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魔王様やりすぎです  作者: 御霊ユナ
第2章 仲間集め編
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第十五話「人生の分岐点」

「アマテラス……あの日本神話の?」

「知っているのかい、なら話が早い」


 その名前を聞いて真っ先に思い浮かべたのが、天照大神(あまてらすおおかみ)という日本の神様である。

 前に話したとおり、俺にも中二病の痛々しい時期があった……その時に少し神について調べたのだが、アマテラスと言えば、イザナギとイザナミの子供で、太陽神、農耕神など沢山の神格を持つと言われている。


 確か、アマテラスにははっきりとした性別は記されて居なかったが、女神と解釈されている……本当にこの女性がアマテラスで有ってもおかしい話ではない。

 それにこの状況で嘘を付く理由もない、ここは信じよう。


「考察は終わりかい?」

「あ、まあ一様」


 心が読めるというのはとても便利な事だな……聞かれている側からしたら溜まったもんじゃない。

 アマテラスは此方を見て、また笑う、全て見透かされている、という感覚が失礼かもしれないが、やはりちょっと気持ちが悪い。


「まあ、ミタマくんも私のこの態度を気に入らないようだし、別に良いよ」

「ありがとう御座います」

「そう、かしこまらなくて良いよ、ちょっとした長話をするんだ。

 リラックスしてそこの椅子に荷を降ろして、お喋りをしよう」


 そう言い、先程アマテラスが座っていた、光を放つ椅子と同じく光を放つテーブルが現れる。


「うーん……もうちょっと楽しくお喋りが出来るところにしようか」


 すると、辺りは一瞬にして綺麗に整えられた、芝が広がる平地に変わり、椅子やテーブルも雰囲気に合わせ、少し高そうな西洋風の美しい物へと変わる。

 その上には高そうな、ティーポットと空のティーカップが置いてあり、アマテラスは手を椅子の方へ向け、座ってどうぞ、と合図する。


 俺は言われた通り椅子に座ると、アマテラスはティーカップに紅茶を注ぎ、俺に渡してくる。

 神様に入れてもらった物だ、物凄い御利益が有りそう。


「さて、じゃあ何から話そうか……質問とかある?」

「質問ですか、それなら何故、俺…私は此処へ呼ばれたのですか?」

「フフフ、敬語じゃ無くて良いよ、ここでは皆平等なのだから」

「そうですか」

「こら、いったそばから」


 あれ……意外と神様ってラフなんだな、とても接しやすい。

 アマテラスの方をみると、明らかに先程より頬が緩んでいる、褒められたのがそんなに嬉しかったのだろうか。


「あぁ……話がずれてしまった、ええっと何故、君が此処に呼ばれたかだったね」

「はい」

「それはね……セレネちゃんの異世界転移による、もう一つの異世界リヒトへの影響かな」

「セレネが?」

「ああ、セレネちゃんは本来、リヒトの歴史に大きく影響を与えた人物なんだ。

 だからセレネちゃんの転移の結果、色々とおかしくなっちゃってるんだ」


 つまり、セレネは今、半年以上異世界にいる……その間、向こうの世界でセレネが居ないせいで大きくリヒトの歴史が変わってしまったと言うことか。


「そう言うこと、理解が本当に早いね……いや、元の地頭が良い、それなら学校でも苦労しないだろう、何で引きこもったんだい?」

「今はそれは良いだろ」


 少し、口調が強くなる。

 急に俺の口調が強くなったせいか、アマテラスは申し訳無さそうな顔になる。

 やはり、元の世界の話をされると、嫌な気分になる……俺だってなりたくてなった訳じゃない。


「すまない……」

「良いんだよ、それより続きを話そう」

「あぁ……」


 アマテラスは手元に、俺達が異世界に来た原因となった歪みの様なものを出す、その中には盾と木刀を持った男の子や耳の付いた赤色の髪の少女に、どことなくセレネに似た金髪で真紅の瞳を持つ少女が見える。

 

「この子達は?」

「世界の希望?と言うのかな、その方がかっこいいしね」


 世界の希望か……他の異世界の勇者なのだろうか、勇者で盾と剣って傭兵のような防具をしているな。

 それに、まだ幼いので、この子が世界の希望になるとは到底思えない。


「それはね、この子はまだ種に過ぎない、ここからもっと強くなる、しかし、私はミタマくんが立派に育つのを見ていたのだけれど……私の予測世界のどの未来に置いても彼は死ぬ運命にあった」

「予測世界、未来視のような物だろうか?」

「いや、そんな便利な物じゃないよ、只、複数の未来を予想するだけで、どれが本当に起きるのかは分からない、未来に絶対は無いからね」


 そう言うことか、複数の未来を見る事が出来、その中から一つが本当の未来となるか……どれが本当の未来か分からないが複数の未来を見て、最悪の可能性を避ける事が出来る、それは凄いな。

