初陣の結末
「ぐぐぐ…こんのっ…!」
僕はオリーブの身体に刺さっているモヒカンを取ろうとしていた。今の僕の力なら、あれを取る事が出来ると確信したからだ。しかしなかなか取れない…。
「む、無理しなくていいよ…?」
「だからって、このまま君を放っておく訳には行かないだろ…そりゃあっ!」
僕が掛け声を上げた途端、モヒカンは勢いよく取れた。ふーっ、ようやく取れたぞ。これで一安心だ。
「どうだ、動けるか?」
「う、うん!全然動けるよ!ありがとう、コーちゃん」
オリーブは立ち上がると、僕にお礼を言った。…僕は今までの人生の中で人助けをした事がなかったから、何だか新鮮だ。まるでヒーローになった気分で悪くないな。
「…さっきはコーちゃんにカッコ悪い所を見せちゃった。あたし一人で十分だって言ってたのに…ごめんね」
「気にしてないよ、オリーブ。――あっ!?」
その時、手に持っていたモヒカンが自分から離れていった。モヒカンはマーカスが倒れていた所まで戻っていく。
「ぐ、ぐへへ…今のパンチ、効いたぜ…」
いつの間にかマーカスが立ち上がり僕たちの方を見ていた。あれでまだ倒していないとは、思った以上にしぶとい奴だ。
だが、よく見ると僕が殴った箇所(腹と顔)から機械のような物が露出している。そこからバチバチと火花が出ていた。さすがに無傷では済まされなかったようだ。もしあれ以上奴に攻撃をしたら、間違いなく再起不能になるだろう。
「…マーカス、って言ったよな?まだその身体で僕たちを倒すのか?」
「へへっ、当たり前だ。俺はあの方から報酬を得るまで、ここでくたばる訳には行かないんだよ…!」
マーカスはボロボロになりながらもまだ戦うつもりらしい。――それにしても、さっきもあいつが言ってた『あの方』って誰なんだろう?
「なあ、お前が言ってる『あの方』って何者なんだ?教えてくれよ」
「知りたいのか?…だが、そういうのはお断りするぜ…。そもそも俺だってあの方について全てを知っている訳じゃないしな。俺はあの方の部下に雇われた、ただの下っ端に過ぎないのさ」
こいつはただの下っ端に過ぎないって事か。あのチンピラ風の見た目からしておかしくはないが。
「だがよ…俺がただの下っ端だからといって、ここで大人しくお前らにやられる訳にはいかねえぜ。例えこの足が動かなくなったとしても、必ずお前らガイノイドを始末してやる。それが俺たちアンドロイドってもんだ!」
マーカスはフラフラとした足取りで僕たちの方へ歩いてくる。自分の身体があんなボロボロになっても立ち向かってくるとは…ただのチンピラとは思えない迫力だ。
「コーちゃん、ここまで来たらあと少しだよ!あいつの右胸の所にパンチしてみて!」
「み、右胸?」
オリーブは右胸を狙えと指示してくる。右胸と言えば、心臓がある箇所だ。あそこを狙えば確実に倒せる訳だな?
「うん!とにかくやってみて!」
「分かった!」
僕は走り、マーカスの右胸を狙ってパンチを繰り出そうとした。
「おりゃあっ!!」
「ひゃはっ、そう簡単に食らわせてたまるかよっ!!」
パンチを繰り出そうとした瞬間、マーカスは片腕を使い僕の手を受け止める。奴の身体がボロボロとは思えないほどの力だ。
――だが、もう片方の腕はまだ使える!
「まだ…まだだっ!」
僕は左腕を使い、マーカスの右胸を勢いよく殴る。
「ぐ、ぐおおっ…!?」
マーカスは殴られ苦しそうな声を上げ、それと同時にパリンという何かが割れた音がした。僕が今殴った箇所を見ると、そこから青色に輝くダイヤモンド?のような物が剥きだしになっている。あれが奴の弱点か!?
「オッケーだよ、コーちゃん!あとはあたしがあいつを倒してあげるから、今すぐ避けて!」
後ろを見ると、オリーブは右手を先ほどのキャノン砲へと変化させ撃つ準備に入っている。このままだと巻き添えを食らう、僕は彼女の言う通りにして避けに入った。
「よし――!これで、終わりだよっ!!」
オリーブは僕が下がった事を確認し、そのまま右手のキャノン砲から球を一発放った。そして――。
「ぐそっ…お前、よぐもやってぐれだな――うっ!?」
彼女の放った球が、マーカスの剥きだしになってる右胸を貫く。それは一瞬の出来事だった。
「ば、馬鹿な…!俺様が、ごんな、どごろでぇ…!」
マーカスは苦しみながらゆっくりとうつ伏せになって倒れていく。すると、奴の身体は瞬く間に大量の青い石のような物へと変わっていった。…終わった、のか?
「…ふう、何とか倒せたね!」
オリーブは右手を元の形に戻すと、僕のいる所へ走って来る。
「ああ、とりあえず終わったっぽいな。ありがとうオリーブ――ん?」
僕は彼女に礼を言いかけるも、オリーブは僕を無視して青い石が落ちてる所へ行く。僕は慌ててオリーブの元へ向かった。
「お、おい…オリーブ、何やってんだ?」
「何って、このブルーストーンを集めているんだよ。コーちゃんがこの事も忘れてるかもしれないから言うけどね、ブルーストーンはお買い物の時に使う石なの。たくさん集めれば色んな物が買えるんだよ」
「そ、そうなのか…」
「うん。それからね、ブルーストーンはアンドロイドを倒した時にたくさん出てくる物なの。どうしてそれが出るのかはあたしもよく分からないけど…とにかく、悪い事を企んでるアンドロイドを倒してブルーストーンを集めるのがあたし達ガイノイドの仕事なんだよ」
要するに、RPGで例えるならモンスターを倒してお金を稼ぐみたいなもんなのか。何だかゲームの世界みたいだなぁ…。分かりやすくていいけど。
オリーブは左腕に付けてある腕時計のような物を使い、ブルーストーンと呼ばれている石を回収していく。あんな小さい道具なのに収納性が高いようだ。あれも地味に気になるな。
「なあ、オリーブ。その左腕に付いてる物って何なんだ?」
「これ?これはね、携帯式の収納ケースだよ。この中に色んな物をしまえるの」
そう言うとオリーブは収納ケースにタッチし、ブルーストーンが落ちてる所へ近づけさせる。すると、自動的にその石が収納ケースの中へと回収されていく。
「…これでよし!じゃあコーちゃん、あいつも倒せた事だし早く病院へ行こ!」
オリーブは振り返り、僕の方を見ながらそう言った。そういや僕は病院へ行く事になっているんだった。…病院へ行くべきなのはオリーブの方な気がするけど。
「オリーブ、君もそこに行って治療しなくてもいいのか?」
「え?…あはは、そうだね。頭に傷がついちゃったし、あたしもやって貰った方がいいかな」
オリーブは頭に傷が付いている箇所を軽く撫でながら照れ臭そうに笑う。さっきから同じ事を言ってる気がするが、人間だったら笑いごとで済まされないぞ…。
僕はやれやれと心の中で思いながら、オリーブと一緒に病院へと向かった。