表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様やりすぎです  作者: 御霊ユナ
第1章 異世界転移編
3/16

第二話「セレネ・ルシファルト」

 今、俺の前には、自爆寸前の魔王幹部がいます。

 何でこんな事になっているかって?

 俺も正直よくわからない。


「で、サイトここからどうやって防ぐんだ」


 目の前のなんちゃって魔王、セレネが聞いてくる。


「それはだなーーー」


 セレネの耳元で俺の考えた、作戦を伝える。

 すると、セレネは驚いた顔をした後に、こちらを心配そうな表情で見てくる。

 本当にその作戦で大丈夫なのか、みたいな顔をしている。


「大丈夫だ、俺を信じてくれ」


 俺は自信満々の声でそう言い、セレネの顔を見て笑う。

 セレネはその表情を見て、少し安心したような顔をして頷く。


「よし、じゃあやるぞ」

「うん」

「お前達、何の話をしているんだ!」


 男から、空気の斬撃のようなものがこちらに飛んでくる。

 セレネが斬撃に手を向けて、斬撃を消し、俺を守る。


「あいつ、自爆する寸前まで邪魔する気だな」


 どんだけ、俺達を殺したいんだよ。

 そんな事を考えていても、ボルギジニアは攻撃を辞めない、ずっと空気の斬撃を飛ばしてくる。

 だが、それらを全てノールック、片手で俺を守る。

 流石っす、セレネ先輩、マジパネェっす。


「サイト、お前の作戦を実行するために数十秒魔力を溜める時間が必要なんだが、その間、私はサイトを守れないけど大丈夫?」


 俺を守れないか……まあ、俺が無茶な要求をしているんだ、魔王にどんだけ力が在っても、流石に時間は必要か、仕方ない。

 ボルギジニアがあの状態で攻撃を撃てると考えていなかった俺が悪い、セレネの魔力が溜まるまで俺が頑張るしかないか。


「分かった、準備してくれ」


 そう言い、俺はセレネを置いて走り出す。

 ボルギジニアは、セレネと離れた俺を見て、こちらに意識が飛ぶ、そして俺の方に手を向ける。

 まあ、片方は攻撃しても意味がない魔王、片方はただの一般人、離れたなら俺を狙うのは当たり前か……。


 ドン!


 俺のすぐ後ろに斬撃が当たり、地面が削られる。

 とんでもない威力だ、一度でも当たったら間違いなく死ぬ。

 これを片手で消していたセレネはどうなっているんだ。

 そんな事を思いながら走り続ける、ボルギジニアの周りをクルクル回るように走る。


 だが、目の前に草むらが見える。

 さっき、俺を襲ったウサギが出て来たところだ。

 草むらに入る、とても走りづらいがそんな事より、体力の方がやばい。


 前の世界では引きニートで運動なんてろくにしてなかった、そのツケが今回ってくるとは、これならしっかりと運動していれば良かった。

 だが、そんな事は気にせず、パンパンと、斬撃を飛ばして来る。

 まだ、セレネは準備出来ないのか……思ったより長い。


 俺は攻撃を避けるために全力疾走、流石にきつい。

 だが、そろそろ草むらを抜け出せる、さっきよりは楽になるぞ。

 

 トン!


 そんな音が足元から聞こえると、同時に俺の視界が下へと落ちてゆく。

 下には、ウサギが縮こまっていた、それに躓いたのだ。

 油断していた、ボルギジニアにばかり気が行って、辺りを見ていなかった。

 多分だが、俺を襲わなかったうさぎが草むらに隠れて残っていたのだろう、なんてツイてないんだ。

 

 転び、俺は体制を崩し動けない。

 だが、そんな事を気にする事なく、斬撃が飛んでくる。


 この世界に来てからツイてないことばっかりだった、兎の魔物に襲われるし、魔王来るは、魔王幹部来るは、ここでもそれが出るなんて、俺の人生、異世界でもクソじゃねえか……。

 そんな事を思い、俺は目を閉じ、死を覚悟する。


 ドン!


