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魔王様やりすぎです  作者: 御霊ユナ
第2章 仲間集め編
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第十一話「謎の回復魔術師」

遅くなってすみません。

 ギルドへと帰還する。

 ギルドの扉を開いた時、受付のお姉さんは驚いた顔で此方を見て、近付いてくる。


「サイトさん、も、もしかして爆弾魔を全て討伐したんですか?」

「完全に全てかは分からないけど、はい討伐完了しました」


 それを発した瞬間にギルドで飲んでいた冒険者達が此方に目を向け、驚いた顔をしている。

 何か可笑しな事をしただろうか……いつにも増して視線を感じる。

 あまり、目立つとセレネとボルギジニアの件で、セレネの正体がばれてしまうかもしれないので目立ちたくないのだが……。


「それは凄い事ですよ! 今年は何故か空気中の魔力が多く、いつもの数倍の数の爆弾魔が発生していて、いつもより討伐の難易度が高く、誰もやりたがらず、ギルドとしても困っていたんですよ。

 そんなときにサイトさんが討伐したのです!」


 そうだったのか、いつもより倍の数が……通りでいくら倒しても倒せない訳だ。

 高ランクの人でもお手上げだったから、全てのランクの人に受けられるようにしてあったのだろう。


「つまり、どういうことか分かりますか?」


 ギルドのお姉さんがニヤニヤしながら此方を見てきている。


「何ですか?」

「元々、爆弾魔のクエストCランクのクエストそれをFランクが倒したとなれば間違い無く進級ですよ」


 確かに考えればそうだ、困っていた爆弾魔を倒しギルドに貢献したのだ、進級しても可笑しくない。

 Eランクに上がったとして一個上のDランクが受けられる、そこからは討伐クエストの量も増える……何となくで爆弾魔のクエストを受けてみたが嬉しい誤算だ。


「おめでとうございます」

「ありがとうございます、帰って来て急なんですけど受け付けしてくれませんか?」

「クエストを受けるんですか?」

「ユナをパーティー入れたいんだ」


 ギルドのお姉さんはユナを見る。

 ユナは少し傷ついていて、しっかりと杖を握り締め、目が心なしかキラキラしている。


「良い人そうですね」

「そうだな」


 それを聞き、ユナは少し顔を赤くしてそっぽを向く。

 褒められたから気恥ずかしいのだろう。


「フフフ、分かりました。

 パーティーメンバー登録の紙を持って来ますね、待っていてください」


 そう言い、ギルドの奥へと入っていく。


「いやー、今日も汚れたな、早く風呂に入りたいよ」


 セレネがそこら辺をフラフラと歩いている。

 ギルドのクエストの募集の紙を見つめたり、ギルドにある食堂の飯を羨ましそうに見ている。

 何かしでかしそうだ。


「変な事するなよ」

「私を何だと思ってるんだ」


 少し怒り気味で帰ってくる。

 意外としっかりしているのは分かっているのだが、こういうときに問題を起こすのがこの魔王なのだよ。


 ドン!


 セレネが言ったそばから前を見ずに人にぶつかる。


「いてて……おい、てめえどこみて歩いてんだ? どうやって落とし前つける気や」

「典型的なチンピラじゃねえか、辞めろ」


 セレネの頭に強めにチョップする。

 俺は転ばしてしまった人の方を見ると、大人しそうな女の子であった。


「本当にすみません、しっかりと、この馬鹿を叱っておくので、ほらあんたも頭下げなさい」

「サイトも息子の為に謝るお母さんみたいになってますよ」


 ユナがそう言い、此方をなにしてんだって顔で見ている。

 ふざけたつもりは無かったのだが。

 俺はセレネの頭を抑えて頭を下げさせる。

 見た所女の子に傷は無さそうなので良かった……これで大怪我をさせていたら、謝るだけでは済まない。


「サイト……デーモンロードのススキ・サイトなの?」 

「惜しい、スズキ・サイトです!」


 と言うか、この子は誰なのだろうか。

 俺の名前を知っていると言うことは、どこかで会った事があるのかもしれない。


「サイト、知り合いですか?」

「いや……分からない」


 思い出せない、こんな子に会った事は無いと思う。

 紺色の髪でセレネとほぼ同じ位の身長で子供っぽい顔つき、特徴的な目で眠そうでやる気の無さそうで、ずっとジト目しているように見える、服装は白がメインの服で似合っている。


