第三話「冒険者」
俺は数百メートル先にある、町に向かって道を頼りに歩いている。
そんな俺の後ろには、1人の可憐な魔王が付いてきている。
「ねえ、サー君」
「サ、サー君?」
初めてそんな呼ばれ方をして、俺は少し戸惑う。
あだ名で呼ばれたのなんて、生まれて初めてだ。
なんかあだ名で呼ばれるってのは、意外と嬉しいもんだな。
自分の事を、特別だと思ってくれているから、あだ名と言うものは出来るわけだし。
サー君か……サイトのサの部分だろうか。
俺もそれに習って、セーちゃんとでも呼ぼうかな?
いや、言いにくいから止めておこう。
「うん、サーヴァントのサー君」
「サイトの、サ、じゃねえのかよ」
「嫌だったか?」
思わずツッコんでしまった。
サーヴァントのサー君って、待てよ、サーヴァントって日本語で確か、召使か……
まだ俺の事、召使いにしたがってたんだ。
でも、まあ、それはそれでカッコいいし、俺の名前の頭文字が入っているから良いだろう、好きに言わせてもいいが……。
「まあ、それはそうと、どうした?」
話し掛けたと言うことは何かあるのだろう。
「今は町に向かっている最中だが、これからどうするつもりなんだ?」
「おぉ、聞いてしまうか? これから俺が考えた魔王討伐作戦を」
「もう、作戦が?」
「聞いて驚け、まずーーーー」
俺は一通りの流れを話した。
俺達はまだ、この世界に来て数時間しか経っていない、故にこの世界の情報が足りない。
なのでやはり、異世界に来たからには最初に行くべき場所、そう、冒険者ギルドである。
魔物が居ると言うことはどの町でも一つは在るはずだ。
そこなら、魔王の情報、異世界の知識、さらに、冒険者で稼げれば金の心配も要らなくなる。
まあ、あわよくば、セレネの力を使って上級クエストをクリアして、他の冒険者の女性にチヤホヤされてみたいと言うのもある。
だがも、勿論、魔王討伐が最優先だけれども………。
それで、どんどん強くなり、強い仲間を集め、万全の状態で魔王討伐に向かうと言うのが俺の作戦だ。
セレネもさっき言っていたように、魔力が違うせいで、魔力の回復が遅いし、空を飛べなくなってしまった、弱体化が入ったのだ。
万全の準備で行くに越したことはない。
「なるほど……さすが、サイトだな」
関心した眼差しで見られる。
おっと、さっきのツッコミのせいで、あだ名では呼ばなくなってしまった。
そんな事を思っていると、足元が影になる。
「よし、そろそろ着くぞ。最初の町だ」
町は壁が覆うような形をしていた。
壁が高いので、日が当たらない所もある、ここも影になっている。
多分、魔物が町に入って来ないように、高くしているのだろう。
だが、よく見るとひびが入っている、何かあったのだろうか……。
すぐ目の前には、町と外を繋ぐ門がある。
ここから入れるのだろう、その門の下には、鎧を着て、剣を腰あたりに身にまとっている兵士が2人ほどいる、門番だろう。
「こんにちは」
「こんにちは」
セレネが元気よく挨拶をすると、こちらを見てにっこり笑い挨拶し返してくれた。
よく見ると中年位の男たちだ、筋肉が凄い。
「おお、君達、旅人かい?」
「まあ、そんなとこです」
丁寧に会話してくれる。
まあ、旅人では無いのだが、こういうのは怪しまれないようにしなければ。
「いや、私、魔王だけど………」
「………ん? なんて?」
門番の人が、セレネの言った事に戸惑う。
こいつもしかして、馬鹿なのか?
魔力の事について俺も理解出来ない事を言っていたから頭もいいのか、と関心していたが、本当は馬鹿なのだろうか。
力だけの脳筋なのか?