 音が響き渡る。

 地面が削れる音だ。

 俺は攻撃を受けて死んだのか……妙にフワフワする。


「ふぅ、危なかった」

「え?」


 セレネの声が横から聞こえる。

 目を開くと俺はセレネに抱えられて空の上にいた。

 本当に浮いてるんだ。


「ギリギリで掴めたよ」


 そう言いセレネがこっちに笑顔を向けてくる。

 ぶつかる瞬間に俺を掴み、空へ飛んだようだ。

 やばい……惚れてしまいそうだ。


「セレネ………」


 俺は涙目でセレネの顔を見る。

 死ぬ覚悟でいたが、救われ、ホッと安心する。

 でもこれで準備が整ったって事だ。


「じゃあ始めるぞ」

「ああ、魔王様、やってくれ」


 俺は涙が出そうだった顔を腕で拭き、後は全てをセレネに任せる。

 セレネは男に向かって手を広げる、その瞬間、男の周りを炎が囲む、まるで炎の壁だ。


「なんだこれは? 貴様ら何をした」


 辺りを見渡している。

 火に囲まれとても戸惑っている。


「ただ囲んだだけさ、ただし、お前の自爆と同じ位、もしくはそれ以上の炎魔法だけどな」

「どういうことだ?」

「つまり、相殺だ」


 そう、同じ位の攻撃がぶつかり合うことで威力を相殺し、爆発の被害を抑える、囲む事により、他の所に爆発の余力が飛ぶのを抑えるこれが俺が考えた作戦だ。

 力と力のぶつかり合い、そして、囲む事で被害を最小限にする。


「つまり、これで被害が出ないって事だよな」


 セレネが聞いてくる。

 そして、最後に全てを包み込む。


「そうだぞ。よし、仕上げだ」

「あぁ、任せろ」


 セレネはボルキジニアに向かい、手を伸ばす、その手の先からは何重もの複雑な魔法陣が現れる。

 その周りの空気は、蠢き、唸り、冷たい、今からどれほどの攻撃が来るのか想像も出来ない。

 俺がセレネに頼んだのは、あの自爆を飲み込む程の攻撃をボルギジニアに当ててくれと、頼んだが……どれほどの物なのだろうか。


『この世の理を全て読み解き、我に絶大な力を与え、かの者を滅ぼせ』

『インフェルノ!』


 セレネが魔法を詠唱したと同時に、辺りにあった魔力が全てセレネの手へと流れ、そして広げていた手を、ギュッと握り締めると、魔法陣もしまわれ、次の瞬間目が痛くなる程の明るさと騒音が辺りを覆い尽くす。

 ボルギジニアの周りが炎に包まれ、ボルギジニアは声を上げる。

 骨まで響き渡る、セレネの攻撃魔法は今までの魔法とは比べ物にならないほどの衝撃と熱さだ。

 爆風で此方の肌が灼けるのではないかと思う。


 だが、さっき、張った炎の壁がなるべく被害を押さえてくれている。

 でもそれにしても凄まじい、俺は飛ばされそうになるが、しっかりとセレネが掴んでくれている。


 これほどの魔法を見ると、こう言いたくなってしまう、魔王様、やりすぎですと……だが、声に出さず心の中だけにしておこう。


「じゃあな、ボルギジニア」

「だからその呼び名辞めろ!!!」


 火の中からボルギジニアの声が聞こえる。


「セレネ確かに、言いにくいから略して、ボルニアはどうだ」

「良いね、じゃあな、ボルニア」

「良くないわ!!!!!」


 それがボルギジニアの最後の言葉だった。

 セレネの魔法は数十秒続き、その後は勢いを失い、煙だけが残り、辺りは完全になくなる。

 その静けさに少し、怖くなるが次の瞬間にセレネが喜びの声を上げながら、地面へゆっくりと降りていく。

 

「やった!!! 誰も死んでないよ、すごい! サイトもしかしてやるな」

「異世界の事ならオタクに任せろ」


 それにしても、派手にやったようだ。

 魔法を撃った地面はでこぼこで焼けている。


「まあ、とにかく、また助けてくれてありがとうな」

「私が巻き込んじゃった形だけどね」


 地面に着くとセレネは俺を降ろす。

 さて、この後どうするかだな、俺は本当に魔王を倒すつもりはないから、セレネについて行く必要がないつまり、ここでお別れってことだな...