 未来は絶対じゃないか……。


「それでね、さっき話した通り、彼の未来はどれも死ぬ未来で私は頭を抱えていた……しかしそんな中でセレネちゃんが転移した結果、大きく過去が変更されたんだよ。

 彼はね、本当はエノメちゃんに出逢う事はなく、悪魔と言われる化け物に殺されたり、それにこの子」


 先程、俺がセレネに少し似ていると言った、金髪の少女を指差す。


「本来産まれて来ない、存在だった、なのに青龍に殺される筈だったミタマくんを救った……他にも会わない筈の人物と関わったりと、大きく未来は変わりミタマくんの死ぬ未来は避けられた」


 そして、俺に指を指す。


「それがセレネちゃんの存在に気付いた理由、そして彼女を追うと君を見つけたんだよ」

「それで俺と今話していると」

「ああ、君とセレネちゃんの存在を半年間も気付かなかったよ」

「つまり、俺達の異世界転移は予想外の出来事って事ですか?」

「簡単に言えばそうだね」


 異世界転移のお話、この世界では百年に一度の割合で勇者が召還される、そのどの勇者の伝記にも最初にアリスと言う神の存在が書かれている。

 しかし、俺が異世界転移をした時にそんな存在は現れなかった、つまり俺は勇者として転移させられた訳ではないと言う事は何となく感じていた。


「そう、普通、勇者でなければ、まず異世界に行くこともない、しかし君やセレネちゃんは勇者ではない」

「ですよね」

「つまり、私とは他の誰かの意志が介入していると私は考えている」

「誰かとは?」

「他の神の存在……」


 アマテラス以外の神が、俺達を何かの目論みで異世界転移させたと言うことか……しかし、何故だろう、セレネだけならともかく俺を異世界転移させた理由は?


「そう、謎が多すぎる、だからね私はその誰かの考えを逆手に取ろうと考えた」

「どうやって?」

「今の未来は私にとって一番都合の良いものだ、これ以上の歴史の改ざんは不要、そこで君とセレネ君で四大魔王を倒して元のいた世界に帰って欲しい、それだけだ、簡単だろ?」


 確かに、そうすればアマテラスに取って一番都合の未来になるのかもしれない、しかし、その策は一つの欠点がある。


「全然簡単じゃないだろ! 半年で未だに魔王どころか、魔王幹部すら討伐できてないんだぞ。

 それに俺はもう死んだんだぞ……あの大量の出血で助かる訳がない」


 まあ、俺が居たところで、魔王と戦う戦力になるとは思わないけど……それでもセレネと一緒に戦いたかったな。


「あれ? 言ってなかったかい? 君まだ生きているよ」

「え? あんな怪我をしたのに?」

「うん、君が気を失った後すぐに、セレネちゃんの判断であの三人は外に出たんだ、そこで血だらけの君を発見、ラプラスちゃんがすぐに治癒に向かった、タイミングが良かったんだ、あと十数秒遅かったら本当に死んでいただろうね」


 俺、生きているのか、そう思うと体がすっと軽くなる、心のそこから活気が湧き上がる。


「フフフ、良かったね」

「ああ」

「それじゃあ、続きに入るけど、君達には魔王討伐をして元いた世界に戻って欲しいんだ」


 四大魔王の討伐か……しかし、その為にはその幹部達を倒さなければ魔王に攻撃することもままならないと言うし、それにその幹部達がいる場所も分からない。


「そこは任せておくれ、君やサイト君の動向を観察すると同時に探しておいておくよ」

「本当か?」

「ああ、君達を見ているから見つけるのに少し時間が掛かるけれど、出来るよ」


 良かった、アマテラスが場所を教えてくれるのなら、確実に前よりも難易度が下がった、それに時間の短縮になった、まだまだ倒すには力不足だけれど、可能性が格段に上がったと思う。


「じゃあ、私との契約を結ぶと言うことで良いかな?

「契約ってそんな大それた物じゃないだろ」

「……いや、これは3つ世界に大きく関わる出来事だ。そして私にとってもな……」


 濁したような言い方をしているが、あまり聞いて欲しそうにしていないので一旦、俺の使命がとても大切だと言うことで置いておこう。

 話を変えるとするか。


「よし、この話は良いとして、この後だ……セレネ、ボルギジニアの存在が聖騎士に気付かれたんだ。

 戻ったとして最悪、セレネは魔王として勇者達に討伐されるかもしれない、何かいい案はないか?」

「そうだね、世界の事は今は置いておこう」


 それはそれで、神様として良くないだろ。

 アマテラスは舌をちょっとだけ出して、此方に笑みを見えてくる……。

 アマテラスは背が高く、モデルのような体系で豊満な胸も相まってお姉さん系だと思っていたが、少し可愛いと思ってしまった。


「こ、こほん、それはともかく、セレネちゃんの件だね」

「ああ」

「正直言って今のセレネちゃんの様子が確認出来ないから、予測未来を使うことが出来ないのだよ」

「?」


 セレネの様子が確認できないとはどういう事だろうか、先程俺に見せた、歪みのような物からセレネを映し出して確認すれば良いのに。


「それが出来ないから困っているんだよ」

「なんで出来ないんだ?」

「多分だけど、君が気を失った後に何かあって能力を解放したのかも知れない」


 深刻そうな顔でアマテラスはそう言う。

 セレネ達の身に何か起こったのか!? それなら早く戻らないと……。


「そう焦るな、セレネちゃんが本気を出したのだから大丈夫だろう。

 彼女が本気を出せば、私だって勝てない、だから安心しろ」


 神様より強いのかセレネは……でも、セレネは俺が思っている以上に強いのかもしれないが、あいつはあいつで抜けている所がある、一人にするのは不安だ。


「大丈夫、彼女は魔法やスキルを使わなくても数体の黒龍(ブラックドラゴン)を相手に出来る力があるが、それ以外に彼女を最強たらしめるスキルを複数所持しているからね、どれも神級スキル……いやそれ以上の能力を持っているから」

