表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイアムバグゲープレイヤー!!  作者: 海蛇
六章.初めての冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/244

#5.勝利、そしてフラグ達成


《ズガガガガガカガガガガガガガガガガッ――》

頭部に直撃、多段ヒット。

物理的に削られるかのような盛大な音を鳴らしながら、怪鳥は身動きもとれずただただカレーの洗礼を受け続ける。

「す、すごいわね……」

「うん、正面から見ると、すごいね」

前の時は上から落としたからその様子も解らなかったけれど。

とさかにカレーが固定されていい感じに引っかかって、そのままダメージが入り続けている感じだ。

鳥自身はまだ生きているようで「くえーっ」とか「ぴぎぃーっ」とか、可哀想になるくらいに甲高い悲鳴を上げ続けている。

「これ、どうなるの?」

「多分、死ぬんじゃないかな……」

前の時は一撃で死んだ。

今回も、それと同じかそれ以上にヒットし続けているようなので、多分これで死ぬだろう。

死ななかったとしても、ミースも僕も第二弾の準備はできている。

――あれだけ苦戦させられたのだ、油断なんてするものか。

「ギュピーッ」

物悲しい悲鳴と共に、やがて怪鳥はばた、と倒れ。

カレーも同時に消滅した。

「終わったみたいだね」

「そうね」

後に残るのは、大量のアイテム。そしてスケッチブック。

ミースが駆け寄り、「あったわ」と、満面の笑みでそれを両手に取って掲げる。

「良かったわ、壊れたり破れたりしてない……ありがとう、エリク君!」

「ミースが頑張ったからだよ」

僕も頑張ったけど。

でも、今回はミースが居なかったら無理だったかもしれないのだ。

僕は囮に過ぎなかった。

それでも、思い出すところがあって思うところもある。

(……前提を破壊すればいいっていうの……あれは、隊長が教えてくれたんだっけ)

堅く守りを固めた敵の軍勢相手に、どうすればいいのか。

それに対しての対処法として教えられたのが、空色(そらいろ)だった。

多分、技とかじゃなく、戦術的な考え方の一つなんだと思う。

そう思うと、緋色も同じように技名ではなく、あくまで戦術の奥義とか、そんな感じなんだろうか?

「でもエリク君、今回は怪我しちゃったでしょ? ちょっと待ってて、手当てするから」

「ああ、大丈……ううん、頼むよ」

つい、いつも(・・・)の癖で強がろうとして。

けれど、この場には僕とミースしかいないのを思い出して、素直に腕を差し出す。

「羽って突き刺さるものなのね……アーマーの上から貫通するなんて」

「普通は刺さらないと思うけど、あの鳥は刺してきたね」

信じられないくらい鋭い羽だった。

素材として活用すれば結構強力な武器になったのではないかと思うけれど、残念ながらそれらしい素材は落ちていない。

相も変わらず、大量の料理と、後は鉱石くらいか。

「あれ、金色の石……?」

「黄鉄鋼? 珍しいわね。これ、アクセサリーの材料になるのよ」

淡く光る石を手に取るや、ミースが驚いたようにその石に手を触れる。

触れた途端、弱々しかった光が急激に強くなり……まばゆく僕とミースを照らす。

「こうやって、二人以上で触るとね、キラキラ光って綺麗なの」

「珍しいものみたいだね。見たことなかった」

鉱物図鑑を読み進めたら出てくるだろうか? ちょっと後で調べてみようと思う。

「あんまり産出されないものだから……二人で触ると強く光るから、上手く加工するとカップルとか夫婦とか、仲のいい友達同士で持つと素敵な気持ちになれるわよね」

「会うたびに手を合わせたりして光らせるのか」

「そういうこと! 後はブローチにして、抱き合うたびに光るとか、ね!」

そういうロマンチックな鉱石なのよー、と、嬉しそうに笑う。

ロマンを理解してもらえたのが嬉しいのか、それともこれそのものを見られたのが嬉しいのかは解らないけれど。

でも、ミースが好きそうなのはよく解った。

(後で、指輪に加工してもらおうかな)

ミライドさんのところに持っていけばいい感じに加工してもらえるだろうから、折角だから僕にもミースにもいい方に活かそうと思う。


「それにしても、沢山落ちたわね……あら、巣の方にも何かあるわ」

沢山転がっているアイテムを回収しながら周りを確認して回っていると、ミースが巣の方で何かを見つけていた。

「これは……台車? それに十字架もあるね」

「こっちには裁縫道具やショートパンツもあるわ……何これ、村の人たちのものかしら?」

巣の中にしまいこまれている、というよりも、巣そのものに組み込まれていたそれらは、どこか見覚えのある品ばかりで。

「と、とりあえず持って帰る……?」

「そうね……多分、村からこうやって奪ったものを、巣の材料とかにしたのかしらね?」

「多分……よっと、それじゃ、一つずつ引っこ抜くよ」

「ええ、頑張って」

流石に台車とかはミースには重いらしく、その場に座ってスケッチをはじめる。

取り戻した瞬間から、ミースはもう、絵を描きたくて仕方なかったのだろう。

仕方ないな、と苦笑いしながらも、僕は何も言わず、一人で巣から品物を抜き取っていった。



 こうして、無事怪鳥退治は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