 あまり長く一緒にいると、別れが寂しくなってしまう、それをセレネも分かってか、先に声を出す。


「まあ、じゃあ私は魔王を倒す為に行くね。

 サイトは望んでいた、異世界のんびり生活? ってのを頑張って」

「……あぁ」


 俺は何故か少し寂しそうにそう言ってしまった。

 俺はそれを望んでいた筈なんだかな……。

 一度、一緒に魔王幹部と戦ったのだ、会ったのはさっきだが、とても親近感が増してしまったのだろう、もう会うことは無いはずなのに...…。


 お別れしたくない相手は前の世界では居なかった。

 喋っていると、気まずかったり、話が続かないからいつも一人になりたかったのだが、今は決してそんな事は思わない。


 セレネはピョンっと飛び跳ねる、そして首を傾げもう一度ピョンと飛び跳ねる、またもや首を傾げ、ピョンピョンと連続でジャンプする。

 そんなセレネを見て、こいつなにしてんだ、という顔で見る。

 蛙みたいでかわいい動作だけど、端から見たら変人だな。


「あれ? おかしい、飛べない...」

「大丈夫か?」

「魔力が違う…」

「え?」

「ずっと違和感があった……私がいた世界と魔力の種類が違うんだ」


 確かに、セレネはこことは違う異世界から来たから、魔力が違う事くらいあるかもしれない。

 だから、上手く魔法が使えないという事なのか。

 そのせいで飛行出来なくなってるのか。


「私のスキル、魔力転換が使えないって事は魔力を直接体内へ吸って、その魔力を転換させて使うしかないか……うーん」


 なにやら難しいことを言っている、困っていることは分かるが、それ以外は全然理解出来ない。

 俺が意味の分からなそうな顔をしていたのかセレネが簡単に説明してくれる。


「まあ、要するに、魔力の補充にとても時間が掛かるって事」

「なるほど」

「でも、飛べなくなった理由には成らない、何故だろう……」


 飛べなくなってしまったと言うことは、歩いて魔王城まで行くしかないようだ。

 セレネに行き方が分かるのだろうか……。


「この先、どうしよう! 歩きだし、道も分からないし...私本当に帰れるのかな……あ゛ーーー!!!」

「落ち着け!」


 会った時と完全に逆だな。

 取り乱し過ぎて、逆に怖い。

 さっきまで、あんなカッコ良く魔王幹部と戦っていたのが、夢なのではないかと思うぐらいだ。

 しかしそうな事を思っていると、セレネの目が涙目になる、本当に焦っているのであろう。


「でも……」


 セレネは下を向いて、とても落ち込んでいる。

 まあ仕方ないか、力に少し制限が掛かった上に、この世界のことをなにも知らないし、どうすればいいのか分からないんだもんな………。

 そんなセレネの顔を見ていると、勝手に口が動き始める。


「あー、もう仕方ないな」

「え?」


 涙目で顔を上げ、こちらを見てきている、その姿はさっきまで魔王幹部を圧倒していた、魔王には到底見えない、とても可愛らしい女の子だ。


「俺も魔王を倒して、富、名声、力、この世の全てを手に入れた男になって、ウハウハの異世界ライフが送りたくなって来ちゃったよ」

「なんだ、そのどこぞの海賊王は」


 まあ、俺もさっきみたいに魔物に襲われる心配だってあるし、セレネと一緒にいた方が安全だろうしな。 

 俺の異世界生活の1ページに魔王討伐が在っても良いかも知れないな。

 ようやく、イベントが動き出したんだ、まだまだここからだもんな。


「じゃあそういうことだから、これからよろしくな。

 改めてスズキ・サイトだ」


 手を出し、握手をしようする。


「ああ、魔王である、私の使用人としてな」


 セレネはそれに掴み返し、握手をする。


「だから使用人になった覚えはねえって」

「え? じゃあなに?」


 確かにそう言われると、何だろうな。

 魔王と一般人だもんな、知り合い? 顔見知り? 仲間?

 まあこの中だと仲間だな、だけど魔王と仲間ってなぁ...…うーんなんか良い感じの仲に...…。


「友達?」


 俺は少し、照れくさそうに言う。

 前の世界では学校で友達と呼べる程の人は居なかった、引きこもってからも誰もと会わないでゲームやら、アニメやらをみて、人と関わることがなかった。

 だから友達と言うのが、少し照れくさい。


「友達!」


 セレネはとても目を輝かせ、こっちに向かってくる。


「友達、私達は友達なのか?」

「まあ、一緒に戦いあった仲だしな」

「そうか、私達は友達だ!」


 とても嬉しそうにそう言い、とてもテンションが上がっている。

 俺も内心とても嬉しい、初めて友達と言えるような人が出来たのだ。

 セレネも、友達が居なくて1人だったのかな、だからこんなに喜んでいるのか、でもミーニャって人がいるらしいし、魔王だからそんな訳ないか。


「改めて私からも、セレネ・ルシファルト、これからも宜しくね」

「おう」


 さて、改めて自己紹介が終わった。


「じゃあ、俺達の目標、打倒魔王!!!」

「おー!!!」

「じゃあ取りあえず、情報収集がてらあの町まで行ってみるか?」

「うん」


 俺達は最初の町に向かって歩き始める。

 俺は手に持っている、お菓子入りのビニール袋を握りしめ、とてもワクワクした気持ちで向かう、俺の物語が今始まった気がする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