働き方改革
働き方改革と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
ほとんどの方は、賃上げや労働時間の短縮などの待遇面の改善を想定するでしょう。
しかし本質的な働き方改革は、それらを内包しつつも根源的な改革を指向しなければなりません。根源的な改革とは、経営者側の意識改革です。
かつての我が国の高度経済成長を支えた制度に、終身雇用、年功序列があります。終身雇用は既に崩壊しましたが、年功序列は官公庁を中心に残存されている企業も多いでしょう。
ところが、ついに年功序列を廃止して、欧米型のジョブ雇用に切り替える企業が現れています。
ジョブ雇用の良い点は、自らの技能を活かした雇用契約を結び、適切な対価を得られる点でしょう。欠点は自分よりも能力が上の人物と入れ替えられる可能性が常に潜み、雇用が安定しない点です。
ジョブ雇用は乱世ならば立身出世の可能性を秘めていますが、太平の世では失業と隣り合わせです。
例えば戦国時代であれば「槍一筋」で功名を挙げ、足軽から組頭、惣領、奉行などへ昇進することも可能です。
ですが合戦が終わり領内統治に重点が移ると、槍働きしかできない人物は無能扱いされて居所を喪失します。
現代社会で言えば、終身雇用と年功序列で安定した雇用が継続していた時代には、管理職として有能な人材が優遇されたために「大卒」が求められました。
現在は即戦力としての技術者が求められています。これがジョブ雇用に移行している背景でもあります。
ジョブ雇用時代に必要な能力は「学びの継続」です。
特技で就職した後、それに安心して技能の向上を怠ると、自身を上回る技能の持ち主に職を奪われます。ですから職を守るには常に実績を示していなければなりません。この感覚はスポーツ選手に近いでしょう。
果たして労働者側がこうした競争社会で雇用の安定を得られるのか疑問です。経営者側にも当然のように、経営の不安定化をもたらします。待遇や賃金など雇用条件の良い企業へ労働者が集中し、資本力のない中小企業や零細企業が倒産の危機に直面するでしょう。
ジョブ雇用を導入するのは派遣会社から始めるのが良いと私は思います。何故なら、派遣業の本質は傭兵部隊であり、必要な期間、必要な技術者を雇用する制度だからです。必要な期間とは半年以内の短期間であり、企業内の人員不足を補う存在が派遣社員という名の専門職というのが本来の在り方でしょう。
ですから半年を超える期間、ダラダラと派遣社員を受け入れているような企業は事業計画を見直して、人員配置を練り直さなければなりません。
働き方改革の根本は、経営改革でもあります。経営陣の考え方が変わらないままに、労働者の環境は変化しません。
そこで考えてみましょう。あなたの勤務先の上司や経営陣に、会社経営のジョブはありますか?
経営手腕は高いですか?