いや、とりあえず誤魔化そう。
兵士は怪訝しそうに見ている、これは完全に警戒している。
人里に魔王が来たなんて、噂が流れたら混乱しかねん。
「ハハハハ……セレネは面白いな急に、魔王ごっこしだしてそう言う年頃か? 可愛い奴め」
「何だ、そういう事か、ハッハッハそう言う事を言いたい時期もありますもんな」
兵士達は、俺と一緒に笑う。
良かった……何とかごまかせたようだ。
セレネは笑われてほっぺを膨らませている。
「私……本当に魔王だし………」
俺にしか聞こえない声でそんな事を言う。
拗ねているようだ、こういう動作が全く魔王に見えないんだよな………。
「そう言えば、この壁、所々にひびが入っているけど、どうしたんですか?」
さっき思った疑問を聞いてみる。
もしかしたら、魔物の襲撃でこんなに傷付いてしまったのかもしれない。
「ああ、これですか? これは先ほど、謎の魔力反応がありまして」
「謎の魔力反応?」
「はい、丁度、あなた達が来た方向でしたかな、凄まじい爆発のようなもの見ませんでしたか?」
「爆発………」
ボルキシニアを倒したときの、セレネの爆発の事だろうか。
確かに、爆風が強かったけれど、魔法がある世界なら、時々そういう事もあるじゃなかろうか。
「威力は調節されていたのかは知りませんが、その魔力の密度、魔力を思うが儘に動かす、巧みな操作、そして、極めつけは、圧倒的魔力量。
魔力だけなら四大魔王も凌駕する力が、遠方より確認されてな。
北にある本国、イグス王国から近いうちに、聖騎士軍のラトス軍が送られて、調査が行われるらしいぜ」
「恐いよな、あの四大魔王を超える力って、なにも起こらなければいいだけどな」
「あははは………そう何ですか……何も起こらなければ良いですね」
俺とセレネは少し暗い顔で下を向いている。
やり過ぎた……完全にやり過ぎた。
そう言うことも視野に入れておくべきだった………。
しかも情報が多すぎる。
四大魔王を凌駕する魔力?
四大魔王ってなんなんだ………魔王4人もいるのか?
完全に普通の異世界物じゃない、普通は苦労して1人の魔王を倒して、お家に帰れる的なのじゃないのか。
4人も魔王を討伐しなきゃいけないとか、絶望感半端ないんですけど。
そして、イグス王国?
聖騎士のラトス軍?
一つの国動いちゃってるんですけど。
これたぶん、セレネ見つかったら、絶対にまずいことになるよな……壁の事聞かなければ良かった……頭が痛い。
「おい、どうした旅人さん、暗い顔して」
「いや、ちょっと、考え事を……」
うう……完全に目立っている。
見つかるのは時間の問題かもしれない。
「そうかい。そう言えば魔王ラファエル様の魔王幹部、アステル様がさっき出て行ったんだが、まだ帰って来てないな」
「確かにな」
兵士の2人がそんな会話を始める。
アステル?
そう言えば、ボルギジニアの下の名前だっけか。
「……その人がどうしたんですか?」
一様、会ったことが無いようにしておこう。
そしたら、あの魔法の犯人ってのはバレないだろう。
「いや、心配でな。俺達人間は魔王に酷い事をされて来て嫌いだったが、そんな俺達に優しくしてくれたのがアステル様なんだよ。
だから、さっきの爆発があった方向に向かって行かれていたので心配でね」
「……っすー、それは早く帰って来れば良いですね? な、なあセレネ」
「そうだな、サイト………」
兵士2人は首を傾げてこちらを見ている。
俺達の反応が少し変だったせいだろうか、でも仕方ないだろ。
ボルギジニア、魔王幹部でいきなり襲ってきたから、悪い奴と思ってたのに、この町では尊敬されてんのかよ。
「あれ? そっちから来たって事はアステル様に会わなかったのか?」
やばい、疑問の種がこちらに。
「あっ……そう言えばこの町に予定があるんだった、急がなきゃいけないんだったよな、荷物検査はすんだか?」
「あぁ、もう入っていいが」
「そう言う事なら」
