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ガイノイドとの出会い、そして敵と遭遇!?

 緑髪の少女はオリーブという名前だった。人間ではなくガイノイドとの事らしいが、どうみても僕と同じ人間にしか見えない。

 …しかし、僕の住んでる世界の人間とは見た目が明らかに違う。まるで漫画やアニメから飛び出してきたような、まさに美少女キャラと言える存在だ。

 髪型はショートヘアで、鮮やかな緑色の髪と、頭に取り付けてある黄色のヘアバンド。黄緑色を強調させたワンピースに、可愛らしい真っ白なサンダル。そして、エメラルドグリーンに輝く緑色の目――。それから、左腕には腕時計のような物を付けていた。

 年齢に関してはガイノイドなので考える必要はないと思うが、外見で判断すると恐らく11~13歳くらいか。幼い感じの子だ。


「どうしたの?あたしの顔に何かついてる?」


 オリーブは笑顔のまま僕にそう聞いてくる。まだ出会って間もないが、この子は笑顔がとても似合うと思った。


「あ、いや、その…。君がとても可愛いと思ったから、さ」

「え?あたしが可愛いって?…そんな、恥ずかしいよぉ。えへへ」


 オリーブは僕の言葉を聞いて恥ずかしがりながらも笑っていた。そんな姿もとても可愛らしい。それにしても人間臭いガイノイドだなぁ…。

 …あ、そういやここはどこなんだろう?見た所、僕の住んでる日本と似ているが。


「えっと…オリーブ?ここは一体どこなんだ?」

「え?あなた、ここがどこなのか忘れたの?ここは『ホッカイ』って言う大きな島だよ」

「ホッカイ?」

「うん。そしてここは『トヨヒラガワ』っていう川なの。とっても広い所だから、あたしはよくここでお散歩するんだ」


 ホッカイ…つまり、ここは北海道に似た島という感じでいいのか。でもこの世界に住んでる人たちはみんなガイノイドだってオリーブが言ってたけど。謎が多い島だ…。


「…ねえ、もしかしてあなた、メモリーが壊れてたりする?」

「へ?メモリー?」

「うん。たまーにね、ガイノイドはメモリーが破損する事があるの。原因は色々あって、例えばさっきのあなたみたいに高い所から落ちてきた時とか…」

「いや、僕はガイノイドなんかじゃ…」

「とにかく、ここは病院に行って調べてもらった方がいいよ!メモリーが破損したまま生活したら何が起こるか分からないもん」

「だから、僕はそんなんじゃなくて――!」

「そんなんじゃなくて?」

「…いや、何でもない。とにかくその病院に行けばいいんだよな?」

「うん!ちょうどこの近くに病院があるから、あたしと一緒にいこ!」


 僕はオリーブに、自分はガイノイドじゃないと言おうと思ったが…。話すと色々ややこしくなりそうだし、ここは素直に従う事にしよう。


「――じゃあ、あたしについてきて!」


 こうして、僕は彼女と一緒に病院へ行く事になった。




「うーん、今日もいい天気だね~。こういう日はやっぱりお散歩に限るよ」


 オリーブは両手を伸ばしながら言う。確かにいい天気だ。それにこの川の付近は人の気配がないから、静かで心地よい。

 川自体は東京の多摩川と似ているが、そこより緑が豊かな感じがする。北海道は自然が豊富な場所だというのは知ってるけど、やっぱここもそうなんだな。


「…あ、そうだ!あなたの名前の事なんだけどね…」

「ん?どうしたんだ?」

「確か、あなたの名前ってナカムラ…コウジだっけ?これからあなたの事をコーちゃんって呼んでいい?」

「こ、コーちゃん??」


 コーちゃんって、そう呼ばれるのは親戚のおばさんくらいだな…。何だか恥ずかしいや。


「だって、そのままの名前だと長くて覚えられないんだもん。だからみんなが覚えやすいように短くしてみたんだよ。可愛くていいでしょ?コーちゃん」

「あ、あはは…。いいよそれで」


 僕はもう笑うしかなかった。…恐らく、この世界は僕がいる所とは常識が全く異なるに違いない。いつまでここにいるかは分からないし、今のうちに適応していった方がいいかもな。


「じゃあ、これからよろしくね!コーちゃん♪」


 オリーブは楽しそうに笑いながらそう言った。その後、オリーブは両手を横に広げながら走っていく。元気な子だなぁ…。


「…お、おい!待ってくれー!」


 僕は急いでオリーブの後を追いかける。待ってくれ、僕は走るのが苦手なんだよなぁ…!


「わーい!ブーン、ブーン!」


 オリーブは小さい子供のようにはしゃぎながら走っていた。さっきも同じような事を言ったが、オリーブはガイノイドなのに感情がとても豊かだ。この子を作った人はかなりの優秀な科学者に違いない。

 そんな事を思いながら、僕は彼女の後を追う。…そういや、走ってるのに疲れがあまり見えてこない。体育の時間ではいつもゼーゼー言いながら走ってたけど、今は全然平気だ。不思議。


「ブーン、ブーン…あれ?あそこにいるのって…」


 やがて、僕とオリーブは大きな橋のある所を走っていた。――とその時、オリーブは走るのを止め空を見上げる。僕も続けて空を見ると、そこには何かがこっちへ近づいているのが分かる。あれは…人か?いや、この子と同じガイノイド?


