの友人が亜人だったとは、と思っていると唐突に俺に視線が向けられた。

 まあ、彼女にとってみれば俺はイレギュラーな存在だ。

 警戒されてもおかしくない。


「ああ、俺は――」

「私の仲間です。ちょっと無理を言って手伝っていただけることになったんですよ」

「なるほどぉ〜。まあ、男手は欲しくなる場面が多いからちょうどよかったよ」

「よかった。じゃあ彼も一緒に住んでも大丈夫ですよね?」


「オッケーオッケー。なんかあったらギッタギタにするから大丈夫ぅ〜」


 ん?

 一緒に住むってどういうことだ?


「えっと、エレナさん? 一緒に住むとは一体どういう――」

「そのままの意味ですよ」

「いやちょっと待ってくれ」


 確かに見知った間柄で一緒に冒険した仲でもあるが、今はもうそれは関係ないだろ。

 そもそも、一つ屋根の下で一緒に住むのはマズい気がするんだが。


「大丈夫大丈夫。こう見えてもアタシ、通信護衛術一級なんだ。例え魔王でも簡単に一本背負いを決めちゃうよぉ〜」


 俺はその魔王相手に戦ってきたんだが……


「シンなら大丈夫ですよ。いろいろとわきまえていますし。あ、でもちょっとドジなところはありますね」

「それはどういう評価なんだ?」


 まあ、いろいろとツッコミどころがあるが俺が気をつければいいだけの話か。


「さて、商売仲間が増えたことだし早速営業開始しちゃおー」

「おー」


 こうして俺達はクレアの仕事を手伝うために住み込みで働くことになった。

 俺としても不安だらけなんだが、まあこの際は気にしないでおこう。


 さて、男である俺がやることといったら力仕事である。

 倉庫からアイテムを品出しできるように取り出しやすい位置に移動させるのが俺の仕事だ。


 ということで、俺は住居兼店舗に隣接された倉庫へ向かう。

 中はなかなかに立派であり、長期保存ができるように工夫していると一緒に移動してきたクレアが教えてくれた。


「いやぁ〜、この倉庫を作るのに結構出費しちゃってね。まあ、言っちゃえば予算オーバーってやつだよ。本当なら町中で営業するつもりだったけど土地もお金もなくてさ。だからここでお店を開いたってやつ。だけどそのおかげか意外と人が来てさぁ――」


 とまあ、計画が頓挫したためとんでもなく悪い立地で営業を始めたらしい。

 それはよかったのかどうなのかは俺にはわからないが、本人は困ってなさそうだからたぶん悪くはないんだろう。


 とまあ、適当な雑談をしつつ俺はアイテムが入った木箱を持ち上げ、店へと移動する。

 そして一通り掃除をして、一旦お役目ごめんとなった。


 案外、店の仕事も大変なものだ。

 清潔感を出すためにいろんな箇所に気を使わないといけない。

 特に店の顔である看板はよく見えるようにピカピカにしているみたいだ。


 これからはこういった仕事をしていくんだろうな。


 そんなことを思いながら俺は何気なく右手を見る。

 魔王に呪われ、封印された右手。

 エレナの力が付与された籠手のおかげで今のところは生活に支障はない。


 だが、冒険者として刺激的な日々を送ってきた俺には物足りない時間を過ごしている。



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