半ば強引にそう言い、そそくさと門をくぐり、町の中へと入っていく。
こういうのはなるべく喋らず、静かに目立たずに過ごすんだ。
兵士の2人は顔を合わせて、首を傾げる。
「……何だったんだ?」
「さあ?」
2人は不思議に思ったが、特に問題ないと思い、いつもの仕事に戻る。
ーーー
「はぁ、危なかった………」
「そうだな、でもセレネがバレるのも時間の問題かもしれないぞ?」
「まあ、なんとかなるだろ」
そうかな………まあ、見つからない事を祈ろう。
でも、門番の話を聞いて色々と疑問が沸いてきたが、取りあえず当初の予定通りに事を進めるとするか。
「よし、じゃあ、ギルドに行こう」
「おお!」
セレネが手を握り、上へと手を掲げる。
ーーー
「ここかな?」
それは町の中心付近にあった。
中世的な建物で、他の建物より大きく、そこからは武装をした人達が出入りを続けている。
多分、いや、あれが冒険者ギルドであろう。
アニメや漫画で見たのより少し古っぽく、不気味だが、その方がまた味を出している。
口に出して言うのは簡単だが、やはりここに入るのには少し勇気がいるな。
ここに入る事により、俺はセレネに守られるだけではなく、自分で自分を守れるようにならなければならない。
それが冒険者と言うものだ。
「ふぅ…行くぞ」
ゆっくりと扉を開くと、目線が集まる。
いかついおっさん達がこちらを無言で見ている、普通だったらこちらに視線を向けるだけで見つめられる事はないだろうが、多分、俺のジャージや持ち物、それにセレネが気になるのだろう。
まあ、この世界に無いものだから仕方ないとは思うが、あまり目立ちたく無かったんだよな……。
歩いて奥に入っていく、そこには女の人がいた。
ギルドの受付人だろう、金色の明るい髪で、とてもスタイルが良い、一言で表すなら、ザ・外国美人、洋風な顔つきが何ともいい。
「今日はどんな要件でしょうか」
頭を下げて、こちらが何かを言うのを待っている。
勿論、要件は一つである。
「今日は冒険者になるために来ました」
「ギルド登録ですね。かしこまりました、少しお待ち下さい」
そう言い、奥へと入っていく。
やっぱり、契約書的な物を書くのだろうか。
当局は怪我をされても一切の責任を負いません的な奴かな。
「なぁ、セレネ冒険者について知ってる事ーーー」
「知らない」
「即答かよ、まあそんな気はしていたがな………」
こいつはあまり世間に詳しくない。
こういう所にも殆ど来たことが無いのだろう。
そんな会話をしていると奥からギルドのお姉さんが帰ってくる。
手には、水晶のような、水色をした球体の石を抱えている、あれをどうするのだろう。
「これは……コンジットか?」
コンジット?
セレネの世界にもこういうのがあったのか?
てか、さっき即答でギルドの事は知らないって、言ってたけどなんであの石で反応してんだろう。
セレネの世界の異世界でもこういう物があったのだろう。
「いえ、これは知識の魔法石と呼ばれる物です。
これに手をかざす事により、その人のステータスと呼ばれる物が見えます、そのステータスにより職業を選択できるようになっております」
「へぇ~、そこはゲームみたいで面白そうだな」
ステータスがある……ますます異世界って感じだな。
とてもワクワクする。
「では、お二人のどちらかが先にステータスを計らせていただきます。
手をかざしてください」
「じゃあ、俺から行こう」
そう言って、俺は前出る、そして手を振りかざす。
すると石は輝きを発する、とても神秘的で、気持ちがわくわくする。
やっぱり異世界転移って事は、他の人よりどこか秀でた才能とか持ってる可能性がある。
やはり、筋力が高ければ嬉しいな、動くのが楽になるだろうし。
後は魔力量が多くあってほしいな、やはり魔法をバンバンと打ち込みたい。
「おぉ、これは!」
キタキタキチャー、遂に俺の時代が来るって事だよな、そう言うことで良いんだよな!