「オリーブ、あれって何なんだ?」

「待って、コーちゃん!あれはきっと――!」


 オリーブがそう言いかけた瞬間、空からの使者は僕たちの目の前で着陸した。その時の衝撃で大きな砂ぼこりが舞う。

 時間とともに砂ぼこりが消えていくと、空から降って来た物の全体像が露わになっていく。その正体は――僕と同じ、男の見た目をした人物だった。髪型はモヒカンでパンクなファッションをした、いかにもチンピラって感じの男。チンピラ風の男は僕たちの方を見てニヤニヤと笑っている。何だか気味が悪い奴だ…。


「…コーちゃん、気をつけて!あれはあたし達の敵、アンドロイドだよ!」

「て、敵だって!?」


 どうやらこの男はオリーブの敵らしい。確かに見た目は悪そうだが。


「へっへっへっ…見つけたぜ、ガキンチョ!ここでお前を始末すれば、俺はあの方からたんまりと報酬を貰えるからな!」


 チンピラ風の男はオリーブの方を見ながら笑う。あの方…?一体何の事だ?それにこの子を始末したら報酬がたくさん貰えるって言ってたが、オリーブは何をしたんだ?


「おい、お前が言う『あの方』って誰の事なんだ?」

「…ん?おお、あのガキンチョの他にガイノイドがいたのか。俺も運がいいぜ…!こうなったら二人まとめて始末してやらぁ!」


 男は両手を前に突き出す。すると二つの手が上に折りたたんでいき、そこから銃らしき物が飛び出してきた。銃と言っても実際にある感じではなく、SF作品に出てくる近未来的な見た目をした銃だ。

 …こいつ、本当に人間じゃないのか!


「――あ!コーちゃん、避けてっ!!」


 オリーブが僕に向け叫んだと同時に、男は銃を乱射した。僕とオリーブは急いで避け、攻撃をかわしていく。

 ――妙だ。僕は運動音痴なのにあの攻撃を咄嗟にかわせるなんて。走ってる時に疲れが出ないのも変に感じたが…。


「…ちっ、そう簡単にやられたりはしねーか。しかしそこのお前…ああ、ガキンチョの後ろにいるお前だ。見慣れないタイプのガイノイドだな。どこ出身だ?」


 男は僕にどこから来たのかを聞いてきた。そんな急に言われても…いや待て。さっきオリーブは僕の事を記憶喪失みたいな感じで扱ってたな。あまり気は乗らないが、ここは記憶を失ったフリをしておこう。


「それなんだが…思い出せないんだ。自分がどこで生まれたのか」

「思い出せない?…ははあ、分かったぜ。お前どうやらメモリーが破損しているみたいだな。何があったか分からねえが可哀想によぉ」

「ちょっと!コーちゃんを可哀想だなんて言わないでよ!」


 オリーブは僕を嘲笑う男を見て怒り出す。


「何を怒る必要がある?俺はただ事実を言ってるだけだぜ。…ま、あいつに限らずガイノイドはどうもポンコツみたいでな、たまーに記憶が飛ぶ事があるみたいだ」

「ポンコツって何よ!どうして…どうして、あんたみたいなアンドロイドはすぐにあたし達ガイノイドを見下すの!?失礼だよっ!」

「これも事実さ。俺たちアンドロイドはお前らとの出来が違うのよ。それはお前のようなガキンチョでも分かる事だろ?」


 よく分からないが、あの男のようなアンドロイドはガイノイドを見下す風潮があるらしい。なんて嫌らしい奴だ、僕をいじめてた連中を思い出すな…!


「むーっ!あんたが本当に出来が良かったとしても、あたしはあんたみたいに誰かを馬鹿にしたりするような事はしないよ!お母さんが言ってたもん、ガイノイドで大切なのは力じゃなく心だって!」

「力じゃなく心だぁ?ひゃははっ、こいつは傑作だぜ!所詮はガイノイド、俺らのようなアンドロイドじゃ力は及ばねえから開き直りやがったか!」

「あたしは本当の事を言ってるだけだよっ!」


 オリーブとチンピラ風の男が言い争ってるの聞いて、僕は腹が立ってきた。…どうして、同じロボットなのに分かり合えないんだ。僕をいじめてた連中もそうだが、どうしてそう簡単に相手を見下そうとするんだよ!

 許さない。そういう事をする奴は僕の手で懲らしめてやりたい。例え僕に力がなかったとしても、あいつだけは絶対に…!


「お前…!そうやって相手を見下して楽しいか!?」

「はあ?何だよ、お前もあのガキンチョみたいに怒るのか?」

「当たり前だ!僕はお前みたいな、自分より格下だと思い込んで見下す奴が大嫌いなんだよ!そんな奴は――僕がぶん殴ってやるっ!!」


 僕はあいつに近づき、グーで殴ろうとした。相手はアンドロイドだ、僕の力じゃ到底敵わないって事は分かっている。だけどせめて――!


「うおおおおっ!!」


 僕は男の顔を思い切りぶん殴る。――その瞬間だった。


「う、うおっ――!?」


 顔を殴った途端、男は凄い勢いで後ろへ吹き飛ばされていく。男はそのまま地面に激突し、派手に転がっていった。


(な、なんだ?僕にこんな力が…!?)


 明らかにおかしいとすぐに感じた。体力のない自分があんな力を出せるなんて。僕の身体に、一体何が起きているんだ…!?

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