 こんな子を会っていて忘れる筈が無い。

 多分初対面だ。


「この紙を見て探してたの」


 手には俺が書いた、パーティーメンバー募集の紙を持っていた。

 それを見て来たのか、なら俺の名前を知っている訳だ。


「私も仲間に入れてほしいの」

「許可」


 セレネがまたそんな勝手な事を言う。

 そんなセレネの首筋を掴み二人だけで喋れるように少し離れる。


「おい、また勝手に決めるなよ」

「いや、今回は真面目に言っている」


 セレネは確かにいつにも増して、真面目な顔で言っている。

 この顔の時は大抵、冗談など言っていない。


「どういう事だ?」

「あの子からは魔力とは違う力二つの力を感じるだ」

「二つの力?」

「うん、一つは神聖な力、もう一つはそれとは逆のまがまがしいほどの呪いのような力、あの子ただ者じゃないよ」


 二人であの女の子を見ると、ユナに手を触れていた。

 次の瞬間、黄緑色の光が発せられる、するとユナの傷が消えていく、いや癒えている。

 ユナの目は見開かれ、驚きの声を上げる。


「傷が無くなってしました! どうやって?

 それにどこか疲れも取れてお肌がツルツルになったような気がします」

「戦闘は出来ないけど、癒すのは得意の」


 今のは何だろうか……治癒魔法だろうか。

 だが、詠唱はしていなかったと言うことは無詠唱魔術師なのかも知れない。

 セレネの言っていた通り本当にただ者じゃ無さそうだ。


「凄い治癒魔法だな」

「あれは治癒魔法じゃない、治癒魔法は難しく、治したい部分に一点集中して魔力を送りこむ技で、今回はそこまで大きな怪我ではなかったが、彼女は全身を癒やした、あんな事普通は魔法では出来ない」