何だろうか、この驚いたお姉さんの顔、まさか、全ステータスが凄まじいとか………あり得る。
「こんなステータス見たことが有りません、知力は平均より高いですが、それ以外のステータスはまるで駄目、魔力に関しては無いに等しいステータスですよ?」
「なっ…………」
べ、別に、ほ、本当は、期待なんて、これっぽっちもしてなかったし、異世界転移なら、今まで通りのステータスで来ることも有るだろうし、これから上げていけば良いし。
すると、セレネが俺より低い背を、つま先立ちで背伸びし、俺の頭をぽんぽんする。
悲しくなんかないやい。
明らかに俺の様子が落ち込んでいたのだろう、心配で撫でてくれたのかな。
べ、別に嬉しくなんて無いんだからね。
「はは、大丈夫、大丈夫、これから伸ばして行けばいいし」
「そうだな、まだレベル1だからね」
そうだ、まだレベル1、諦めるのはまだ早い。
弱ければ、弱いほど、成長も早いはずだ。
俺は強くなるのだ……前の世界のようにだらしなく終わる気は無い。
「そ、そうです。ここから、鍛え直したりすれば、少しは上がりますよ」
「鍛える? 魔物を倒して経験値を稼ぐの間違えではなく?」
「先ほどから、その、レベルという物は分かりませんが、ステータスを上げる方法は一応あります」
ギルドのお姉さんが言うには、この世界には勿論、魔物が存在しているが、レベルと言うものが存在していないと言う。
じゃあ、どうやってステータスを上げるんだ、と聞いたところ、体を鍛えたり、特訓などをして筋力、技力を高める事が出来るらしい。
だが、上がると言っても、俺がいた世界ように、筋肉が育って行く、つまり筋トレしなければ行けないのだ。
そして、魔力、これは生まれた時に殆ど、決まっており、鍛えると少し増える事が有るらしいが、雀の涙ほどらしい。
なんともリアルな異世界だろう、つまり、楽にステータスを上げる方法など無いと言うことだ、この世界も前の世界と変わらず、元々、才能を持った者が勝つ、クソゲーだ。
「はあ……これからどうしよう………」
「まあ……でも鍛えれば、少しは上がるらしいし。私も魔力の回復が遅くて、時間が必要だから……待ってるよ」
と、俺を慰めながら、次はセレネが知識の魔法石でステータスを計る為に、手をかざす。
すると、石はさっきのように、光を放つ、だが、さっきよりだが、光が強い気がする。
俺だけ、だろうか?
すると、次の瞬間、魔法石は四方八方に割れ、粉々になる。
何が起こったんだ………急な事でとてもびっくりした。
ギルドのお姉さんは目や見開き、驚いて声も出ていない。
「これはどういう事だ?」
「やっばり、コンジットじゃないか」
また、謎の物の名前を言う。
だからコンジットって何なんだよ、と思うが今は、そんな事よりどうなったか気になる。
「はは………これ一個で金貨、1000枚なんですよね、ははははは…………」
放心状態でそんな事を言う。
金貨の値段がどれくらいか、分からないけど、1000枚って、この石どんだけ高いんだよ。
でも、この割れた石、どうしよう。
「ま、まあ、こういう事もありますよ………」
「そんな……」
「この、ギルドにはもう一つあるので気にしないで下さい……」
「そ、そうですか……」
気にしないでと言うなら、遠慮なく気にしないが……そう思っていると、小声で「私の給料、何ヶ月分だろう……」とかなり落ち込んだ声で言っている。
本当、すんません。
「と、取りあえず……そこの女の子は、えっと…魔法石では計れないので、カードだけ発行しておきますね」
「私は、もういいのか?」
「はい…魔法石が割れたと言う事は、どの職業にも就けると思うのでお好きにどうぞ」
「へぇ、魔法石が割れると凄いんですか?」
「はい、魔法石が割れたと言うことは、ステータスがカンスト、測定不能と言うことですので」
流石は、魔王と言うべきか、ただ、口がでかいだけのガキじゃ無かったと言うわけだ。
でも、悔しいな、こんな女の子に負けるなんて……。
セレネがこちらをドヤ顔で見てきている。
なんとも、ウザイ顔だ。
こちらを煽ってきているのであろう、後で道中に置いて行こう。
「では、そちらのスズキ・サイトさん? 変わった名前ですね。
こちらに来て職業を選んで下さい」
初対面で、名前をディスられたんですが、俺からしたら、この世界の人の名前が、変なんだけどな。
セレネ・ルシファルトやら、アス何とか・ボルギジニアやら、変わった名前が数々だ。
俺は言われ方へと向かう。
さっき、石にかざしたときに、出たカードが、変わった石の上に乗せられている。
これも魔法石の一種だろう。
「えっと…これで職業を選ぶんですよね」
「はい、説明致します。これに先ほどのステータスを照らし合わせ、自分が出来るであろう、職業を幾つか記してくれます。
その中から、一つ選ぶ事により、職業に就くことが出来ます。
選んだ職業に必要な、ステータスを少しだけ上昇、しかも、鍛える事でその職業で、出来る技を獲得していく事が出来ます。
誰かに教えてもらうのもあり、自分で鍛えて、自分だけの技を開発してもあり。
そして、バランスの良い、職業同士が組み、パーティーを作り、クエストをこなしていく。
職業は、極めれば、極めるほど可能性が増えて行くのです」
「お、おぉ………」
レベルがなかったり、色々とゲームと違う部分は在るけれど、やっぱり異世界。
本質的な物は、ちゃんと冒険者だ。
「それでは、説明は済みました。職業をお選び下さい」
「はい!」
手をかざす。
すると、ゲームのアイテム画面のように、目の前に何かが出てくる。
おお……凄い。
俺が驚いた様子を見て、セレネが首を傾げているから、俺しか見えていないんだろう。
さてさて、どんな職業に就けるのかな?