「スキル、セレネの世界にある物だよな、こっちの世界では使えないんじゃ無いのか?」

「確かにセレネちゃんはこっちの世界では使えない、だがもう一人が本気を出せば使えるよ」


 もう一人は使えるってどういう意味だろうか、普通に考えたら言い方的にセレネが二人いると言っている様なものじゃないか。


「少し違うが、まあそう言うことだよ」

「え?」

「私にも何故かは分からないが彼女の中には容姿は瓜二つだけれど性格の真反対のもう一人の彼女いる」


 もう一人のセレネがいるのか……そう言えば、前の時にセレネを起こそうとしたときにパンツが見えそうで少し覗いたときに、いつもと雰囲気が違い、全くの別人かと思った事があった。

 もしかしたら、あの時のセレネはもう一人のセレネだったのだろうか……。


 そう考えていると、アマテラスがゴミを見るような目で此方を見てきていた。

 何かおかしなことを言っただろうか。


「何がおかしなことを言っただろうか、だい。

 セレネちゃんのパンツを見ようとした時点で君は最低だよ」

「いや…その…結局は未遂なので見逃して貰えないかなと……」

「もしも君が見ていたら、神の計らいで地獄に落として上げようと持ったけど、まあ今はそれは置いておこう」

「はい……」


 申し訳無さそうにそう言い。

 心の底から、アマテラスに感謝する。


「まあ、良い、話を戻すけどそれがもう一人のセレネちゃんだよ。

 彼女が今、目覚めたから私はセレネちゃんの様子を確認できないんだよ。彼女の一つのスキル、無想天性による物でね」

「何だその北斗の拳で出てきそうな、名前のスキルだな」

「そのスキルはね、この世のあらゆる事象は彼女には効かない」

「というと?」

「彼女にあらゆるものが干渉する事が出来ない。

 簡単に言うなら、私が本気を出せば一瞬にして生きている生物、惑星、世界その物を消せるのだけれど、彼女にはそんな事効かないし、関係無い、誰一人として彼女を殺すことは不可能」


 アマテラスが物騒な事を言うが、それを覆すほどのセレネのチートっぷりに驚く。

 存在を消す、この世から消滅させようとしても、セレネには効かないって事は、神ですら、セレネには勝てないのか。


「そう、まず攻撃を当てることすら出来ない。

 私がセレネちゃんの様子を見ようとしても彼女がそのスキルを使っている限り此方からの干渉は不可能、だから今、どうなっているかなんて分からない」


 俺が直接行って、確認するしかないと言うことか……仕方ない。


「すまないね、力になれず」

「良いよ、あの馬鹿がチート過ぎるのが行けないんだ」

「よし、これで大体の方針は決定したね。

 戻ったらセレネちゃんを何とかしてくれ、聖騎士の件は任せてくれ、と言うより何とかなるよ。

 ボルギジニア?と言ったかね、その人が何とかしてくれる」

「どうやっーー」


 唇を指で押さえられる、そして此方に笑みを見せてくる。


「これは助言だよ。私を信じて」


 そう言い、アマテラスは立ち上がり、指を前に出し、空に円のような物をなぞると、そこからある空間が現れる。

 その奥は白い光を発し、よく見えない。


「もう治療が終わったようだし、ここに入れば元に戻れるよ」


 さっきのアマテラスの話を詳しく聞きたかったのだが、これ以上何も喋ってくれなさそうなので、仕方がない。

 俺は光の方へと歩き出す。


「あっ! そうだ、私の願いを聞いてくれるお礼に少し魔法のアドバイスをしようか。

 魔法はイメージだよ、自分の思う形でどんな形にだって変えることが出来る、それを頭の中に入れて、魔法を使うと良いよ」


 魔法はイメージか、今度魔法を使うときに頭の中に入れておくとしよう。

 これでもう全部だな。


「そうだね」

「そっか、じゃあまた後で」

「ああ、時々、君の前に現れるよ」


 そう言って、俺は手を振りながら、光の中に進んでいく。

 その背中をアマテラスは優しい眼差しで、見送ってくれている。


「頑張ってね」


 そう言い、光の門は外からゆっくりと閉じていき、アマテラスの姿は完全に消える。

 そして、俺の気もゆっくりと失われて行く、目を閉じる。


 辺りが真っ暗になり。

 俺の意識は完全になくなる。

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