 つまり、魔法じゃない……。

 二つの不思議な力、その力を持つ彼女を仲間に入れるのは確かにありだ。


「分かった……謎が多いけど、仲間に加えよう」


 俺達はユナと女の子の所に戻る。

 絶対にこの先、この治癒力が必要になるだろう。


「どうするか決まりましたか、サイト、セレネ」

「ああ、仲間に入れる」

「本当なの?」

「ああ」

「ありがとうなの」


 手を上に上げて喜ぶ。

 謎の女の子が俺達の仲間に加わった。


 今日で二人も仲間が出来るとは思っていなかった……。

 でも、ヒーラー、前衛が手に入った後は弓ぐらい欲しいな。

 そんな事を思っていると、奥からギルドのお姉さんが帰ってくる。


「あれ、新しい子が増えている」

「ああ、此方はえっと……」


 そう言えばまだ名前も聞いていなかったな。

 今思うと普通に考えて、何も知らない謎の女の子を仲間に加えるって可笑しいよな。


「紹介がまだだったの、私はラプラス・アルフォードなの」

「アルフォード……どこかで聞いた事があるような………」


 ギルドのお姉さんが顎に手を当てて考えるが、全く出てこなく唸る。

 有名な名前なのだろうか。

 まあ、俺達には多分だが関係ない。


「改めて、ラプラスようこそ『魔王(デーモンロード)』へ」

「うん」

「まあいっか、取りあえずサイトさん、これをどうぞ」


 ギルドのお姉さんは考えるのを止め、俺に紙を渡す。

 これに名前を書いてパーティーメンバーにすればいいのか。

 俺は、ユナとラプラスの名前を書き、お姉さんに紙を返す。


「これで完了です」



 これで正式に二人とも内のメンバーになったようだな。

 取りあえず今日はもう外が暗くなり初めてるし、それに疲れた明日ラプラスを入れて四人でクエストを受けよう。


「よし、じゃあ今日は解散明日朝早くからクエストを受けるからここに集合な」

「「……」」


 二人とも口を閉じて返答が来ない。

 何も変な事を言ってないと思うのだが何故だろうか。

 そう思っているとユナから話始める。


「サイト……その泊まる所が無いと言いますか……良ければ泊めさせてはくれないかなって思ってですね」

「私も同じくなの」


 ラプラスもそれに同調する。

 確かにユナは一文無しだったから、仕方が無いがラプラスは凄い治癒能力が在るからお金には困らなそうだが……。


「待て、今までじゃあ、どうしてたんだ?」

「私は野宿していましたよ。

 知っていますか、意外にネズミって美味しいんですよ」

「聞きたくなかったわ!」


 本当にユナをこのパーティーに入れて良かった。


「私は……鎧を付けたおじさん達と泊まっていたの」

「……」

「どうしたの?」

「危ない奴じゃねえか!」


 こいつもこいつでやべえ事言ってんな……仕方ないこいつもどうにかボルギジニアに泊めてくれないか頼むしか無いな。


「分かった、俺達を泊めてくれている、ある人物に頼んでみるよ」

「流石サイトです」

「ありがとうなの、流石サイドなの」

「あ、サイトです」


 微妙に間違えるんだよな……。

 そんな事を思いながら、ボルギジニアのお店へと案内するためにギルドを出て、歩き始める。



ーーー



 ギルドから少し歩き、俺、ユナ、ラプラスの三人横歩きをしていて、前でセレネが先導している、何故か知らないがさっきから先輩ずらしている。

 するとそこで分かれ道が現れる。


「さあさあ、こっちだ私に付いて来い」


 そう言い、左へと曲がる。


「セレネそこ、右……」

「……」


 セレネがこっちに素早く戻って来て「いや~なんて、ジョークだよジョーク、緊張がほぐれたでしょ」と言い、早足で右の道へと歩いていく、さっきまで先輩ずらをしていたせいで恥ずかしいのだろう。

 今までに見たことが無いほど顔が真っ赤だった。


「そう言えばサイト、泊めてくれる人はどんな人なんですか?」


 ユナが質問を投げかける。

 確かに何も言わずに連れてきたからな、泊まる家の人の名前ぐらい知りたいか。


「うーん……優しい人だよ。俺に戦うすべを教えてくれたからな」

「そうなんですか。因みにお名前は?」

「ボルギジニアだよ」


 その名前を唱えた途端にユナが足を止めて立ち尽くす。

 何だろうか……今日は疲れてもう歩けないのだろうか、顔色も気持ちさっきより悪いし、小刻みに震えている。


「ボルギジニアってあの、魔王幹部の……」


 あぁ忘れていた、この町では意外とボルギジニアの名前が通ずるんだった、うかつに名前を言わない方が良かったかもしれない。

 顔色が悪くなったり体が震え出したのは、恐怖から来た物なのかも知れない。


「ま、待ってくれ!!!」


 突然、そんな大きな声が聞こえ出す、方角的にボルギジニアのお店の辺り、いや本人の声だ。

 何か、あったのだろうか、そう不安に思い少し早足で角を曲がりボルギジニアの店の前へと来る。


「待ってくれ、今ならこの魔王も食べる、体を洗うのにも食べるのにも使える万能な石鹸を付けるぞ」

「本当に入りませんから」


 ボルギジニアは魔王を殺す石鹸とセレネが誤って食べてしまった色の付いた可愛らしい石鹸を持ち、女性にそれを売りさばこうとしていた。

 状況だけ見ると怪しすぎる通報されても可笑しくない。


 そんな事を考えていると、女性はボルギジニアを振り払い、そそくさとお店の前から逃げ去る。

 残されたボルギジニアはお客を失い、心なしかしょんぼりとしている気がする……まあ、あんな風にお客を引き留めていたら、お客が寄りつくはずがない。

 俺達はそんなしょんぼりしているボルギジニアに近付く、ユナはまだ怯えているけれどしっかりと俺の後ろを付いて来る。


 ボルギジニアは俺達が駆け寄るのに、気がつき此方に視線を向ける、次の瞬間目に光が宿り、素早いスピードで此方へと走ってくる。

 そんなに俺達に会いたかったのか、ボルギジニアは寂しがり屋なんだから、仕方ねえ、そう思いながら両手を広げ、包容する形を作る。


「ハハハ、来いボルギジニア」

「ハハハハ」


 俺に合わせ此方に笑いながら近付く、そして飛び跳ねる。

 その体は俺を通り過ぎ、ユナの足元で地面に這い蹲り、ユナの服をがっしりと掴む。


「お客様、お久しぶりです。

 また私の前に現れてくれるなんて……ま、まさか、また石鹸を買って下さるのですか!?」

「ん?」


 どういう状況なのか理解できない……何故、ボルギジニアがユナにこんな態度なのか、それに比べてユナは顔を引きつらせ、めんどくさそうにボルギジニアを引き剥がそうとしている。


「そ、そんな訳ないじゃないですか、また私を騙そうとしているんですか」

「そんな事言わないで下さいよ、お客様、石鹸なら幾つでも売りますよ」

「いい加減離れてください」


 ボルギジニアが一向に服から手を離さず、ぐいぐいとユナに詰め寄っている、さっきの女の人にしていたことと同じだ。

 うーん、それにしても二人は初対面じゃ無さそうな感じだな……騙したとか言ってる感じ昔何かあったのだろうか。


 取りあえず俺は「辞めろ」と言いながら、ボルギジニアの頭をチョップする。

 しかし何もなかったようにユナにひたすら詰め寄る、そう言えばボルギジニアは商売になると周りが見えなくなってしまうのだった。

 どうしようか……そう悩んでいると、セレネがボルギジニアの後ろへと歩いていく。


「魔王バ(カン)部さん、あまりパーティーメンバーを困らせるのは辞めようね」


 強い口調でそう言うと同時に、閃光のような物凄い速さでボルギジニアへとチョップを食らわせる。


 ゴン!