やっぱり、異世界なら、魔法は使ってみたい。
俺には魔力が殆どないらしいが、ステータスが少し向上するらしいし、やっても良いだろう。
どれどれ?
目の前には三つの職業が出てきた。
どれも、低職業のマークが付いている。
まあ、仕方ない、俺のステータスは雑魚なのだから、やれる物が少ないのだろう。
一番増しなのを選ぼう。
えっと……一つ目は、盾(低)、自分を盾に仲間を敵の攻撃から守る役職、攻撃力が低く、基本的には前衛、冒険者の職業の中で一番危険な位置にある。
これは無理だな、だって死にたくないし、敵のサンドバックになれって事だろ……嫌だよ痛いのは。
二つ目、魔法使い見習い、前衛をサポートし、戦況を優位に進める役職、基本的に詠唱が必要なため、後衛でサポートする。一番安全な位置にいる。
魔法使い見習いは、初級魔法以外、覚えることが出来ず、使えない。
これは良さそうだが、初級魔法しか使えないのか……それはちょっと悲しいな。
三つ目、冒険者、前衛、中衛、後衛、どこに置いても良い役職、基本的に技が定まっておらず、様々な技を取得出来るが、どれも極められず、相手に教えて貰わなければ攻撃手段が手に入らない。
どんなにステータスが低くても、誰でもなれる役職。
後から、役職の変更が可能。
これは……初心者パックのような物だろうか?
何だ、職業、冒険者ってそのままじゃないか。
何だか分かりにくいな。
でも、この三個の中なら、とても魅惑的かもしれないな。
「あの、この冒険者と言うのは?」
「あぁ、それは何というか、誰でもなれる職業ですけど…その……簡単に言えば、他力本願な役職ですかね」
「はあ、つまり1人では何も出来ないという事ですか?」
「そうですね。まず技を手に入れるのが難しかったり、魔法を教えて貰っても、その二倍の魔力料が必要だったりと、色々抜けている所があって、あまりなる人は居ないですね」
なるほど…だから、職業の変更が可能なのかも知れないな。
うーん…どれにすべきか……悩む…なら、後で変更可能な冒険者を選んでおくか。
手を伸ばし、冒険者を押す。
「それでよろしいのですね」
「はい!」
「分かりました」
そう言うとカードの下の石が何かを流すよう光る。
そして、光が落ち着くと、カードを持ち、俺に手渡しして来る。
「これで、登録完了です。これであなたは、冒険者の仲間入りです」
「おぉ、これが」
次はセレネが俺と同じように、職業を選ぶ。
どれでも良さそうな顔で適当に何かを押す。
そして、また、石は光を上げる、そして、セレネもカードを手にする。
「これが冒険者カードか…ほーん……」
物珍しそうに見ている。
だが、これで2人とも冒険者だ。
「セレネ、明日からバンバン働くぞ!」
「私、魔王何だけどなぁ…」
そう言いながら、俺とセレネは冒険者ギルドの扉を、勢いおく開いて、町へと、出て行くのであった。