 変な音が鳴り響き、気がつくと叩かれた部分からは煙が出て、顔と体の半分が地面にめり込み、ユナの服から手が外れている、普通の人間が食らったら即死だろう。

 ボルギジニアは地面から顔を抜き、殺気立ってセレネの方へと顔を向ける。


「このコスプレ偽魔王が、今度こそ殺してやる」


 ボルギジニアとセレネは睨み合い、バチバチと火花が散っているように見える。


「待て待て待て」


 そこで俺が仲介に入る。

 流石に町中で殺し合いなどされたら、俺どころか町や人々が巻き込まれる。


「何だ、サイト帰って来たのか」

「さっきからいたよ」

「そうなのか早く言ってくれ」

「お前に話しかけたし、一回、目あったよな」

「それはそうと、ボルギジニア、ユナとはどういう関係なんだ?

 お互い知っている感じだけど」


 セレネが会話に横は入りしてくる。


「それはそうとって何だよ、確かにその質問を俺もする予定だったけど…俺のツッコミ流さなくてもいいだろ!」

「そうだな、お客様と俺の出会いはーー」


 俺のツッコミをまたしても無視して会話を続ける。

 後ろからラプラスが背中を「可哀想なの、よしよし」とさすってくれる、いつもだったら美少女によしよしされたら嬉しいが、あんな憐れみの目でされても悲しくなるだけだ……。


「ーーと言うわけで俺とお客様は出会ったのだ」


 話し終えたようだ、あまりのショックで全然話を聞いてなくてどういう状況なのか分からない。

 話について行けず黙っていると、ユナが今まで後ろに隠れていたのに前へと出てくる。


「なに話を美化させてるんですか、簡単に言えば詐欺まがいの事をして大量の石鹸を買わせ、挙げ句の果てにまだ買わせようと私を見つける度に詰め寄ってはストーカーみたいな事をしただけですよね」

「滅茶苦茶キモイ!」


 詳しいことはよくわからないけど、一つ分かるのは普通に聞いてる感じ、ボルギジニアが犯罪まがいな事をしているのは分かる。

 道理でボルギジニアの名前を聞いてあそこまで震えていた訳だ。

 容疑者の方を見ると、何故か笑っている……。


「失礼だな、純愛だよ」

「辞めて、名言を汚さないで、頼むからリカちゃん、こいつをロッカーの中に詰めてくれ」

「それで今日は何の用で?」


 犯罪者が酷かったから本来の目的を忘れていた……まあ、これを聞いたらあまりにもユナが可哀想だが、確信犯にしっかりと言いつけておけば大丈夫だろう。


「この二人を家に泊めてやって欲しい」

「全然OK、さあ店に上がってください」


 めちゃくちゃ軽い、もっと店は狭いからどうのこうのと渋った後、結局優しいから泊めてくれる感じで想像していたのだけれど……こんなあっさりと良いのだろうか。


「さあさあ、上がって下さい」


 そう言って俺達の背中を押しながら、店の中へと入れる。


「実家だと思ってくれて良いですから」

「そうなの? じゃあ遠慮なくなの」


 そう言ってセレネとラプラスは走ってお店の奥へと向かう。

 だいぶ遠慮がないみたいだ、しっかりとした治癒を使えるから少し大人っぽく見ていたが、やっぱり体に比例して子供らしいようだ。


「そうですか……泊めていただきありがとうございます」


 それと比べ、ユナは複雑な気持ちだろうが、若干ぎこちなくもしっかりとボルギジニアに頭を下げお礼をする。

 そして、歩いて二人の後を追い掛けるようにお店の中へと入っていく。

 俺とボルギジニアがお店のドア前で残る。


「良かったのか?」

「ああ、あれくらい賑やかな方が店も楽しくなる」


 さっきのように雰囲気の違うボルギジニアではなく、いつものボルギジニアだ……ギャップが凄すぎる。

 ボルギジニアの方を見ると、三人の方を見つめていた、その顔は妙に深刻そうな顔をしている、何故だろうか。


「ラプラスと言ったか……あの少女」

「うん」

「あの子自体に害は無いが、気をつけた方が良い」


 そう言って、ボルギジニアは店の奥へと入っていく。

 どういう事なのだろうか……。

 そんな疑問を抱きながら、俺もみんなの後を追ってお店の中へと入って行く。

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